48__獅子王の葛藤
お久しぶりです。
きっと 前話など誰も憶えていらっしゃらないでしょう。
急にラノイに声を掛けられ狼狽えたシノンが 執務室を去った後のお話になります。
前話-同様、まだラブラブではない (たぶん) のに甘々な展開になっております。
では、どうぞ。
___視点:〔森の妖精〕- リーゼロッテ=サフィール___
不意の ラノイからの囁きに意識を飛ばし気味になっていたリーゼロッテは、はたと 自分の状況に気付いた。
優しく頭を撫でる 大きな手
髪の間を辷る様に櫛る 長い指
背へ しっかりと回された 腕
向かい合う様に密着した 軀
その綜てが伝える 体温
《 きゃああぁあ⁉︎ 》
一瞬で、リーゼロッテは硬直した。
赧くなっていた頬は 更に紅潮し、銀髪に隠れた耳まで真っ赤に染まっていた。
そもそも、彼女は初心で純情な魔法使いなのだ。
多少の事には慣れてきたが、意識の外だった間に抱き締められている事には まだ慣れていない。
旅行の間 何度もあったシチュエーションではあるが、毎回 硬直し 狼狽えているくらいだ。
今回も、いつの間にか抱き締められていたリーゼロッテは、盛大に動揺した。
「っ、ラノイ様………… 」
「まだ ふらついている。竚っているのは辣かろう」
リーゼロッテの言葉を遮る様にして ラノイが言ったのは、妃を労る 良き王の台詞である。
これを耳にしたリーゼロッテは、寸時に状況を把握した。
場所が 執務室であり、精査済みの書類を搬び出す為の官吏達がいるのだと。
背を向け ラノイの腕の中に填もれる様になっているとは云え、人前なのだと。
そして、この国の王であるラノイに溺愛されている妃として 役目を果たさなければならないのだと。
《 そうだったわ、王宮では こうなるのだった っ!》
人眼がある以上、拒めもしなければ 逃げられもしない。
その事を思い出し、リーゼロッテは 複雑な表情を泛かべた。
5日 王宮を離れていたとは云え、うっかり忘れた自分に対する情けなさが半分。
残りの半分は、この状況を ちゃっかり有効利用するラノイの機転に惘れていた所為だろう。
《 お役目ですね、判ります。 判っています、が………詬しいのですぅぅ。》
ラノイが聴けば『人がいるだけでしょ』とか『今更だよ』とでも言いそうだが、リーゼロッテにとっては 簡単な言葉で片付けられるものではない。
見られていると惟うだけで、羞恥で身悶えしそうなのだ。
尤も、ラノイの前で そんな事をすれば、あっと云う間に押し倒されかねないが。
《 ふらついてなど いませんし、充分 元気です! だから、どうか放してぇぇ!》
見上げる睛に そんな惟いを込めてみたが、ラノイの笑みが深まっただけだった。
どうやら 放すつもりはないらしい。
言外に示しても却下されるなら、言葉にするしかない。
そう惟ったリーゼロッテは、即 行動に移した。
「だ、だい……… 」
大丈夫だと言いかけたのだが、またしてもラノイに遮られた。
「無理をする必要などない」
「きゃ」
問答無用で 横抱きに擁え上げられたリーゼロッテは、殺し切れなかった悲鳴を 小さく零した。
当然、脳内では大絶叫である。
《 ッ〜〜〜〜 ゃああぁあっ。》
2人きりの場所でなら 多少の動揺はすれど、逃げたいとは惟わない。
そう、すっかり慣らされたリーゼロッテは ラノイの腕を警戒しなくなっていた。
しかし、今は『人前』である。
3人の官吏が 執務室の中にいる現在、この状態は羞恥に耐えかねる。
「ラノイ様っ」
大声で『放せ』とは言えず、囁き声で非難する。
流石に やり佚ぎだ、と続けるリーゼロッテに対し ラノイが見せたのは極上の笑顔だった。
その笑みが 何故か黒く見えて、彼女は言葉を途切れさせた。
「では、休憩にしよう」
ソファに座ったラノイは、そう言った。
その膝に リーゼロッテを座らせた状態で。
