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第3話 追う側の足元

回収班は、水の引いた通りを歩いていた。

靴底に泥が付き、折れた看板の下をくぐる。

環象社の規制線はすでに一部解除され、残った住民が荷物をまとめ始めていた。

「映像、やっぱり残ってない」

若い隊員が端末を振る。

「収束の三分前までは雨粒しか映ってない。そのあと、急に晴れてる」

「晴れてる、じゃねえよ。収まってるだけだ」

年長の男が吐き捨てる。

彼らの所属は環象社ではない。

現場では「支援」と名乗っているが、実際の関心は回収と追跡だ。

通りの中央で、男は立ち止まる。

路面に、浅い溝のような跡がある。

水が溜まり、光を濁して返す。

「これ、何だ」

「車両じゃない。刃物でもない。……分からん」

分からないものが多すぎる。

昨夜も、一昨日もそうだった。

暴れる気象のあとに残るのは、きれいな収束と、説明のつかない切断跡だけ。

無線が鳴る。

「上層からだ。七——いや、対象の残骸があれば最優先で回収。破壊より確保」

若い隊員が顔をしかめる。

「また回収か。倒すんじゃなくて」

「黙って聞け。お前は現場だ。現場は指示通りにやれ」

その言い方には、慣れた冷たさがあった。

年長の男は端末をしまい、規制線の外へ視線をやる。

人々は「助かった」と言っている。

環象社の対処を信じている。

こちら側だけが、足元の不自然さを拾っている。

「東側に、別の痕跡。雹のあとらしい」

「雨の次が雹か。属性が違う」

若い隊員がメモを取る。

「同じ部隊が全部やってるにしては、手口がバラバラだ」

「バラバラに見えるように動いてる、とも取れる」

どちらが正しいか、彼らはまだ決めていない。

決められないまま、次の現場へ足を向ける。

夜風が、濡れたアスファルトを撫でる。

どこかで、乾いた音がした気がした。

振り返っても、誰もいない。

追う側の足元には、いつも結果だけが残っている。

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