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第36話 雹が降る街

午後の空が、白い音を立て始めた。

雨とは違う。

硬く、短い打撃が連続して路面を叩く。

環象社のランクはB。

拡声器が、避難を急がせる。

「ただちに建物内へ。特殊部隊が対処に向かっています」

加賀美リンは避難所で名簿を開きながら、窓の外を見た。

氷の粒が、看板を弾いている。

同僚が声を上げる。

「東側、誘導まだ終わってない」

「行く」

リンは上着を掴み、指定経路へ走る。

途中、端末にカツヤからの文が届く。

『回収で東へ。近づくな』

『分かってる』

分かっているのに、足は止まらない。

噴火の夜から、現場の匂いを無視できなくなっていた。

同じ時刻、カツヤは黒鋼の車両で東区画へ入る。

指示はまた同じだった。

壊すな。拾え。

「雹だ。対象02の気配があるかもしれない」

班長が短く言う。

「確認できたら距離を取れ。回収は収束後だ」

カツヤは頷き、窓の外を見る。

氷が車体を叩く音が、連続している。

環象社の規制線の向こうで、人の流れが分かれる。

リンは誘導を終え、指定経路の端まで戻ったところで足を止めた。

本来なら、ここから中へ戻る。

なのに、蒸気の向こうに視線が吸われる。

空が白い。

打撃音が、急に不揃いになり始めていた。

誰かが、内側から軌道を変えようとしている。

その感触だけが、規制線の外まで届く。

カツヤの車両も、同じ街区の角で停まった。

回収班は降りない。

様子を見る。

氷の粒が、途中で砕け始める。

粉雪のようなものが、ゆっくりと舞う。

リンとカツヤは、まだ互いの位置を知らない。

同じ雹の街で、同じ収束の予兆を、別々の場所から見ていた。

青は、まだ戻っていない。

今夜の雹は、これから鎮まる。

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