《 なっ⁉︎ 》
放してほしいと言っている傍から 膝抱きにされたのだ。
もう 言葉も出なかった。
暖炉の正面に据えられた 3人掛けのソファに座ったラノイは、蕩ける様な笑みを泛かべた。
膝の上にいる愛しい魔法使いが 自分の肩に顔を瘞める様にしているのだ。
それが、室内の官吏達に顔を見られたくなくて、已むに止まれずの行動であったとしても。
全身を駆け巡る嬉しさは 変わらない。
そう、冷徹な〔獅子王〕の仮面が剥がれ落ちるくらいには。
一方、リーゼロッテは堪ったものではない。
背を向けている時でさえ耐えかねていたと云うのに、不用意に顔を上げれば 官吏達と眼線が合いそうな場所に座らされたのだ。
逃げようにも、背と腰とに回されたラノイの腕は ビクともしない。
視線から隠れるには、ラノイの陰に入るしかなかったのである。
だが、この姿勢は これで、また詬しいものだ。
何せ、旁眼には 自分から抱き付いている状態なのだ。
《 もう いやぁあああっ。》
白い首筋までもが 羞恥に染まる。
だから、これに ラノイが蕩ける様な笑みを泛かべたのも、彼女は見ていなかった。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
___視点:〔獅子王〕- ラノイ=アシュリオン=ラッケンガルド___
僕は、抱き上げられて狼狽えるリリィを擁えたまま、ソファに座った。
普段 自分が座る 1人掛けのソファじゃなくて、3人掛けのソファのほうに。
いつものソファに座れば 真っ赤になってる可愛いリリィを 他の連中に見られなくて済むだろうけど、僕は そうしなかった。
だって、今は 僕のほうがヤバイ。
此処は執務室で、室内には官吏達がいるのに〔獅子王〕の顔をしてられないんだ。
〔獅子王〕らしく微笑む、なんて出来なかったんだ。
何日も王宮を離れてた所為で 気が綯んでるって事もあるだろうけど。
何撰り リリィが無事で帰って来て、リリィが僕の腕の中にいて、僕を悚がらなくて、僕の存在を感じて 赧くなってる。
こんなの嬉しくない筈がないよね。
そんな訳で、顔が勝手に にやけちゃって どうにもならなかったんだ。
だから、仕方なく、官吏達に背を向ける位置に座ったんだけど。
まさか、抱き付いてくれるとは惟わなかった。
意表を突かれたけど、これは嬉しい誤算だ。
泣いてる時-以外で こんなに密着してくれた事なんてない。
譬え、官吏達から隠れたかったんだとしても 嬉しいったら嬉しい。
膝の上にいる愛しい魔法使いが 自分の肩に顔を瘞める様にしてるなんて、夢みたいだ。
それが、室内の官吏達に顔を見られたくなくて、已むに止まれずの行動だったとしても。
全身を駆け巡る嬉しさは 変わらない。
そう、冷徹な〔獅子王〕の仮面が完全に剥がれ落ちるくらいには。
《 リリィは 堪ったモノじゃないんだろうけど。》
背を向けてる時でさえ 向けられた視線に耐えかねてたのに、顔を上げれば 官吏達と眼線が合いそうな場所に座らされたんだもんね。
逃げようにも 僕の腕は ビクともしないし、視線から隠れるには 僕の陰に入るしかなかった訳だし。
でも、この姿勢は これで、また詬しいんだろうな。
何せ、旁眼には 自分から抱き付いてる状態だもんね。
リリィは、腕の中で小さく震えてる。
ちらりと見える白い首筋までもが、羞恥に染まってた。
リリィって肌が白いから、赧くなると すぐに判る。
《 綺麗。》
この色って、男にとって 何か特別なのかなぁ。
僕は、赤は好きな色じゃないけど リリィの肌が赧く染まってるのは 綺麗だと惟うし、幾らでも見ていられる。
《 ちょっと リリィ、あんまり可愛いと 襲っちゃうよ?》
判ってる、この状態は 僕の所為なんだって。
リリィには、僕に抱き付く以外の選択肢はなかったんだって。
