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第10話「ヴィーネ」

 昼休み。図書室にミルフィーの姿はあった。本の背表紙を指でなぞっては取り出して読む。それはもう黙々と。


「ふーぅん。ここでなら見つかると思ったのだけど」


 本をしまい椅子に座る。キャラメルアッシュ色の髪を弄りながら考え込む。そんな姿も画になるのか、「可愛い」という男子の声が耳に入る。ミルフィーにとっては耳障りでしかない。


「静かにしてほしい」


 静かに呟いて立ち上がり図書室を出ると、落ち込んだ気分を変えるために外へ出る。学園を囲む木々の香りが風に乗って鼻に届く。


「クシュン!」


 ミルフィーは自然の香りが苦手だ。海の潮の香りも、木々や草花の香りも。どうしてかは分からないが、あまり自然と触れあったことがないのが一因なのかもしれない。


「聖霊のことを知れるかもと期待していたけど。魔術学園と聞いて期待し過ぎたようね」


「…………」


「たまには出てきたらどう。どうせ誰も見えないもの」


 ミルフィーが誰かに話しかける。すると、水色の髪を腰まで伸ばした少女が現れた。髪と同じ水色の目を見開いて深呼吸をし、深々と頭を下げる。


「ミルフィー様。聖霊のことについて何か掴めましたでしょうか」


「いいえ」


「そうですか」


「随分と冷静じゃん。他の聖霊のことが掴めていないのに」


「ワタクシには何もできないので。聖霊の気配を探ることすらできません。ミルフィー様の力になれません」


「今は、でしょ?」


「この先も力になれないと思います」


「そんな消極的でどうするの。行方不明になった仲間を捜したくてワタシと契約したんでしょ。貴女が諦めたら終わりなの!」


「ミルフィー様」


「ワタシに聖霊が見える理由は分からない。貴女と契約したことで聖霊術師なんて名乗っているけど、ほかに聖霊のことが見える人に出会ったことはない。聖霊が何者で、どういう存在かなんて知らない。けどそれでも諦めてない。貴女以外にも聖霊は存在していて、ワタシ以外に聖霊の存在を肯定している人がいるってことを!」


「ミルフィー……様」


「見えない=存在しないなんてワタシが認めない。だって、貴女はここにいるじゃん!」


「そうですね。ワタクシは確かに存在しています。こうして生きています。希望を捨てるのは時期早々でした」


「そうだ! マオきゅんなら貴女が見えるかも!」


「マオきゅん?」


「ワタシと同じで、ほかの人には見えない存在が見えているの。ワタシにあの二人のことが見えているのだから、マオきゅんが見えても不思議じゃない!」


「だといいのですが」


「自信を持って! 彼の連れている二人と見比べても貴女負けてない!」


「はい――?」


「自分の魅力には気づけないものよ。ヴィーネ」

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