第41話 手が伸びる
セレスティーヌの部屋に、新しい分布図が広がっていた。
風の記号。
光の記号。
雷や雨より、手触りの柔らかい位置に点が打たれている。
「06と07」
彼女は短く指でなぞる。
「強い三体より、先に届く。
欠けを埋めるなら、端からでいい」
配下の一人が資料を開く。
「黒鋼も動いています。回収優先のままです」
「利用できるなら、すればいい。
彼らの欲しがるものと、私たちの迎えるものは違う」
セレスティーヌの声に、焦りはない。
あるのは、選定の冷静さだった。
画面が切り替わる。
公園の風害。
夜空の異常発光。
どちらも、収束は早い。
早いということは、影が確実に入っている。
「風は、争いを避ける。
光は、面白い相手を残す。
どちらも、純白の前では未熟よ」
誰かが躊躇いがちに聞く。
「接触は、いつ」
「予兆が重なったとき。
急がせると、リェンと同じになる」
リェンの名が落ちても、部屋の温度は変わらない。
失敗は記録され、次の手札から外されている。
セレスティーヌは立ち上がり、壁の明かりを一度だけ見る。
白を迎えるための準備は、思想だけでは足りない。
手を伸ばす先が、必要だった。
「06と07を見る。
可能なら、取り込む。
無理なら、道を開ける」
命じられた者が、静かに頭を下げる。
作戦というより、選定の開始だった。
表の街では、環象社が平常を流している。
「現在、大きな発令はありません」
その文面の下で、白い思想の手が、端の番号へ伸び始めていた。




