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卑劣! 勇者パーティに追い出されたので盗賊ギルドで成り上がることにした!  作者: 久我拓人


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~可憐! 作戦立案は夢の中へ~

 師匠といっしょに情報収集してた。

 そしたら、なんだかガヤガヤしてみんなが集まっているので見に行ってみると――なんかすっごい綺麗な人とルビーがいっしょにいて。

 しかもお城に入っていきました。

 なんだあれ?


「師匠、ルビーがなんかいたんですけど」

「いたなぁ」


 呆然と見送るしかなかったっていうか、なにやってんのよ、と止めに行くとこっちが止められそうな雰囲気があったっていうか……


「キモノ綺麗だったね」

「……あぁ~、そういえば着てたな。すまん、いろいろ考えててキモノにまで及ばなかった」

「考えって?」


 あたしが首を傾げて師匠に聞くと――


「あの人たちを全員を眷属化してたら、とか、もしもなんらかのミスをしてルビーが犯罪者として追われることになった場合の今後の行動とか……なんというか、心臓に悪い光景だった……」


 って、腕を組んで難しそうにうなる師匠でした。


「ルビーが戻ってきたらキモノ褒めてあげてね。でも、変なことしてたら絶対に褒めないで。逆にあたしを褒めてください」

「パルは仲間思いなのか、自己中心的なのか、どっちなんだ?」

「どっちも」

「なるほど、ワガママなんだな」


 えへへ。

 欲しいものは全部欲しいですし、師匠はあたしが大好きでいて欲しい。

 あと、あたしが好きなものは師匠も好きでいてほしいな。

 ルビーも好きだし、ベルちゃんも好きだから。

 ときどきルビーは嫌いだけど。


「とりあえず、さっきのを調べるか」

「また釣りですか?」

「いや、今のはむしろ旅人向けだろう」


 というわけで、手頃なお店に入る。

 刃物屋さん、って感じで武器じゃなくて包丁とか鎌とか売ってた。あたしが商品を見ているフリを続ける。

 旅人さんが包丁とか鎌とか興味あるわけないし、冒険者として刃物に興味ある、みたいな偽装だった。


「なるほど、オイランが城に」


 そこで得られた情報は、オイランって呼ばれる娼婦がお城にお呼ばれすること。それをオイランドーチューっていうらしい。

 昔はもっと派手だったけど、今はだいぶ落ち着いているっぽい。それでも、エンゴの城下街では名物みたいになってて、みんな見物するんだって。


「へ~。他の街でもそうなのですか? それともエンゴだけのオイランでしょうか?」

「ちいせぇ街ではないと思うが、でけぇ所だとあると思うぜ。炎護の名物っていうよりかは倭国の名物だな。なんでい旅人さん。あんたも遊びたい口かい?」

「え、あ、いやいや――」


 ちらりと師匠があたしを見てくる。

 えっと、この場合は……


「大丈夫です、旅人さん! あたし、その時はごはん休憩しておきます!」


 こんな感じでどうですか?

 ガハハハ、と刃物屋さんが笑ってくれたので満足。


「旅人さん旅人さん、これからヒョーゴに行くんですよね。だったら、そっちで遊んでみたらいいんじゃないですか?」


 そう言ってみたけど、刃物屋さんは否定しない。

 ヒョーゴにもオイランはいるってことだ。

 情報ひとつゲットしましたよ、師匠!


「い、いやいや。俺は遊ぶ気はないので。お金を浪費するのもよろしくない」


 ……師匠、素で答える?

 それともこれも演技?

