第14話「ドラゴン」
教室棟から飛び出す二年生と三年生。物怖じせず森に近づいていく姿は頼もしい限り。
その先頭を行くは学園長。上空の生物を睨みながら走っていく。
(あれは何なのだ? 五十五年生きているが初めて見る。この島独自のか……いや、そういうものとも違う)
※ ※ ※
「よう!」
「「ぎゃあああ!!」」
木に隠れていたジャンとサツキの前に現れたマオとミルフィー。ジャンとサツキは驚いて声を上げてしまう。
「「しーっ!!」」
マオとミルフィーは、人差し指を口元に当てて二人を咎める。
「どうしてこっちに。テレポートならマルギアまで逃げれたはずだろ?」
「オレだけ逃げるわけにはいかないよ」
「マオっち~!」
「どうするつもり? 私らを連れて逃げるつもりか」
「そうしてやりたいのは山々だけど、テレポートするには集中力が必要で。シュシュッと連続でテレポートを使うのも無理だよ」
「そう上手くはいかないな」
「サツキ先生は凄腕の魔術師なんでしょう? なんとかならない?」
「おだてても無理だ。私だってあんなの初めて見る。こうして見上げているだけでも脚が震えてしょうがない」
「人間なんて丸飲みでしょ。それくらい巨大じゃん」
「助けが来るのを待つしかない。情けない先生だ私はっ」
唇を噛み締めて悔しさを露にする。それが精一杯であった。
そんなことなど塵ほども知るよしもない黒い生物は、両翼を勢いよく羽ばたかせ風を起こす。その威力も範囲も凄まじく、次々と木々が倒されていく。
「「!?」」
身体を隠していた木も倒されてしまい、その姿を晒してしまうマオたち。
「こりゃあ参ったよ。木で道が塞がれた!」
「マオっち。奇跡でも何でもいい。テレポートしてくれ!」
「……くっ!?」
目の前に迫る巨大な生物に圧倒されてしまい、完全に集中する余裕がなくなっていた。マオができることは冷や汗を流すことだけ。
「ヴィーネ! ワタシたちで迎え撃つ!」
「…………」
「このまま殺される方がいいわけ!」
「……思い出したのです。あれは数年前、ワタクシたちを襲ったドラゴンです!」
「ドラゴン?」
「もう駄目です。ワタクシたちは殺されます!」
「分かった。そこで大人しく怯えてなさい」
ミルフィーが、右の掌をドラゴンに向けて構える。何か策があるわけではない。それでも大人しく殺されるのだけは避けたいのだ。
「ミルフィー」
「マオきゅん。ワタシが時間を稼ぐから、そのあいだに集中して」
「分かったよ」
マオは集中する。一刻も早く逃げるために。それが今、自分にできる最大の役目だと。
ミルフィーの水がドラゴンに当たるがビクともしない。硬い鱗に守られているからである。
「えーっい! 男は度胸だぜ!」
震える身体を無理矢理動かして突風を放つジャン。ドラゴンの目に放つものの、やはりビクともしない。
「逃げ腰で教師が務まるかって!」
サツキが強力な雷を放つ。眼鏡を外したその顔つきは、普段のものとは違っていた。
「マオ! まだなの!?」
「難しいことを言われちゃってるからな。マルギアまでは無理だ。けど、なんとか距離は稼げるよ」
急かすカムアに返事ができるくらいに平常心を取り戻したマオは笑っていた。気配を探っている時に学園長の魔力を感じたからだ。
「マオくん!」
「みんな! 飛ぶよ!」




