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異世界ファンタジーの投稿日記~初作品で1年間毎日投稿して灰になった男の記録~  作者: 三河三可


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案3 黒髪の巫女サヤネ

「どけーーっ」


 再び真っ逆さまに地面へ落下する。普通ならば死を覚悟するが、極限状態であっても他人を巻き込みたくない。そんな葛藤はあるが、体は無意識に防御姿勢をとってしまう。


 だが俺の体は、急激に減速を始める。想定していた地面へと叩きつけられる急停止ではなく、大きなGを感じる程度の感覚。

 そして、草むらをクッションにしながら地面へと辿り着く。俺が揺れ動かした草花は、何事もなかったかのように再び風に揺らめき、ドラゴンの驚異を感じさせない青空が広がっている。


「大丈夫?」


「あっ、ああっ」


 俺の顔を黒髪の少女が覗き込んでくる。いや、少女に見えたが、身長が小さいだけで、体つきや漂う色香はもう少し大人。纏う巫女服には、特別な力を感じてしまう。


「ごめんっ、大丈夫。怪我してない?」


 黒髪の巫女は首を傾げると、悪戯な笑みを浮かべる。


「ねえっ、問題があれば責任をとってくれる? 転移者さん」


「いや、いきなりそんな事言われても……」


「いきなり降ってきたのは、貴方でしょ。私は被害者で、貴方は加害者。分かってるかしら?」


 仮に元の世界に戻れたにしても、俺に出来ることはたかが知れている。怪我していれば病院に連れていくし、少しくらいの慰謝料は払える。しかし、俺の全く知らない未知の世界。


「転移者なのか……。ゴメン、5分と経ってない誕生したばかりの転移者じゃ、きっと何も出来やしない」


「そう、私は悪くはないと思うの。きっと大丈夫」


 そう言って、黒髪の巫女が見せたのは黒い羽根。


「それが、俺に何か関係してるのか?」


「やっぱり、気付いてないのね」


 黒い羽根を指し棒代わりにして、俺の脇を指し示すと、黒い塊が見える。


 幸いにも黒髪の巫女を巻き込まなかっただけで、他のものを巻き込んでしまっている。慌てて起き上がれば、もう黒い翼も消えてしまっている。辺りを見回しても、黒い翼の主は見つからない。


「ちょっと、鈍いところがあるのかしら?」


 黒髪の女の子が手を伸ばすと、不思議な感覚がする。俺の体から離れた場所なのに、何故か触れられている気がする。


「えっ、まだ、気付かないの?」


「ちょっと待って、痛いって」


 今度は、触れられた感触が痛みへと変わる。経験したことはない、これが幻肢痛なのかと思うが、背中に腕なんてあるわけがない。

 しかし俺の視界に入ってくるのは、黒髪の巫女が摘まんで引っ張ってくる翼。


「何だ、これ?」


 慌てて背中に手を回してみる。服を貫通しているが、間違いなく俺の皮膚から翼が出ている。


「何だって言っても、転生者へのギフトでしょ。黒い翼を望んでこの世界に来たんでしょ」


「ギフトって、これが俺に与えられた能力」


 意識して動かそうと思えば、確かに黒い翼が動いてくれる。しかし、この翼にロマンを感じる程の魅力はない。

 翼を最大限に伸ばしても、肘程までの大きさしかない。俺の意思通りに動かせても、体が浮く気配すらなく、飛行能力としての性能は欠如している。

 確かに、落下を続ける状況を打開すべく”飛べるような翼”を願った。しかし、それは大きな間違いだった。


 ”飛べる翼”じゃなくて、”飛べるような翼”。完全に揚げ足を取られた気がする。俺の前に姿すら表さない、恐らくはダメ神。


「マジかよ。飛べない翼って。しかも黒い翼なんて、イメージも最悪じゃないか」


「あら、私は悪くないと思うって言ったのに。それって私に対しての挑戦かしら」


 しかしダメ神を非難すれば、目の前の黒髪の巫女の機嫌があからさまに悪くなる。


「いや、そうじゃなくて。黒い翼って、何か、その不吉そうだなって。俺の居た世界での話だけど……」


「私の心は、深く傷付いたわ。ちゃんと責任をとって、しっかりと契約してもらうわね」


「契約って、何の? 奴隷とか従属契約だったり……」


「そこまでじゃないわよ。私のご主人様になってもらうのよ。私は影の精霊に仕える巫女サヤネ。貴方の名前を教えてくれるかしら?」


 ここで名前を教えれば、契約が成立してしまうのだろう。しかし、サヤネの静かな迫力に抗う術はない。


「俺の名は、カケル。天野カケル」

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