11(after16)
11
わたしは鏡の前に立っている。その鏡に映るのは自分じゃないみたい。すごく着飾って、これから一生に一度の儀式に臨むような、そんな姿。
「ゆず」
わたしを呼ぶ声。
「お父さん」
「きれいになったな。娘よ」
花子お父さんは涙を流した。
「せっかく、これから結婚式だっていうのに、泣かないでよ」
泣きたいのはこっちの方なのだ。
「すまないな。これからお前がお嫁に行くと思うと、つい」
その言葉を聞いた瞬間。わたしはパパの胸に飛び込んでいた。
「パパ。わたし、お嫁になんか行きたくない。ずっとパパの娘でいたい」
「ゆず。キワムくんは人の心の痛みがわかるとってもいい子だ。だから、パパがいなくても大丈夫だよ。彼はきっとゆずを幸せにしてくれるはずだから」
お父さんはそう言ってわたしの頭を優しく撫でた。
お父さんに手を引かれてヴァージンロードを辿るわたしをみんなが祝福する。その中に彼女の姿はない。
わたしの心は沈んでいる。でも、それを悟られないように、精一杯の造り物で答える。
わたしが好きなのは、道の先に待っているその人ではない。
「新郎。あなたは永遠の愛を誓いますか?」
「誓います」
「新婦。あなたは永遠の愛を誓いますか?」
わたしはためらう。この瞬間、答えてしまえばわたしはもう戻れなくなる。好きでもない人を愛さなければならない。
もう、やめよう。あの人のことを想うのは。もう、今日で終わるのだ。わたしの愛は。
「誓います」
「では、誓いのキスを」
ゆっくりとベールが取り払われる。肩を大きな手で包まれ、厚い唇が私の下へと進んでくる。そして――
「待て!」
何度も聞き飽きたくらいなその声に私の心臓は歓喜の鼓動を刻む。
「お前なんかにゆずを渡さないぞ!」
「コロネ!」
コロネは消火器を手に、来賓を白く染めながらわたしに近づいてくる。
わたしは嬉しかった。嬉しすぎて泣きじゃくってしまいそうだった。でも――
「どうして来たの?もう、あなたとわたしは終わってしまったの」
「離れてみて分かった。ワタシにはゆずしかいないと。ずっとずっと諦めようとした。でも、諦めきれなかった。ゆずをワタシのものにしたい!それだけがワタシの生きる理由だ!」
ゆずはどうなんだ、とコロネは聞いた。
「わたしだって、コロネとずっと一緒にいたい!好きでもない人と一緒になんてなりたくないもの。だけど、それはできない!」
来賓の人々はコロネを取り押さえようと迫っていた。
「一緒に来い!ゆず!」
コロネはわたしの手を無理矢理引っ張って、式場を出ようとする。人々を必死でかき分けながら。
「ありがとう。コロネ」
わたしの目からは温かい涙があふれた。
「しかし、7月になったのに今さらジューンブライドネタってどうなんだ?」
「さっきまでの茶番が台無しね」
「いやぁ、感動しただろ?300%くらいパクリだがな」
次回予告
しかし、未だにわたしのイラスト化がないってどうなんだ?可愛くなくてもいいから、せめてわたしだけでもイラスト化してくれ!
『次回、悠木碧が声を当ててくれるのなら考えてやらんこともないぜ』
絶対に無理でしょ。




