第20話 敬意の斬撃
光の歪みが、工場跡の屋根を焼いていた。
環象社のランクはB。
避難は済んでいる。
残っているのは熱と、黒鋼の回収班だけだ。
『ようやく、ちゃんと動く相手か』
【05(ライトピラー)】は翼を開き、大剣を構える。
対しているのは、黒鋼の上位強化兵。
以前より反応が速い。
防がれる。
防がれるたびに、彼女の目が熱を帯びる。
『悪くない。もっと来い』
斬撃が光柱を連れて走る。
壁が裂け、強化兵の装甲が削れる。
それでも止めは刺さない。
相手の膝が落ちたところで、剣の先を止める。
「な……にを」
強化兵が喘ぐ。
【05(ライトピラー)】は見下ろしても、見下さない。
『殺すのは、もったいない』
敬意がある。
面白い相手は生かす。
それが彼女の流儀だった。
背後で黒鋼が叫ぶ。
「回収優先! 中枢を壊すな!」
『俺の都合と、お前らの都合は別だろ』
【05(ライトピラー)】は翼を打ち、光の歪みの核へ切り込む。
暴れていた柱が折れる。
空の色が戻る。
環象社の無線が遅れて流れる。
「異常光が収束に向かっています」
【05(ライトピラー)】は剣を肩に担ぎ、倒れた強化兵をもう一度見る。
『次も、本気で来いよ』
それだけ言って、上昇する。
感謝も、宣言も、長い余韻もない。
戦いのあとには、熱した金属と、生きたまま残された敵だけが残る。
黒鋼の隊長が舌打ちをする。
「また、止めなかった」
「止める気がないんだ。あれは」
影は、すでに工場跡の上を離れている。
次の光が立つ場所へ、先に向かう。




