第25話 絡む雨
雨が、細い路地で刃になり始めていた。
環象社のランクはC。
排水が溢れ、足元をすくう。
その中心で、【03(レイン)】が大鎌を回す。
『邪魔』
丁寧ではない。
雨を刈り、壁を削り、収束より先に感情が先走る。
それでも歪みは折れていく。
折れる過程が、周囲を巻き込みすぎている。
『チビ、またかよ』
【02(ヘイル)】の声が、路地の入口から落ちる。
砲は担いだまま。
撃つ構えではない。
【03(レイン)】の肩がびくっと動く。
『呼ぶな』
『呼んでんだよ。やりすぎだ』
『鎮めてる』
『暴れてるに見える』
雨脚が強くなる。
【03(レイン)】は鎌を構えたまま半歩出る。
【02(ヘイル)】は動かない。
『余計な範囲まで刈るな』
『……分かってる』
『分かっててやれ』
【03(レイン)】が、水煙の向こうで小さく笑う。
『08の件といい、あんたもキレることあるんだね』
空気が、一瞬だけ薄くなる。
【02(ヘイル)】は砲を担い直すが、撃たない。
答えもしない。
答えないことが、一番の答えだった。
『うるさい。鎮めろ』
『……はいはい』
【03(レイン)】は舌打ちをし、鎌の先を地面へ落とす。
雨が、少しだけ丸くなる。
完全には収まる前に、彼女は背を向けた。
『02は面倒くさい』
『お前が先に面倒くさい』
小柄な体が、水煙の奥へ溶ける。
【02(ヘイル)】は追わない。
追わなくても、止まると分かっている。
路地には、水音だけが残る。
08の名前は、短く落ちて、それ以上は掘られなかった。
環象社の拡声器が遅れて流れる。
「降雨が収束に向かっています」
青は、まだ戻っていない。
番号の距離も、まだ同じだ。




