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第二作目 「悪役令嬢に転生した私が冷血王(クールブラッドキング)と呼ばれている人に溺愛されている件について」

昨日、俺こと底辺作家 庭辺(にわべ) 隆司(りゅうじ) の書いた第一作目

「異世界に転移した俺がスキル「拒絶(リジェクト)」で魔王を瞬殺してしまった結果、神と呼ばれる事になった件について」から飛び出してきたリュウジが、

俺の目の前で、魔王ザバルを一瞬で倒した。



非現実的な光景だったけど、

あれが現実だと手元にある本が教えてくれる。


著者 庭辺 隆司

「異世界に転移した俺がスキル「拒絶(リジェクト)」で魔王を瞬殺してしまった結果、神と呼ばれる事になった件について」第一巻


俺が書いた内容が、全部そのまま書籍になっている。

あんなに待ち望んでいた光景が、今手元に現実となって残っている。


ただ一つ不思議なのは、リュウジが突き破った窓ガラスが完全に元通りになっている。

俺にチートスキルでも付与されたのだろうか?


考えても考えても答えが出ない。

息抜きに煙草臭い部屋で深呼吸をする。


「すぅ~……っくああ~!」

死んだ肺が狂喜乱舞している気がした。


そのままいつも通り天井を眺めようとした時、視線と天井の間に文字が浮かび上がってきた。

何かの例えとかじゃなくて、"文字通り文字が浮かんでいた"


「悪役令嬢に転生した私が冷血王(クールブラッドキング)と呼ばれている人に溺愛されている件について」


これは俺が二作目に描いた小説、自称「悪ぶら」だ。

ブラック会社に勤める24歳の乙女ゲーマー「日向(ひなた)」がトラックに轢かれ、

乙女ゲーム「漆黒の朝と日向の夜」の世界に転生する。


主人公の「サニー」に対し、嫌がらせをする「マリー」に転生してしまう日向。

マリーは敵国の王子、「冷血王 アルマ」に殺されるはずだった。


マリーは過去の悪行が原因で国から追い出されてしまう。

追い出されたマリーは敵国の冷血王 アルマに拾われ、仲を深め合って幸せになる物語だ。

昨日と同じなら、あの規約通りに何か起きるんだろうな。


「一度参加すると、終了まで各版権は取り上げられ、該当作品の登場人物達が現れます」

「目標を果たすまで、世界は取り込まれ続けます」

「目標を達成出来た作品は、全て《書籍化》されます」

「目的を達成出来なかった場合、作品は消滅します」


この物語における目的ってなんだろう。


そう思いながら、タバコの煙が浮かんでいる文字に向かって進むのを眺めていた。

次の瞬間、モニターが光を放ち、視界が真っ白に染まる。


「うわ、懐かしい風景……臭っ!」

「なんだ此処は? 死体安置所か?」


目の前に現れたのは「悪役令嬢に転生した私が冷血王(クールブラッドキング)と呼ばれている人に溺愛されている件について」に出てきた「悪役令嬢 マリー」と「冷血王 アルマ」だった。


「うおお! マリー! アルマ!」

「な、なにこのおっさん!?」

「無礼者、斬る」

「斬らないでください!王!俺は味方でございます! ところで、二人はどうしてここに?」


彼等の"目的"がいまいち分からない。

何を手伝えばいいのだろうか。


「わ、私たちは……う"っ……旅行の最中で……サニーの国から送られてきた暗殺者に……」

「ああ、暗殺者を返り打ちにしてやろうと思って馬車から出た」

「お前が暗殺者か?」

「俺が暗殺者に見えますか?アルマ王」

「見えないな」

「その通りでございます」


そうだ、彼らは馬車で旅行中に、

「サニーを溺愛する王子が送ってきた暗殺者」に狙われるのだ。

そこでアルマは瀕死の重傷を負って……という所で更新をやめたんだった。


あのまま書き続けていたら、アルマはそのまま……死んでいたのか?

もしそうであるなら、今回の目的は、

「アルマを生かす事」なのではないか?


