第16話 七嵐
ここまでの影には、名前がある。
人々はそれを知らない。
環象社の発表にも載らない。
だが、気象の歪みの奥で動いている機体たちは、自分たちを数字で呼び合う。
七嵐だ。
かつては八体いた。
08が消えたあと、残った番号が今も動いている。
彼女たちはアンドロイドだ。
気象の歪みを正すために作られた。
雷、雹、雨、噴火、光柱、風、極光。
それぞれが、自分の司る現象に対応する。
命令系統はない。
共通の拠点もない。
通信もしない。
動く理由は単純だ。
「自然の声」を聞き、自分の属性が牙を向いたと察知すれば、現場へ向かう。
それ以外の番号の事情には、基本的に踏み込まない。
同じ場所に居合わせることはあっても、組織として連携しているわけではない。
数字が若いほど強い。
01、02、03の三体は、他と明確に格が違う。
04以降も戦えるが、同じ土俵には立てない。
彼女たちは英雄ではない。
守るために感謝される位置にも立たない。
鎮めても、世界は完全には戻らない。
一時的な沈静化を、何度でも繰り返すだけだ。
それでも七嵐は動く。
誰かに命じられたからではない。
作られた目的が、そこに残っているからだ。
表では、環象社が対処を発表する。
裏では、黒鋼が痕跡を追う。
そのどちらにも属さず、影のまま歪みへ入っていくのが、七嵐だった。
青は、まだ戻っていない。
彼女たちは、その前提の上で今も歩いている。