でも、こんな諷に真っ赤になって 僕の肩に擦り付くみたいにされると、こう…………いろいろと疼いちゃうんだけど。
《 あぁ、駄目だぁ。付け入りたいぃぃ。付け込みたいぃぃィ。》
扇情的な色に染まったリリィが 僕の膝の上にいて、僕の肩に抱き付くみたいになってて、僕の腕の中で プルプル震えてる。
こんなの前にして『待て』とか、もう拷問でしかない。
駄目だ。
このままだと悪戯したくなる。
駄目だ、駄目だ。
今そんな事したら 間違いなく逃げられちゃう。
駄目だ、駄目だ、駄目だ。
こう云う事は 完璧に囲い込んでからじゃないと。
リリィは魔法使いなんだから、国外に逃亡するのだって簡単なんだから。
何度も自分に言い聆かせて 湧き上がる欲望を制えようとするけど、その度に『ちょっとくらい』なんて頭の隅に泛かぶ。
《 それも これも、リリィが可愛いからいけないんだ。》
あぁ、本当に もう、可愛いなぁ。
僕は、今すぐ ぎゅーって抱き締めて押し倒したい欲望を懸命に制えながら、リリィに声を掛けた。
「どうした?」
至近距離から 赧くなった項を瞰したまま、僕は 空々しく そう問い掛けた。
勿論、髪を梳くフリして、撰り一層 首筋が見える様に髪を掻き頒けて。
扇情的な色に染め上げられた肌を、じ〜っっくり眺めてる。
たぶん、シズが言う攸の『色気ダダ漏れの表情』とやらになってると惟う。
凄く『善からぬ事』を考えてるんだけど、祥いなるかな、リリィは気付いてないから大丈夫。
顔も、リリィは見てないし 問題ない。
声のほうは、どうにもならないから もういいって事で。
「詬しがる事はなかろう?」
僕の問いに、リリィは プルプル首を振った。
勿論、僕の肩に額を押し付けたままで。
《 何この可愛い生き物!》
ちょっと閨に連れ込んでいいかなっ。
いや駄目だ、寝室に往くまでに擦れ違った連中に こんな可愛いリリィを見せたくない!
この奥の仮眠室を使うか、それとも 人払いして、いっそ此処で…………。
–––––––っ いやいや駄目だ落ち着け僕。
冷静になれリリィを泣かせて傷付けるだけだ!
気をしっかり持てリリィが可愛いのは今更じゃないか!
可愛いリリィの可愛い部分が見れたからってあれこれしていい訳じゃないんだ!
《 気を抜くな! 今しっかりしないと 失う事になる‼︎ 》
自己催眠みたいに 頭の中で繰り返す一方で、僕は 何気なく呟いた。
「我が妃は、本当に詬しがり屋だな」
当然、こんな科白を こんな平坦な声で言える程、今の僕は冷静じゃない。
頭の中は 欲望と理性が大戦争中だ。 寧ろ、理性が欲望に圧されっぱなしだ。
でも、それを悟らせないくらいの演技は出来る。
まぁ、その程度には冷静になれたって事かな。
勿論、ちょっとでも気を抜いたら あっと云う間に惑乱されちゃうんだろうけど。
「顔を見せてはくれぬのか?」
絶対 上げられないって判ってるから言える事だ。
第一、今 リリィの顔を見たらヤバイのは僕のほうだしね。
真っ赤になって潤んだ瞳で見詰められたりしたら、絶対 理性が敗ける。
「アシュリー?」
声を掛けるけど、返事がない。
あれ? 声が出ないくらい?
拙い、ひょっとして 苛めすぎちゃった?
心配になって顔を覗き込もうとしたら、首を竦めて 顔を乖向けられた。
《 うわ、ちょっと! リリィってばっ。》
だって、今、リリィは僕の肩に おでこを当ててるんだよ。
その状態で 僕から顔を乖向けるって、まるで ギュってしがみ付いて擦り寄られたみたいな感覚なんだよ。
違うって判ってるけど、ちゃんと判ってるんだけどね。
何この可愛い生き物っ!
こんなの前にして摘み喰いすら出来ないなんて
酷い苛めだよこれもう拷問でしかないよ!
ああだけどこれって将来的に使える策じゃん。
今後こんな場面に追い込んだら付け込み放題じゃん!
もう何でもしたい放題って事じゃん!