「お前、名は?」

「庭辺(ニワベ)でございます」

「そうか。ではニワベ、外にいる連中はお前の仲間か?」

「外?……いえ、私はTシャツにパンツ1枚。彼らは黒装束」

「どうみても俺は無関係で、あいつらは暗殺者です」

「マリー、ここで待っていろ。すぐに終わらせてくる」

「アルマ様……ウ"ぅ"ッ……」


アルマ様、急いでくれないとマリーが臭いで死んでしまいます。


勢いよく賃貸の窓を突き破り、外に飛び出すアルマ。

飛び出した先を囲むように待ち構える6人の暗殺者。


「暗殺者が白昼堂々私に戦いを挑むなど、笑止千万」


アルマが剣を抜くと同時に、暗殺者の横を通り抜ける。

生々しく、赤黒い血が吹き上がるのを眺めていた。


そのまま剣を振り下ろし、二人目。


風に乗って鉄と脂の匂いが漂ってくる。


返す刀で二人を薙ぎ払うと、恐慌状態に陥った残りの二人を後ろから突いて終わらせた。


アルマが暗殺されたのは、光も届かない暗い森の中。

暗殺者たちは鳥や動物たちの鳴き声で足音を消し、6人で襲い掛かってやっとアルマを瀕死に追い込んだのだ。

それがこんな明るい街中でアルマに勝てるワケがない。


だが、人が斬られるっていうのは、

"こういう事”だったんだな。


「う"ぐ……お"え"っ」

「ちょ、庭辺さん!?」

「はぁ……はぁ……マリーさん、ごめん。人が斬られた後の臭いとか、光景とか」

「そんなのちゃんと考えた事なくって……」

「そうですわね……う"っ……わたくしも最初は驚いた記憶がありますわ」

「けれど、ここまでリアルではなかったような……」


嗚咽する俺、そんな俺を見て嗚咽するマリー。

戻ってきたアルマは混沌とした状況に困惑の表情を浮かべていた。


「どういう状況だこれは」

「い、いえ。アルマ王、お見事でございました」

「ええ、アルマ様、お守りくださり、誠にありがとうございます」

「気にするなマリー、お前は俺が一生守る」

「アルマ様……」


二人が俺の部屋で口づけを交わすと、そのまま光に包まれていった。


俺が更新をやめた時点で瀕死のアルマは、

本来であれば死んでしまう未来だったのだろう。


ハッピーエンドではなく、バッドエンドにハマっていた頃の作品だ。

だからこそ、溺愛してくれる冷血王と共に幸せになるマリーを見届ける事が、今回の目的だったんだ。


外を見ると、割れた窓は"割れてなかった"かのように綺麗で、

斬られた暗殺者たちの血も、姿も、全てが綺麗に片付けられていた。


「あんな簡単に命を奪えるなんて、冷血王、本当に冷血なんだな……」


《目的達成、書籍化決定!》


自分が生み出した存在に恐怖を覚えつつも、

パソコンの唸り声とモニターからの光で意識が現実に引き戻されていく。


マリーとアルマの香水の香り、それから、血の臭い、脂の臭い、鉄の臭い。

全てが綺麗に片付いているのに、鼻の奥からあの匂いが離れない。

どっちが現実で、どっちが夢なのだろうか。



モニターの前に置いているキーボードの上には、見覚えのない本が乗っていた。

その本には大きくこう書かれていた。


著者 庭辺 隆司


「悪役令嬢に転生した私が冷血王(クールブラッドキング)と呼ばれている人に溺愛されている件について」

主人公 日向 咲子 24歳

ブラック会社で日付が変わる頃に退社し、帰宅中居眠り運転していたトラックに轢かれてしまう。


目が覚めると、茶髪の可憐な美少女「サニー」に起こされる。

「マリー様! よかった、お目覚めになられて本当によかった……!」

乙女ゲーム「漆黒の朝と日向の夜」の世界に悪役令嬢「マリー」として転生したのだった。


マリーは日向が転生する前、数々の悪逆非道な行為をサニーに行っており、

サニーを溺愛する王子たちに尋常じゃなく憎まれていた。


その結果、王子たちに国外追放を言い渡されたマリーは、

着の身、着のままで彷徨っている所に敵国の王 アルマが通りかかる。


「美しいドレスを泥まみれにして、顔も泥だらけ。お似合いの姿だな? マリー」

汚い物をただ斬り捨てようと剣を抜くアルマ。

「……今までごめんなさい、サニー、王子。幸せになってね」

「心から、心からそう願ってる。ごめんなさい、お父さん、お母さん」


そう呟いたマリーの眼には、以前まで漂っていた濁りや嫌悪感が消えていた。

「……貴様、本当にマリーか?」


マリー(日向)と冷血王と呼ばれたアルマの心が溶かされていく恋物語が、今はじまる。

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― 新着の感想 ―
面白い!wただ個人的な感想なんすけど、主人公の心情が少し置き去りになってんなぁーって思っちゃいました せっかくこんなに面白い設定と作品があり、情景描写も上手いのに、心情が上手く汲み取れないなぁーって見…
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