第14話 面倒な収束
夜空が、不自然に色づいていた。
極光じみた光が、ビルの谷間に降り、ガラスを虹色に濁らせる。
美しいが、安全ではない。
環象社のランクはC。
人が立ち止まり、誰かが端末で撮影しようとする。
『えー、めんどくさい』
その声と一緒に、双銃を持った影が屋根から降りた。
【07(オーロラ)】は、あくびを噛み殺すように目を細める。
『勝手にやっててほしいんだけど』
光の歪みが、地表の金属を熱し始めていた。
放置すれば、看板も車体も持たない。
彼女は双銃を上げ、走りながら撃つ。
固定位置を取らない。
戦場を駆け、光の粒を散らし、歪みの芯を打ち崩していく。
「動いてる! 追い切れない!」
下で黒鋼が叫ぶ。
【07(オーロラ)】は聞いているが、興味がない。
『知らなーい』
一発、また一発。
丁寧ではない。
だが、収束には足りている。
空の色が剥がれ、不自然な極光が薄れていく。
環象社の拡声器が流れる。
「異常発光が収束に向かっています」
【07(オーロラ)】は双銃を肩に担ぎ、屋根の端で立ち止まる。
『終わった? じゃあ帰るね』
誰に確認しているわけでもない。
応答もない。
彼女は面倒くさがるように手を振り、次の屋根へ跳ぶ。
黒鋼の一人が呟く。
「あれも対象か。軽い……軽すぎる」
「軽く見えて、止められてるのが実態だ」
跡には、散った光の粒と、熱を帯びた金属だけが残る。
深い敵意も、長い宣言もない。
面倒な収束が、今夜も淡々と終わった。
【07(オーロラ)】の背中は、もう見えない。
他人の事情には、最初から興味が薄かった。




