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卑劣! 勇者パーティに追い出されたので盗賊ギルドで成り上がることにした!  作者: 久我拓人


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~卑劣! 分かれ道は物理的に~

 セキの門を越えると――そちら側でも村のような場所となっていた。

 こちらは完全にヒョーゴ側。

 なので、警戒するのはここからが本番だ。

 移動する人々に混じるようにして道を進んでいく。商人たちに混じるようにして、そのままセキの外へと出た。


「ふむ……」


 ちらちらと俺たちを見てくる視線を感じるのは……俺たちが外来の者だからだろうか。


「パル、見られてるか?」

「はい。でも、敵意とかは感じないです」

「やっぱり金髪は目立つな。フードをかぶるのも、それはそれで倭国では目立つ服装でもあるし……う~む、難しいな」

「あたし達が陽動のほうが良かったんじゃないですか?」


 確かに、と俺は苦笑する。


「セツナにはセツナの都合があるんだろう」

「分かります分かります。魔王さまが視察に訪れている時は実家に帰りたくありませんものね」


 そこは帰りなさいよ、と思わなくもない。


「アンドロさんが可哀想」


 パルの言葉に同意する。


「えぇ、わたしもそう思います。ですがですが、わたしがひたすら魔王さまに叱られているのを見ているアンドロちゃんも可哀想だと思いませんか? 怒る魔王さまも大変でしょう。ならば、誰も叱られることがない魔王さまとアンドロのコンビにしておくのが、すべて丸く収まる方法です」


 確かにその通りなので、やっぱりアンドロさんが可哀想だと思った。

 ま、実家に近づきたくないのは、それぞれ理由がある。

 パルもジックス街のラビアンさまの神殿にはまったく近づかないもんな。イヤな思い出というか、トラウマというか、なんと言っていいのか。

 セツナも閉じ込められていたらしいし、同じような気分なのかもしれない。自分を閉じ込めていた相手なぞ、会いたくもないと思うのが当然だろうか。

 それならやはり、俺たちが代わりに七星護剣を探しに行くしかあるまい。


「とりあえず今はこのまま進むぞ」

「はーい」

「了解ですわ」


 街道をそのまま進んでいくと人の賑わいが段々とまばらになっていく。注目を集めたり、不審に思われていることはなく、段々と視線の主たちも消えていったので気分的にも落ち着いてきた。

 モンスターもほぼ出現しないので、警戒は人間種だけでいい、というのも奇妙な話だが。

 いつもとは少し違う旅路になっているのは確かだ。

 なにより、勇者パーティで来たときにはヒョーゴの地にまで来ていないので、初見の風景でもある。

 さてさて、道に迷うなんていうマヌケなことはしたくない。


「――とは思ったものの、難題が現れたな」


 歩きとルビーの影馬での移動を繰り返し、何事もなく街道を進んでいたら。

 行き先が三つに分かれていた。

 真っ直ぐに続く道と左右のナナメに続く道。

 そのどれもが、なんとなく『真っ直ぐ』のカテゴリーに含まれそうで、なんというか微妙だな。


「真っ直ぐとは聞いていたが、さて……?」


 一応看板はある。

 あるにはあるんだが……


「読めませんわね、これ」


 木で作られているのだが、かなり傷んでいた。一応文字らしき物は見えるんだが、それもお店の看板のように癖のある文字となっており、カスれているのと相まって判別できない。


