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第100話 青は、まだ

夜が明けても、空の色は完全には戻らなかった。

環象社は平常を宣言し、黒鋼は回収を縮小し、人々は規制の外から街へ戻る。

巨大な白の記憶は、早くも「原因不明の異常が収束した日」へ整理され始めていた。

【02(ヘイル)】は損傷を抱えたまま、砲の冷却を確認する。

『……生きてるな』

【03(レイン)】が、隣で短く舌打ちをする。

『あんたが死んだら、叩くつもりだった』

『死ねねえよ』

短いやりとりだけで、二人は別方向へ歩く。

仲間宣言はない。

なのに、距離は以前より少しだけ近い。

【04(イラプション)】は弓の弦を一度だけ弾き、張りの残りを抜く。

測れない斬撃を見たあとの手は、いつもより静かだ。

【05(ライトピラー)】は翼を完全には閉じず、空の濁りを見上げたまま立ち止まる。

面白い相手の不在を、初めて長く感じている。

【06(ハリケーン)】は戦場から外れた水路で、流されてきた小動物を抱き上げる。

争いは終わっても、守るものは残っている。

【07(オーロラ)】は双銃を分解し、部品を布で拭く。

『重いの、消えた』とだけ言い、次の夜のために整備を続ける。

廃ビルでは、【01(ライトニング)】が窓際に立っている。

布の下の眼は、光を持たない。

持たないまま、散った白のあとの街を測る。

最大の牙は折れた。

00の残響は、核を失った。

それでも歪みは残る。

雨も、雹も、雷も、風も、また牙を向く。

『青は、まだ戻らない』

誰にも届かない声だった。

なのに、今夜の声には、以前よりわずかな静けさがある。

加賀美リンは避難所の鍵を閉じ、カツヤと並んで帰る。

アヤは広報文面の末尾に「調査中」と打ち、私用メモは開かない。

影は、英雄にならない。

表は、影を知らないまま修復される。

その隙間で、七嵐はまた個別に歩き出す。

青は、まだ。

それでも、牙の一本は折れた。

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