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第25話「奮起の風」

 ドラゴンは翼をだらりとさせた――と同時に目をカッと見開いて、油断していたジャンを吹き飛ばす。


「うわあああ――っ!!」


「ジャン!」


 マオが素早く反応してジャンを受け止める。地面に転がる形となってしまったどころか、背中を強く打ってしまう。

 苦痛な顔をするマオを心配するジャンだが、その背後ではドラゴンが牙を剥いていた。


「このままじゃ二人共危ないじゃん!」


 ミルフィーがブツブツ唱えながらドラゴンの前に飛び出していく。胸の前で水の塊を作り出し勢いよく放った。

 顔に水が当たったにも拘わらずドラゴンはまったく動じない。真っ直ぐ三人を見たまま口を開く。


「マオきゅん!?」


「背中……打っちゃった」


「ネルちゃん! ヴィーネ!」


 ミルフィーの声にネルガとヴィーネは素早く反応し、マオを避難させた。


「コンチクショー!」


 突風を連続でジャンが当てている間に、ミルフィーは水を掌に纏めていく。


「はあっ!」


 水の塊をドラゴンに向けて放つ。水の塊は、水風船のように弾けた。


「ジャン、ミルフィー」


「動かないでです。すぐに治すです」


 マオの腰にネルガが手を当てる。以前マオの腹痛を治したように。

 ヴィーネはミルフィーの側に行き指示を仰ぐ。


「ヴィーネ。こうなったらアレしかない」


「アレって――まさかアレを!?」


「そう。痛いとかキツいとか言ってられないもの。死ぬよりかはマシじゃん」


「ですが!」


「お願いヴィーネ。命を懸けてでも守りたいものがあるんだ」


「分かりました。ミルフィー様のお願いならば」


「ありがとう。ジャン君。ワタシの準備ができるまでの時間稼ぎをお願い」


「へへっ! ミルフィーたんのためならやってやるぜ!」


 ジャンの周囲に強烈な風が巻き起こる。ドラゴンを前にしているが、もう臆してはいない。その目には自信が宿っている。


「見せてやるぜ。ボクの必殺技――」


 脚を大きく開き体勢を低くする。足の裏でしっかりと踏ん張りながら、両手を前へと突き出した。


「――トルネード!!」


 身体の周囲に起こした風をドラゴンへと放つ。ドラゴンを捉えたトルネードは、その風圧を強めていく。


「くっ!? コンニャローめえ――っ!!」


 突き出した両手に力を込めていく。奥歯を噛み締めるジャンの顔には血管が浮き出ており、彼の必死さが見てとれる。


「もう少し……もう少し。耐えてジャン君!」


 両目を閉じてヴィーネと精神統一をしているミルフィーにもジャンの必死さが伝わってくる。


「うおおお!!」


 ジャンの雄叫びが洞窟に響く。それがトルネードの限界でもあった。汗を垂らして息を切らす。もう立ってもいられない。


「お疲れさま。あとは任せて」


「……へへ……っ。やっぱミルフィーたんは天使……だぜ」


 意識を失う前にジャンが見たものは、水色の髪と瞳を宿し、水色の杖を持ったミルフィーであった。 

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