教えて
零時。
先生の配信を開いた。
先生の声が聞こえた.
少し息ができた。
そんな気がした。
しばらく、ただ聞いていた。
コメントが流れる。
先生が笑う。
誰かに答える。
別の誰かにも答える。
画面を見ていた。
先生。
教えて。
そう思った。
でも、コメント欄には触れない。
ここでは何も言わない。
先生は、見ていることを知らない。
それでいい。
その夜は、最後まで聞いただけだった。
数日後。
配信ではない場所で、先生と会った。
先生は、ここにいる人間を知っている。
「先生」
「ん?」
「教えてください」
先生が笑った。
「何を」
あの日あったことを全部は話さなかった。
仕事の席で、何も話せなかったこと。
知らないことが多すぎたこと。
仕事以外では、急に薄くなったように感じたこと。
先生は少し黙った。
「別に全部知っとく必要ないやろ」
「でも」
「ん?」
「また会いたいって思われなかった気がするんです」
先生が笑った。
「そこ気にするん?」
「気になります」
「仕事できたんやろ?」
「それだけでした」
少し間があった。
「じゃあ、興味あるもん増やしたらええやん」
簡単に言った。
「どうやって」
「見たり、読んだり、人に聞いたり」
「何から?」
「知らんがな」
先生が笑った。
笑った。
久しぶりに、本当に笑った気がした。
先生はいくつか、入口だけを教えた。
本。
場所。
人。
考え方。
「分からんもんを、分からんままにせんかったらええんちゃう」
全部覚えた。
先生と別れた。
帰る途中にはもう、調べ始めていた。