 わかんなーい。


「むぅ。あたしの護衛代も大事……じゃぁ、あたしがオイランになるっていうのは?」


 冗談っぽく言ってみると、師匠はなんか本気で考えたっぽく、有りか無しかで迷い始めたのが分かった。

 それ、演技じゃないよね師匠。


「かわいい花魁だな、嬢ちゃん。仕事はできんのか?」

「分かんない。とりあえず、護衛はできます」


 ガハハ、と笑う刃物屋さん。


「ヒョーゴでも、あんな風にお城に呼ばれるんですか?」

「あっちはお城じゃなくてお屋敷だな。そうだな、呼ばれるんじゃないか。そうなりゃ嬢ちゃんも立派な花魁だ」

「じゃ、それを目指します」


 頑張ってくれや、と刃物屋さんといっしょにガハハと笑った。


「ありがと、おじさん。お仕事がんばってね」

「おう、また来てくれよ」


 刃物屋さんから出ると、師匠は息を吐いた。


「あたしがオイランになったら困る?」

「困る。オイランになるまでに、たくさん仕事してるだろうからなぁ。それを思うと、しんどい」


 ぐぬぬぅ、という感じで腕を組んで身体を傾かせていく師匠。

 そんな本気で考えなくてもいいのに。


「で、オイランでお屋敷に潜入するんですか? 使える方法?」

「その方法で策を考えてみたんだが……やっぱり無理があるだろう。なにせ、オイランになれん。ルビーみたいにオイランといっしょに潜入したところで自由に動けんだろ」

「そっか」


 オイランになれたところで、お屋敷で自由に動けるわけじゃないしね。


「屋敷に入って自由に行動するのなら、最初からこっそり侵入しておくのと変わらん。メリットがほとんどない」

「見つかったら、迷っちゃいましたぁ、ってごまかすのが楽。とか?」

「そんな言い訳が通じるか?」

「……通じないですよね」


 そういうことだ、と師匠は肩をすくめる。


「そろそろ宿に戻るか」

「はーい」


 宿に戻って師匠と手に入れた情報をまとめていると、夜になる。ごはんをいっしょに食べに行ったりして、ちょっとしたデート気分だった。

 ごはんを食べ終わって、ちょっとだけ城下街を歩いたりしたけど、真っ暗なので人通りはゼロに近い。

 情報収集もできそうにないので、宿に戻った。


「師匠、いっしょに寝よ」

「ルビーに怒られるんじゃないか。抜け駆けするなって」

「帰って来ないルビーが悪いんだもん」


 にひひ、と笑いながら師匠といっしょに寝る準備。タタミに布団を置いて、準備完了。

 ぽいぽいっと装備を外して、服を脱いで師匠のお布団にいっしょに入る。


「師匠ししょう、ちゅーしよ。ちゅーして」

「ダメです」

「なんでなんで~」


 腕にしがみついても師匠は天井を見上げるばかりで、あたしを見てくれない。


「この状況でキスしてみろ。我慢できん」


 ぐぐぐ、と腕に力が入っているのが分かる。

 めっちゃ我慢してる師匠だった。

 なので意地悪したくなる。


「我慢しなくていいのに~」


 そう言いながら、師匠の太ももに足を絡めた。

 ミチィ、と音が聞こえそうなくらいに太ももの筋肉にガッチガチに力がこめられた。


「わぁ。硬くて大きい」

「やめろ」

「にひひ。ワザとです」

「でしょうね」

「ドキドキしたドキドキした? ねねね、師匠。いいでしょいいでしょ。触るだけ」

「ダメです」

「じゃぁあたしが触る」

「ダメです」

「だめじゃないもーん」

「やめてください、やめてください……って、これ普通は逆じゃないのか?」

「あはは、そうかも」


 って答えてから、ふたりして布団から起き上がって壁をみた。

 夜闇で分かんないけど、ぜったいいるでしょ。

 ルビー!


「どうしました、人間種。続けなさい。わたしを楽しめるのが、そなたらの仕事でしょう」

「覗き魔だ」

「失礼ですわね、誰がフロートアイですか」

「風呂と愛?」

「フロート・アイ。空飛ぶ目玉モンスターですわ。ただいま帰りました、師匠さん」

「おかえり、ルビー」


 師匠はルビーの視線に気付くと、そそくさと布団の中に入った。

 カチカチだったもんね、師匠。


「別に気にしなくてもよろしいんですのよ。わたし、オイランを勉強してきましたので」

「俺が恥ずかしいんだよ。で、どういう経緯でオイランに加わってたんだ?」

「はい、それですが――」


 ルビーの説明を聞いて、ふむふむ、と師匠はうなずく。


「城の中はどうだった?」

「大陸の造りとはまったく違い、ほとんどが木造でした。わざと床がきしむような場所もありましたので、防衛に向けて造られたかのような雰囲気があります。城というよりも、砦という印象でしたわね」

「砦か」


 お城と砦……どう違うんだろう?


