第三作目 「最弱の俺、ガチャから出た最強の仲間に囲まれて俺を追い出した仲間に復讐を誓った件について」
利用規約に書いてあった事が現実として起きている。
《目標を達成出来た作品は、全て《書籍化》されます》
「マジで、マジだったんだな……」
カチ盛られたタバコの灰をゴミ袋に投げ捨て、
キッチンの水道水をコップに注いでいた時、
部屋から光が差し込む。
慌てて水を持って戻ると、モニターから文字が飛び出し始めていた。
「最弱の俺、ガチャから出た最強の仲間に囲まれて俺を追い出した仲間に復讐を誓った件について」
俺の三作品目、自称「をいをい」だ。
異世界に生きる主人公「我地谷」が、
スキル「ガチャ」の力で追放してきたパーティメンバーに復讐をする話だ。
……待てよ、"どの時期”の我地谷が出てくるんだ……?
そんな事を考えていると、モニターから光が放たれ、
視界が真っ白になった。
「「「「「「「「「「「う"っ」」」」」」」」」」」
目の前には「我地谷」と、
我地谷のスキル「ガチャ」で出てきた最強の仲間たちが、嗚咽していた。
待ってくれ。ここは6畳しかないんだぞ。
何十人いるんだお前らは。
ギチギチすぎて押し入れの襖が崩壊寸前までひん曲がっている。
外に繋がる窓は、もはやひび割れていない部分の方が少ないレベルだ。
ああ、俺の家、終わるんだな。
「僕は我地谷、君は?」
「私はアリア、我地谷の妻ですッ♡」
「我はガリル、我地谷を守護する者だ」
「ワシは大賢者ラジン、我地谷の家庭教師とやらじゃ」
「私は」
「ボクは」
「ワタクシは」
ああ、そういえばこんなに居たな。
仲間に囲まれて幸せそうな我地谷の事が、少し羨ましかった気がする。
独りで無力な俺とは違って、
強い仲間に囲まれた楽しそうな我地谷。
でも、大広間に住んでるからこそ羨ましかったんだな。
6畳にこの人数はヤバい。
「俺は庭辺だ。それで我地谷、お前たちは何しに来たんだ?」
「闇の力に飲まれた僕の元パーティメンバーを止めに冒険してたんだ」
そうだった。我地谷の元パーティメンバーは、
我地谷の力と幸福に嫉妬し、
闇の力に飲まれて我地谷を探し回っていた。
「瞬足の剣士 ハイラール」
「聖女 マリアンヌ」
「重騎士 ガルフ」
「魔法使い イルシュ」
彼らは我地谷が抜けてからも、注目されるパーティだった。
しかし、我地谷のスキル「ガチャ」によって注目が奪われ、
受けられていたクエストも全て我地谷が持っていってしまう。
活動が難しくなってしまったところに、
魔人から甘い言葉で誘われてしまった彼らは、
闇の力を受け入れ、全員が魔人として我地谷に襲いかかるんだった。
今、冷静に考えてみると、
我地谷の方が悪なんじゃないかと思う。
「そうか、人が多すぎて見えないけど、多分窓の外にいるぞ」
「皆、窓から出て!」
「窓を開けて出て!って言え!」
すでに跡形もなく窓は砕け散っていた。
外には我地谷の元パーティメンバーが待ち構えていた。
魔人特有の紫色と黒を混ぜたような肌、大きな2本の角。
魔力の高さ故に角には赤い電気が走っている。
「我地谷! 瞬足の剣士 ハイラールは光速の剣士になっている!」
「姿勢を低くしたら、迷わず後ろに跳べ! じゃないと死ぬぞ!」
「ガリル! 赤い光が強くなったら防御魔法を全力で貼れ!」
「アリア! ゲイルに補助魔法をありったけ使え!」
「その他は左右に展開して挟撃だ!」
「大魔法使い イルシュを集中攻撃しろ!」
「「わかった承知オッケー了解!」」
「おっけー!行け!」
魔人となった元パーティメンバーの魔力は凄まじく、
立っているだけで周辺の空気は揺れ、
割れたガラスが振動で揺れ続ける。
これが、"魔力"。
敵は大量の仲間に守られている我地谷の更に奥にいるはずなのに、
ここまで"威圧感”の壁を感じる。
これが、作品の中にいる彼等が感じていた恐怖なのか。
明るかった空は雷雲で覆われ、
ビルの奥に見える地平線は灰色の空気に染まっていた。
「スキル:合成! 右の23人と、左の11人を僕に!」
我地谷の固有スキル 合成
当然ながら、俺が考えた能力。
スキル「ガチャ」で出てきた仲間のステータスとレベルをそのまま自分のモノに出来る。
そして「ガチャ」から出てくる仲間のレベルは上限値の999。
23人と11人を合成したから、
我地谷の今のレベルは、多分大体20000から40000の間くらいだ。
そして、そこから放たれる魔法は、
「我地谷!」
「皆!」
「「超極大焦熱魔法Lv32968 火炎!」」
俺の視界は白と赤を混ぜた色に包まれ、
閃光走った後に窓から見えた景色は、
熱で溶かされた地面と建物。
普段窓から見える道路や、
建物を構成していた"物質"が焼ける"匂い"が窓から漂ってきた。
「みんな! ありがとう!」
「我地谷、よくやった!」
「おじさん!」
「おう!」
「うん!」
「……おう!」
我地谷と、大量の仲間たちは光に包まれて消えていった。
俺は特に何もしていないし、ただ見ていただけだが、
文字だけで見ていた"魔力"や"威圧感"が現実になった時の感覚。
夏休みの夕方、遊び疲れて帰る時の夕暮れに感じた寂しさを、
煮詰めて、焦がして、泥を加えたような感じだろうか。
言葉でうまく言い表せない。
だから俺は底辺作家なんだろうな。
先ほど見た光景と、それを言い表せない自分の無力さ。
それを感じ取ってタバコに逃げる自分に、いつも通り失望していた。
モニターが光る。
《目的達成、書籍化決定!》
我地谷の目的は、元パーティーメンバーへの復讐だった。
無事に達成出来たな、我地谷。
モニターの前に置いているキーボードの上には、見覚えのない本が乗っていた。
その本には大きくこう書かれていた。
著者 庭辺 隆司
「最弱の俺、ガチャから出た最強の仲間に囲まれて俺を追い出した仲間に復讐を誓った件について」
主人公 我地谷 直 14歳
14歳の誕生日二日前、
いつも通りパーティメンバーの荷物持ちとして働いていた我地谷。
この世界では、14歳の誕生日にスキル鑑定の儀が行われる。
「我地谷!お前のスキルなんだと思う?俺が剣聖で、マリアが聖女で、ガルフは重騎士で、イルシュが魔法使いだろ?」
「だからさ、弓の達人とか、盗賊とかだったら最高だな!」
「あらあら、ハイラールったら興奮しちゃって」
「マリアンヌ、我々も楽しみにしているだろう」
「そうねガルフ、我地谷はどんな力を持っているのかしら」
「イルシュより強い可能性はゼロ……」
誕生日当日、スキル鑑定を受けた我地谷の前で光る水晶に浮かび上がる文字。
《スキル「ガチャ」》
「お、おい、なんだこれ」
「我地谷、ステータス見せろ!」
「す、ステータスオープン」
力1 敏捷1 体力1 知力1 運[1e8997]
「な、なんだこれ……ゴミじゃねえか……」
「おい、お前、俺のパーティから抜けろ、二度と近寄るんじゃねえぞ」
我地谷の復讐が、今始まる。




