第26話「女の勘」
マオとミルフィーは保健室に来た。ジャンの元気そうな顔を見て胸を撫で下ろす。
「大丈夫そうで安心したよ」
「それはこっちの台詞だぜ。近衛騎士部の団長と会ってたんだろ。よくまあ無事に帰ってきたぜ」
「まあな。とっても綺麗で強い人だったよ」
「綺麗ってことは女性なのか!」
「うん」
「ボクもひとめ拝みたかったぜ」
「見とれていると斬られるでしょ。厳しい人だったもの。綺麗な薔薇には棘があるものよ」
「そいつはおっかねえ」
「しかし驚いたよ。学園長と団長が親子だったんだよ!」
「マジで!?」
「意外と世界は狭いのよ」
「……親子か。リョウコたんのことは家族に知らせたのか?」
「ええ。当然といえば当然だけど、酷くショックを受けてたみたい。ワタシとマオきゅんは同行できなかったの」
「ボクはどんな顔でリョウコたんの家族に会えばいいんだ。そもそも会ってくれるのか」
「ジャン君のことを気にしていたみたい。リョウコさんは、貴方のことを楽しそうに話していたそうよ」
「ボクのことを? そっかあ。楽しそうに。それは知らなかったぜ」
「きっと会ってくれるよ。会いたいに決まってるよ。ジャンしか知らないリョウコさんを知りたいはずだよ」
「だといいなあ。身体を充分安静させたら行くぜ」
「会いに行くといえば、コノハちゃんにも会わないと駄目よ。とても心配していたもの」
「ボクを心配してるんじゃねえ。ボクにあげた懐中時計とルーペを心配してるんだ」
「物を心配している感じではなかったけれど?」
「ミルフィーたんの気のせいだぜ」
「そうなのかしら。でもこういうときの女の勘は鋭いものよ」
「女の勘かあ。姉ちゃんがよく自慢してるけど」
ジャンは懐中時計を手に取る。蓋を開けると時計が動いている。
(時間は戻らねえ。どんだけ望もうがリョウコたんは戻らねえ。ボクはボクの時間を、人生を歩まねえといけねえな)




