呪い5
呪いによって失ったものが恋愛感情だと知ってから、蓮の生活は変わった。
「ねぇ……お兄ちゃん。なにを捨ててるの?」
心配そうな顔でりりさは尋ねた。
妹の質問に対し、蓮は高そうな服や香水、恋愛攻略の本などを片付けながら答える。
「ハーレムに必要だったもの」
「でもそれって……お兄ちゃんが頑張ってお金を貯めて買ったやつじゃん」
「……もうどうでもいい」
暗い表情で笑みを浮かべながら、蓮はそう言った。
「もうハーレムとか…夢とか……どうでもよくなったんだ。だからいらないものは捨てる」
「どうでもよくは……」
「どうでもよくあるんだよ。恋愛感情を失って、ハーレムなんてどうでもいいなんて……そんなことを思っている俺に…俺に……」
蓮は唇を震わせながら、口をギュッと閉じる。
「ごめん。なんでもない……」
「あ」
死んだ魚のような目をしながら、蓮は片づけを再開した。
そんな彼に何かを言おうとしたりりさは、伸ばしていた手を引っ込め、悲しそうな顔でその場を去る。
今の蓮になにを言っても無駄だった。
彼の胸には大きな穴が開いている。
恋愛感情を失ったことで、蓮の夢は叶えることができなくなった。
「知らなかったな……知りたくなかったな。感情の一部を失うことがこんなにも辛いなんて」
感情の一部の喪失。
それは肉体の一部が失うのと同じくらい辛いものだった。
そしてなによりハーレムを作るという夢を叶えたいと思えなくなったのだ。
普通の人ならハーレムなんて非現実的だと言うだろう。
しかし蓮は本気だった。
本気でハーレムを作りたいと思っていた。
だからファッションを覚え、勉強し、休みの日は頑張ってナンパをしてきたのだ。
「ああ……クソ……」
目元が熱くなるのを感じた蓮は、片手で顔を覆う。
静かに泣く少年。
そんな彼に……一人の少女が近づいた。
「蓮くん」
鈴のような綺麗な声を聞いた蓮は振り返る。
彼の視線の先にいたのは、艶のある黒髪を伸ばし、翡翠の如き美しい緑色の瞳を持った和風少女—――ハナだった。
彼女は真剣な表情を浮かべながら、蓮に顔を近づける。
「ど…どうしました、ハナさん?」
「蓮くん…私と―――」
「デートしましょう」
後書き
読んでくれてありがとうございます。
ここ最近、いい物語を書けてないので一時的に休止させていただきます。
五月に投稿を再開しようかと思います。
読者の皆様が満足いく物語が描けるように頑張ります。