「砦は戦争用に作られたって印象を持っておけばいい。大陸ではほとんど残っていないが、砦が後に領地になったりした場合、領主が住む屋敷に改築されたりするので、名残がある場所もあるぞ」

「ほへ~。じゃ、エンゴのお城も砦だったってこと?」

「その可能性はあるな。ま、今回は何にも関係ないので、どうでもいい情報だが」

「だってさ、ルビー」


 にひひ、と笑うとルビーはくちびるを尖らせる。


「そこは役立つ情報だと思っていませんわ。試したのはお城にわたしが入れるかどうか、結界があるかどうかです」

「どうだった?」

「問題ありませんでした。普通に入れましたわよ」

「魔物種だと気付かれてる様子もなかったか」

「えぇ、特に睨まれてる様子もなく、普通の人間種扱いでした。くっくっく、上手く忍び込めたようです。これでも魔王直属の四天王ですので」


 普通に考えたら、モンスターが入れないようにしてるんだろうけど……さすがにルビーレベルのモンスターが来るのは想定されてないのかも。

 それか、ルビーレベルだと対処できないとか?


「ふむ。ワザと探知されることは可能か?」

「はい?」

「ワザと探知されて、混乱を引き起こす。それは可能だろうか?」

「わたしのプライドが許しませんわね。ですが、師匠さんの頼みであるのなら、喜んで探知されましょう」


 プライドないじゃん。


「何か言いまして、おパル」

「何も言ってないよぅ」


 視線では言っちゃってたかもしれないので、バレちゃった。

 失敗しっぱい。


「あ、そうだ」


 ひとつ思いついたので師匠に言ってみる。


「ルビーに剣の場所を調べてもらって、そのまま取ってくるんじゃダメなんですか?」

「ダメだろう」

「どうして?」

「やってくれるか、ルビー」

「イヤです。そんなつまらない方法、死んでもやりたくありません」


 ほらな、と師匠は肩をすくめる。


「ルビーの人でなし」

「人じゃありませんので」

「そうだった。え~っと、ルビーの役立たず」

「はい」

「受け入れちゃった……わ~ん、師匠~」


 師匠に泣き付くフリして抱き付いた。


「あ、ずるい! わたしも抱き付いてよろしいでしょうか? ほら、パルに意地悪なことを言われてしまって傷心気味なのです。師匠さんのぬくもりで癒されたい気分」

「ええい、寄るな寄るな。俺は寝るぞ」

「じゃ、あたしも寝ます」


 にへへ、と笑いながら師匠の布団にもぐりこんだ。

 こういう時、微妙に力を緩めて許してくれる師匠が好き。


「では、わたしはこちら側に。さて、朝まで楽しみましょうか」

「そうだよ~、師匠~。楽しもう楽しもう」


 ぐぬぬ、と考え込むような師匠だったけど、不意にため息をついた。

 おぉ、あきらめちゃった?

 ついにあたし、抱かれちゃう!?


「よし、分かった。では順番を決めるので、ふたりで勝負しろ」

「お~」

「わたしは後でもかまいませんけど?」

「いや、ここは平等でいこう。ふたりとも目をつぶってくれ」

「はーい」

「分かりましたわ」


 あたしは目をつぶった。

 ちゃんとつぶってるかどうか確かめるために、師匠があたしの目のあたりを撫でてくれる。

 ちょっとくすぐったい。


「よし、ではこれより声を出してはいけない。目を開けてもいけない。先にヒョーゴのヤツルギの屋敷に関しての良い方法を進言したほうに褒美を与える。ただし適当なアイデアで俺が却下した場合、失格とする。質問は無し。よーいスタート」


 えぇ、いきなり始まっちゃった。

 え~っとえ~っと、なにかアイデアを考えないと~……


「……」

「……」

「……」


 静かになる部屋の中。

 いろいろと考えたけれど――

 そのまま寝ちゃった!

 師匠の策にハマっちゃったよぉ、あーん!

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