「どっちかな」


 パルが道の先を見渡している。

 右側はどうやら海辺に続いているらしく、遠くに浜辺らしきものが見えた。

 真っ直ぐな道は山に繋がっている。それなりに高い山で、まだ雪が残っているのが分かった。

 左は鬱蒼とした森らしきものが先に見える。


「う~む。人に聞くのが一番だが……」


 タイミング悪く、誰もいない。

 もう少し詳しく聞いておくんだったなぁ。

 仕方がない、ルビーを頼ろう。


「すまんルビー。影で作った鳥か何かで情報を得られないだろうか」

「わたしの知覚外にニンジャがいた場合、バレる場合がありますが」

「その場合は、ルビーが視線を感じたり見つかったと分かったりするのか?」

「相手の技量によりますわね」


 ふ~む。

 安易に情報を求めるのも危険か……しかし、ここで無駄に時間を使うのもなぁ。


「よし、真ん中の道を進もう」

「なんで真ん中?」

「もしも左右どちらかが正解だった場合、そのまま横に向かって移動すればいい。もしも右側の道を選んで、正解が一番左だった場合とか大変だろ」

「物理的な話ですのね」


 俺は肩をすくめる。

 もしも勇者パーティの賢者がここにいたならば――的確な推理で正解の道を推測できるんだろうけど。

 俺にはこれが精一杯だ。


「なにかアイデアはあるか? 良いアイデアは採用し、思いっ切り褒めるぞ」

「はいはいはい!」


 パルが勢い良く手をあげた。


「早いな。はい、パル」

「足跡とかが多い道を選ぶ」

「なるほど。では調べてみてくれ」


 ルビーが考えている間にパルが道を調べる。

 街道にはそれなりに人が通った跡があり、それらは残っていると言えば残っているが……ほぼ判別不可能だ。

 なにより、人が通り続けた結果が『道』と言って良い。

 というわけで――


「ほとんどいっしょ……?」


 そんな答えになってしまう。


「まぁ、あえて言うなら真ん中の道が一番広い、と言えるな。わずかな違いでしかないが」


 逆に言うと、浜辺に続く右の道は少々狭い印象がある。

 ならば、右の道は除外してもいいかもしれないな。

 もっとも。

 そういう時に限って、右の道が正解だったりするので何とも言えないが。


「ルビーは何か思いついたか?」

「わたしの二つ名をお忘れになりましたか、師匠さん」

「清廉潔白だったか」

「はい。清廉潔白にもうひとつの二つ名を高らかに宣言しましょう」


 ルビーは、腰に手を当ててフフンと笑いながら言った。


「アホのサピエンチェです」

「よし、行くぞ」

「はーい」

「あ~ん、ツッコんでくださいましぃ!」


 慌てて追いかけてくるルビー。

 とりあえず真ん中の道を進んでみる。


「何か村か集落でも見えてくれればいいのだが」


 そう思いつつ、ルビーに頼んで影馬を作ってもらう。それに乗って進んでいくと、影馬がいきなり止まった。


「この先に人の気配がありました」


 分かった、と影馬から下りてそのまま進むと荷車を引く商人らしき男がこちらに向かってきた。


「よぉ、旅人さんかい?」

「えぇ。こんにちは」


 にこやかに挨拶しておき、そのまま質問した。


「すいません、ヒョーゴのヤツルギの屋敷を見物したくて来たのですが……それはどちらでしょうか?」

「あぁ、それならこの道を真っ直ぐでいいよ」


 合ってた!

 運がいいな。


「道が別れていて迷っていたのです。助かりました」

「あぁ~、あの分かれ道か。確かに旅人さんには分かりにくいか」


 あっはっは、と笑われる。

 笑いごとではないんだが、地元に人間にとっては、分かってて当たり前の道なのかもしれない。

 それを考えると……もしやヒョーゴは旅人が少ないのかもしれないな。


「すいません、他にも間違えやすいところはあるでしょうか」

「いろいろとありそうだがなぁ。オレらにとっては当たり前だから、う~ん……」


 商人は腕を組んで考える。


「とりあえずアレだ。ヒメノミチを目指しな。そこからカミノトへ行けば八剱さんとこのお屋敷があるよ」

「ヒメノミチとカミノトですか。ありがとうございます」

「おう。このまま真っ直ぐ行くとヒメノミチの街につくから。その先はそこで聞くのがいい」


 なるほど。


「ありがとうございます、助かりました」

「いやいや、これくらいは安いもんさ」

「商人さんは何を売ってるの?」


 パルが荷車を覗く。


「村で取れた獲物の革だよ、お嬢ちゃん。でかいクマがいたんで、エンゴで売ればそれなりの金額になると思ってな。他にもいろいろと持ってきたんだ」

「ふ~ん。食べ物はある?」

「はちみつがあるぞ」

「買います!」


 というわけで、道を教えてもらった義を返すためにはちみつをパルが買った。

 義を果たすとかそういうんじゃなくて、普通に欲しかっただけな気がしないでもない。

 たぶん。


「毎度あり。良い旅を」

「ありがとうございます」


 さて。

 運も味方をしてくれたようだし、このままヒメノミチという街を目指そう。

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― 新着の感想 ―
やはりアホのサピエンチェは正式名称……
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