第5話「ディナー」
シャワーを浴びてベッドに飛び込み眠りについたマオ。
次に目を覚ました彼の耳に聞こえてきたのは、自分のお腹が空腹を訴える音だった。
顔を洗い完全に目を覚まして部屋を出る。向かうは昼間と同じレストラン。既にミルフィーとジャンが座っていた。
「よく眠れたか? マオっち」
「ワタシたちも来たばかり。これから注文するの」
「そうだったんだ。昼は肉を食べたから、今度は魚を食べようかな」
「駄目だぜマオっち。男は黙って肉だ肉」
「お肉ばかり食べてもしょうがないでしょ。偏食ばかりしてると身体を壊すよ」
「ミルフィーたんは固いぜ。好きなものばかり食べて早死にするなら本望だ!」
「あら意外。リョウコさん悲しむんじゃない? 先にジャン君が死んじゃったら。ジャン君はいいの? リョウコさんを悲しませてしまっても」
「そ、それは困るぜ!?」
「なら野菜も食べないと。このサラダも頼みなさい」
「……仕方ないぜ」
「オレ嫌だな。オレよりも先に友達が死んじゃうのは」
「ワタシも。ジャン君はワタシたちの理解者でもあるんだから」
二人に逃げ道を封じられたジャンは、ステーキと致し方なくサラダを注文。マオはアジフライを、ミルフィーはマグロバーガーを注文した。
しばらくして料理が運ばれてくるや食べ始める。ジャンは目尻に涙を溜めながらサラダを食べている。
「そんなに野菜が嫌いなのか」
「毎日毎日、三食野菜を食わされてみろ。本来なら見るのも嫌だぜ」
「肉や魚だって同じじゃないか」
「違うぜ。違うぜマオっち。どう違うかと言うとだな――」
「――言い訳しない。残さず食べなさい。野菜を育てた生産者に申し訳ないでしょ」
「う~っ! ミルフィーたんは母ちゃんかあ!?」
ミルフィーにだめ押しをされ、ジャンはサラダを頬張るしかない。
「ミルフィー。ハンバーガーだけで足りる?」
いつもならしっかり食事をすることを知っているだけに、ミルフィーの食べているものにマオは疑問を浮かべる。
思わぬマオの言葉に、ミルフィーは顔を赤らめた。
「さっきシャワーを浴びた時にお腹を摘まんでみて……ちょっと抑えないと……なんて思ったの」
「ダイエット?」
「痩せるのは大変だもの! 今まで気にしなさすぎたもの」
「ジャンのこと言えないよ、ミルフィー。ちゃんとバランスよく食べて適度な運動をすれば太らないよ」
「そう言われても……」
「言い訳しない。食べたいのを我慢してストレスを溜める方が身体によくないよ。いざって時に身体が動かなくなるし、肌だって荒れるよ」
「……太りたくない……」
「女の子は気にしすぎだよ。痩せすぎず太りすぎず――健康体が一番だとオレは思う。今は全然気にすることないよ」
「……意地悪じゃん。そんなこと言われれば食べたくなるでしょ」
「食べて食べて! 男の人の前だからって小食ぶるのは駄目だよ」
「えーっ!? リョウコたんが太ったりしたら嫌だぜ」
「ジャン君。リョウコさんに自分の理想を押し付けちゃ駄目。嫌われるかも」
ジャンにチクッと言葉を放ちながらも、どこか表情に明るさを取り戻したミルフィーは意気揚々と追加注文するのだった。