落ち着かなきゃいけない時に、僕の頭は そんな事を考えてた。
勿論、他の いろんな事とかも駆け巡ってた。
人に教えられる様な内容じゃない いろんな事、とだけ云っておく。
今 僕の頭の中を覗ける人がいたら、嘸かし吃驚するだろうなぁ。
脳内と外面とで こんなに違う奴も珍しいんじゃないかと、自分でも惟うくらいだし。
まぁ、頭の中が覗ける人なんかいないし 大丈夫。
要は バレなきゃいいんだ、バレなきゃ。
《 だけど、そろそろ 拙いなぁ。》
しがみ付いててくれるのは 凄く嬉しいけど、理性がヤバイ。
このままだと 本当に悪いコトしちゃいそうなんだよ。
真っ赤になった首筋を、指とか………とかで ゆっくり擬ってみたり、なんて考え始めてるんだよ。
驚いて 惶てて 余計に赧くなったリリィを押さえ付けて、あんなコトしたり こんなコトしてみたり…………なんて考え始めてるんだよ。
ちょっとでも気を抜いたら、そう云うコトを 即-実行しちゃいそうになってるんだよ。
すっごく危ない状態なんだよ、自分で言うのも何なんだけど。
自分が危険物だって理解してるのに、リリィの首筋から睛が離せないでいるんだよ。
《 ひっじょーに 拙い。》
僕は、熔けそうになってる理性を叱咤して 危険回避に必要な作業に入る。
「ふむ、他の者達がいる所為か?」
少し笑みを含んだ声でリリィに問い掛けながら、艶やかな髪を撫でた。
それとなく、細い首筋を隠す様に 手で髪を整える。
今の僕には、睛の毒だからね。
それから、リリィに声を掛けてみた。
「アシュリー?」
これ以上 くっ付かれてると、僕 何するか判らないよ?
早く離れないと、何かしちゃうかもしれないよ?
そう云う惟いで声を掛けたんだけど、リリィは 離れてくれる攸か 顔も上げられないみたいだった。
嬉しいけど困るんだってば、可愛すぎて。
本格的にヤバイ、離れてくれないと いろいろヤバイ。
「では、仕方がないな」
官吏達がいたら、ずっと このままだ。
本当に、本当に名残り惜しいけど、これも、僕と 僕の将来の為だ。
我慢しよう。
「 ––––––––––––下がれ」
後方にいる官吏達へ向けて、硬い声で命令する。
にやけるのを怺えようとしたら いつもより不機嫌な声になったけど、まぁ いいか。
書類を整理してた官吏達が 一斉に息を飲んだ音がしたけど、まぁ いいや。
どうやら 趾を縺れさせながら退室したみたいだけど、まぁ いいね。
これで、漸く リリィと2人きり…………あぁ いやいや、これで やっと落ち着ける。
2人きりになるけど、このままでいるよりは我慢出来る気がする。
隣に座るくらいの距離なら、もう少し 理性も働くと惟うしね。
「 –––––––––––––––これなら、いい?」
声を掛けながら、僕は リリィの背へ回した腕を緩めた。
名残り惜しいけど、このまま擦り付いてられたら 僕がヤバイ。
でも、完全に放すのは出来なかった。
だって、全力で遠退かれたら 流石にショックじゃない?
「っ ら、らのい さま」
腕を緩めたのに、リリィは ほんの僅かに離れただけだった。
僕の肩から 顔を上げただけ。
だから、まだ膝の上。
つまり、20センチくらいしか離れてない。
これって、リリィとしては この距離でいいって事なの? 構わないの?
僕の膝の上でも、僕の腕の中でも、誰にも見られてなきゃいいって事なの?
そう云う解釈でいいの?
《 自惚れちゃうよ? いいの? どうなっても知らないよ?》
勿論、厭がる事はしたくないけど。
でも、こんなの 嬉しくない訳ないよ。
軀中に じわじわ喜びが拡がってく。
旅行の前は考えられない反応だよ、凄く嬉しい。
《 何これ、何のご褒美? それとも拷問?》
どっちでもいいや、兎に角 嬉しい!
離れなきゃ いろいろヤバイのに、離せなくなっちゃうじゃん。
うん、もういいか、離さなくても。
今日は このまま膝の上にいてもらおう、そうしよう。
仕事も ちゃんとやったし、そのご褒美って事で。
勝手にこじ付けて 勝手に決めた僕は、改めて リリィを見た。
僕の大事な魔法使いは、少し怒った様に 僕を見てる。
悚い攸か 罪悪感の欠片も湧かない。
リリィってば 顔 真っ赤なままなんだもん、こんなの可愛いだけだよね。
「ほっぺ、冷やす?」
そっと手を伸ばして、手の甲で リリィの頬に触る。
リリィは 僕の手を拒まない代わりに、謫めるみたいに睨んできた。
『 誰の所為です⁈ 誰の!』
そんな声が聴こえる様な睛だったけど、逆効果だよ。
真っ赤な顔して 睛を潤ませて 上目遣いで、なんて 他の男にしちゃ駄目だよ?
