第26話「聖霊術奥義」
水色の杖の先端をドラゴンに向けると、強烈な水の塊を連続で放っていくミルフィー。彼女の身体からは魔力が溢れている。
「ミルフィー!?」
「どうやら大丈夫そうかな」
「その姿は?」
ネルガのお陰で痛みが引いたマオは起き上がり、見た目が変化したミルフィーに訊く。
「ワタシとヴィーネの――聖霊術の奥義なんだ。融合とか合体とは違うんだけど」
「憑依とも違うわね」
「綺麗ですー!」
「あんまり見られても困るんだ。ワタシの身体がコレに耐えられる時間は五分とないかも」
「えーっ!」
「聖霊と人間の心と身体をひとつにすれば凄く強くなれるんだけど、それだけリスクが高くてさ」
「リスク?」
「聖霊に対して人間の身体が耐えられず、あっという間に自滅するの」
「自滅って!?」
「ヴィーネはワタシのことを気にしてなかなか首を縦に振ってくれない。でも今は別。なりふり構ってなんかいられないもの」
杖の先に水を大量に溜めていく。さっきよりも遥かに巨大は塊をドラゴンの頭上に放る。
「ミルフィー。いくら水を当てたところで無駄だよ」
「ハッキリ言っちゃってくれるよマオきゅんは。でも大丈夫。ドラゴンを閉じ込めちゃうもの」
「閉じ込める……そっか!」
マオの脳裏に過ったのは、試合でミルフィーにやられた攻撃。相手を水の中に閉じ込めて溺れさせる技。
「食らいなさい! ワタシとヴィーネの奥義――レゾナンスを!」
巨大な水の塊を一気にドラゴンへ振り下ろして閉じ込める。どんなに強いものとて、呼吸ができなければ苦しくもがく。
「いけるよ!」
「いくです!」
「いけるわ!」
「これで終わりじゃん!!」
ミルフィーは勝利を確信する。思わず口元が緩む。が――。
「「!?」」
――その確信は幻想に終わる。ドラゴンが、自分を閉じ込めていた水の塊を飲み込んだのである。
「嘘……でしょっ!?」
「フィー! ボーッとしない!」
「はっ!」
動揺した一瞬を突かれ咆哮を受けたミルフィーは、洞窟の壁に叩きつけられてしまう。
「フィーちゃん!」
「……ゴフッ!」
咳き込んで血を吐き出す。目の前が揺れている。たったの一撃で追い込まれてしまい奥歯を噛み締めてしまう。
「オレが相手だ!」
火を放ちながら自分に注意を向けようとするマオだが、ドラゴンはマオが眼中にないようだ。
ミルフィーに向けて咆哮の準備を始める。この咆哮を受ければミルフィーに勝機はおろか命もない。
(ワタシ、死ぬんだ)
ミルフィーが目を閉じたと同時にドラゴンから咆哮が放たれた。




