第17話 短い再提示
説明が終わっても、現場の温度は変わらない。
夜の埠頭で、雹が薄く混じり始めていた。
【02(ヘイル)】は砲を担いだまま、短い息を吐く。
『……またか』
一発。
軌道が変わり、氷の粒が粉になる。
雹の歪みは、彼女の手で収束へ向かう。
仕事は早い。
同じ時刻、別の街区では雨が暴れていた。
【03(レイン)】は大鎌を担ぎ、水を刃へ変える。
丁寧ではない。
だが、雨の牙は確実に折れていく。
『……邪魔』
誰に向けた声でもない。
彼女は自分の属性だけを刈り、次の角へ消える。
さらに遠い廃ビルでは、【01(ライトニング)】が鞘に触れたまま動かない。
自分の番ではない。
雷の声は、今は遠い。
番ではないことを、電磁の流れで確認しているだけだ。
三体は揃わない。
会話もしない。
同時刻に動いていても、地点も属性も別だ。
共通しているのは、それぞれが自分の歪みを鎮めているという一点だけだった。
黒鋼の監視班が、端末に残す。
「今夜も個別。連携の形跡なし」
「強い三体の気配は、また別々だ」
噂で聞いていた格の違いは、接近するほど言葉になりにくい。
測れるのは結果だけだ。
誰がどう動いたかより、何が収まったかだけが残る。
【04(イラプション)】は、その三体の気配を高所から一度だけ測り、弓を下ろす。
『深入りしない』
短い再提示は、それで十分だった。
七嵐という名前を知ったあとでも、彼女たちの歩き方は変わらない。
青は、まだ戻っていない。
番号は、今夜もばらばらに現場を後にする。