絶対 駄目だからね?
たぶん怒った顔してるつもりなんだろうけど 啻々 可愛いだけだからね?
《 ヤバイって。 可愛すぎだよ、リリィ。》
お願いだから煽らないでよ、リリィ。
我慢するの、結構 大変なんだよ?
僕じゃなかったら 疾うに押し倒されてるからね?
全く、僕の奥さん (もう確定でいいよね) は 無防備で困るなぁ。
一度 気を赦しちゃうと こんなに警戒しなくなるなんて、凄く心配だ。
《 他に近寄る奴がいない様に しっかり牽制しとかなきゃ。》
そんな事を考えてると、リリィが口を敞いた。
「ラノイ様、意地悪は お罷めください」
「酷いな、本当に心配してるんだよ?」
うん、凄く心配してるよ。
たぶん リリィが想像してる事じゃないほうの いろいろを。
どんな内容かは教えられないけどね。
「それに、これが僕の奥さんの役目でしょ?」
尤もらしく、そんな事を言ってみる。
縁談除けとして雇われた妃は、国王に寵愛されてるアピールの為にいる。
だから、人眼がある時は 僕とイチャイチャするのが役目だ。
そう言ったら、リリィが むくれた。
どうしよう、可愛い。
「でしたら、誰もいないのですから、今は この様な事………… 」
辿々しく、リリィが苦言を呈してる。
言いたい事は判る。
今も、リリィの腰には 僕の腕が回ってる。
だって、可愛すぎて離せなくなっちゃったから。 もう離さない事にしちゃったから。
でも、そんな事ストレートに言えない。
リリィが知ったら逃げられかねないしね。
だから、僕は 最適 (?) な理由をこじ付ける。
「いいでしょ? リリィが無事で嬉しいんだから」
最初は 本当に安心して抱きしめたんだった。
だから、尠くとも嘘じゃない。
全体の利率で云ったら ほんの一部だけど、嘘じゃない。
「大袈裟です。ほんの少し〔荒れ地〕を通るくらい大丈夫だと、何度も……… 」
「だけど。危険がない訳じゃないんだし」
「大袈裟です。ラッケンガルドの結界から エスファニアの結界までは、ほんの数分で………… 」
「それでも、凄く不安だったんだよ?」
これも 本当、リリィが帰って来るまで気を揉んでたのも 本当。
格下の魔人達-相手に リリィが敗けるなんてないだろうけど、不安だったのも心配だったのも本当の事だ。
啻、今 抱き締めてる理由は これじゃないってだけで。
「心配してたんだよ?」
僕は、拗ねてるみたいな顔を作って リリィの睛を覗き込む。
「っ–––––––––––– 」
案の定、リリィは ちょっと動揺して黙った。
やっぱり 仔猫なほうには懦いんだね。
《 弱み見せられちゃうと、付け入りたくなっちゃうんだけど。》
奸な惟いを理性で捩じ伏せて。
僕は、膝の上の魔法使いを そっと抱き寄せた。
そのまま 顔を寄せる。
「お帰り、リリィ」
おでこを併せて、にっこり笑ってみた。
抱き寄せた軀が ピクンって震えたけど、それだけだった。
逃げ出したりしない代わりに、間近な僕に ドギマギしてるのか、完全に 視線が游いでる。
「っ〜〜〜〜 は、はぃ」
それでも、こうして返事もしてくれる。
だいぶ緊張させちゃってるみたいだけど、僕が嬉しいから いいって事で。
すっかり伏せられた瞼を見詰めながら、北叟笑む。
《 ちゃんと逃げ道 塞いだら…………しよう。》
今 しちゃおうかとか こっそり葛藤してた事は、終生 内緒にしとこう。
こんなに長くなる予定ではなかったのですが、まさかの『続く』です。
ラノイの暴走が大変で、抑えるのに一苦労しております。
何でクランツがいないんだ!
お目付役がいないとラノイがエロ王一直線だよ!
なのに、クランツの登場はありません。彼、過労で昏睡中ですから。
ラノイが『自分へのご褒美』とか称してご無体にはしらない様、何とかするしかありません。
全く 制御出来る気がしませんが。
次話も ラノイとリーゼロッテだけになりそうです。
そして、この予定は ほぼ決定です。
…………前途多難ダ。




