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第4話 雹の砲口

空が、白い音を立て始めた。

雨とは違う。

硬く、短い打撃が連続して路面を叩く。

環象社の発表はB。

拡声器が、避難を急がせる。

「ただちに建物内へ。特殊部隊が対処に向かっています」

人々が走る。

シャッターが閉まり、通りから色が消えていく。

その中を、一人の女が歩いていた。

高身長で、日焼けした肌。

白を基調にした角張った装甲。

肩に、巨大な砲を担いでいる。

【02(ヘイル)】は、空を見上げない。

見る必要がない。

歪みの位置は、すでに分かっている。

『……面倒くさいな』

低い声が、雹の音に溶ける。

彼女は砲口を上げた。

照準を合わせる動作は短い。

引き金に指がかかる。

次の瞬間、空の軌道が変わる。

落ちてきた氷の粒が、途中で砕け、粉になる。

硬い打撃音が止まり、白い粒子だけがゆっくりと舞う。

暴れていた雹は、強引に、だが正確に押さえ込まれていく。

遠くで、環象社の職員が無線に叫ぶ。

「収束に向かっています! 対応成功です!」

誰も、砲を担いだ女を英雄とは呼ばない。

見えていても、エージェントの一人として処理される。

【02(ヘイル)】は砲を下ろした。

周囲を一瞥するでもなく、すでに次の気配を測っている。

『まだ残ってる』

点火の臭いに近い、細い歪み。

本来の自分の属性ではない。

それでも、放置すれば延焼する。

彼女は舌打ちをして、砲口をわずかにずらした。

二発目は、短く、冷たい。

火の粉のようなものが、空中で消える。

『……08の分まで、やってらんねえ』

誰に言うでもない言葉だった。

通信先はない。

応答もない。

【02(ヘイル)】は背を向け、蒸気の中へ歩いていく。

あとに残るのは、砕かれた氷と、収束の報告だけだ。

青は、まだ戻っていない。

それでも彼女は、やることをやって、去る。

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