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「そう!まさにこの時がやってきたのだ!やってきて……しまった……」
悠は机に突っ伏した。軟体動物のようである。
「折角長期休みがあると思って学校に就職したというのに……嫌だ。休みが明けるのが嫌だ」
「なにをぶつぶつ言っているのかしら。雑魚事務員」
「それはパワハラだと我は思うのだが」
悠に罵詈雑言を浴びせたのは学園の若い教師だった。黒く艶のある長い髪が常に悠の癇に障っている。
「今日日、ショッカー戦闘員の方が活躍するかもしれないわ」
「呪い殺す」
「好きになさい」
教師が去った後、悠は怒りに任せてPCを立ち上げる。
そして、とあるサイトを開く。
「ふん!バーチャルネット魔法少女である我が、あのクソ教師の悪口を書いて絶望の淵に落としてやる!」
悠は五月雨のごとく、キーボードを叩き始めた。
『おにいたまたち!元気?魔法少女ユーだよ!?』
うげっ。
悠は自らの媚びっぷりに吐き気を催す。
『昨日は入学式だったんだけど、ユー、お寝坊しちゃった。ユーってホント、ドジ。それで先生に怒られちゃったの~。うわ~ん。怖かったよぉ』
悠が一たび投稿すればネット世界に嵐が吹き荒れる。
無数の書き込みが不気味な泡のように浮かび上がってきた。
『ユーちゃんをいじめるなんて!いいなぁ。ワイもいじめたい』
「オイオイオイ」
『むしろいじめられたいでごわす!』
「オイオイオイオイオイ」
『凌辱凌辱』
『ホモォホモォ』
『マジしこしこ』
悠は頭を掻きむしる。
「なんなんだぁ!こいつらはァ!」
いつものことながら、悠は肩を落としていた。
「よう。佐上」
悠に気安く話しかけてくる男がいた。
「我に気安く触るな。どこを触っている!」
「いや、目玉だが」
「オイ!くりぬくな!」
しばらくして悠の目に触れられた痛みが走った。
「で、何なのだ。鷺宮2号」
「俺は長男だ!」
「うぅ!ごめんなさいごめんなさい謝るからもう目に触らないで!」
仕方ない奴だという風な態度を男性教師は取った。
飛んでもない奴だという態度を悠は取る。
「で?なんなのだ?」
「ああ。これの認可を頼む」
悠は差し出された書類に目を通して、言う。
「却下」
「オイ。それはお前が決めることじゃないだろ」
「我にも権限がある。そもそもに魔法少女倶楽部とはなんだ!痛いにもほどがあるだろう!」
悠自身にブーメランのように帰ってくる。
「活動内容も魔法少女とピクニックに行くだと!?今日日萌えキャラがキャンプするだけでもヒットするが、キャンプなぞヒットすると思うのか!アニメ業界はそんなに簡単じゃないぞ!」
「顔のいい声優か有名どころに声を当てさせりゃいいだろ」
「それもそうだな。ウム」
悠は書類を突き返す。
「我は絶対に認めんぞ!」
「ちょっと、佐上くんいいかな」
悠は校長に呼び出される。
校長は何故か幼女であり、金髪碧眼だった。
「ライ校長。なにかございましたでしょうか」
「理事長室へ」
「は、はいっ!」
校長に呼び出されるのも、理事長室に入るのも初めてである悠は緊張と不安でいっぱいだった。
「我が一体何をしたのだろうか。この前理事長室行きだった飴玉を一つ拝借したのがバレた……」
悠は大分混乱しているようだった。
「失礼します。理事長」
「キミが佐上くんだね」
悠の目の前には――おかっぱの幼女が立っていた。
「何故に幼女がこんなところに」
「ボクは理事長のパフィーパフ。失礼パフね」
「これは夢かフィクションなのだな。こんな強烈なキャラが現実にいるはずがない」
「キミ、魔法少女倶楽部を認可したまえパフ」
「な、何故ですか!理事長」
「あのね、キミ。学校のパソコンでキミが何をしているのか分かっているパフよ。バーチャルネット魔法少女――」
「許可します!」
そうして、魔法少女倶楽部は部として学校から正式に認められたのであった。




