第6話「到着」
窓に差し込む朝日で目が覚める。備え付けの目覚まし時計よりも早く。不思議と目覚めは良く、船旅による疲れはない。
顔を洗ったマオは身体を軽くストレッチして部屋を出る。まだまだ他の乗客は眠っており、船内は静かである。
「おはようございます。昨晩は眠れましたでしょうか」
「はい。いつもよりも目覚めがいいくらい」
「それはよかったです。あと二時間後にはアルトスに到着予定ですので、それまでごゆっくりどうぞ」
船員に笑顔で話し掛けられたマオは、同じように笑顔を浮かべて一礼した。
「二時間後、か。もうすっかり目は覚めたし、コーヒーでも飲んでくつろごう」
※ ※ ※
アルトスへの到着を魔導客船が知らせる。
船長と船員たちに見送られながら、その足でアルトスの大地へ踏み出す。
「着いたぜ!」
「やっぱり陸は違うよ。足の裏が喜んでる気がする」
「同じ外の空気でも甲板とは大違いよ」
三者三様にグイーッと伸びをして深呼吸。
「これからどうするんだ? そもそもジャンの目的も知らないよ」
「知ってるかマオっち。今、グランで流行ってること」
「流行り? オレ、流行りには疎いから」
「駄目だぜ。そんなんじゃモテねえぜマオっち。今、グランで流行っていることといやあ、懐中時計じゃねえか」
「ふーん」
「んだよ。その微妙な反応は!」
「懐中時計なら――ほれ」
マオはジャケットから懐中時計を出して見せた。流行りだとか関係なく、たまたま安く売っていたのを買っただけ。それも半年前にだ。懐中時計が流行りだしたのは一ヶ月ほど前から。
「なあー!?」
「そんなに驚くことかな」
「マオっち。お前さんという奴はあああ」
ジャンは地団駄を踏む。どういうわけかいつも自分より先を行くマオを羨ましく感じる。
「ジャン君はミーハーってわけ」
「ミルフィーたん、そいつは違うぜ。ボクはこだわってるんだ。そのためにアルトスまで来たんだぜ」
「確かにアルトスは世界でも有数の時計国だけど、わざわざ船に乗ってまで買いに来る? ワタシには分からない」
「グランがアルトス製の時計を輸入してるのはもちろん知ってるぜ。けど残念。輸入されているのはアルトスで売れ残っちまったもんなんだ。ボクが欲しいのは人気のやつだぜ」
「その行動力には脱帽よ。初めてジャン君を尊敬しちゃった」
「へっへー! もっと尊敬してくれミルフィーたん!」
鼻を高くして笑うジャン。ミルフィーに尊敬されたことが余程嬉しいのだろう。
「人気なら早く行こうよ。ここまで来て買えなかったら無駄足もいいところだよ」
「そう急かすんじゃねえ。ボクには分かるぜ。ボクのことを呼んでいる懐中時計の気配が!」




