破断
機会は突然来た。
男の知り合いが何人か集まるらしい。
聞いた名前の中に、ずっと会いたかった人間がいた。
一人ではない。
何人も。
男が言った。
「よろしければ、一緒に行きますか?」
欲しい。
そう思った。
それなのに。
男の顔を見た。
今までのことを思い出した。
助けてもらった。
人を紹介してもらった。
知らないところでも、
名前を出してくれていた。
その人間の向こうだけを見ていることが、急に嫌になった。
「今回はご遠慮させていただきます」
男が目を瞬いた。
「よろしいんですか?」
「はい。仕事がありますので」
嘘だった、調整できた。
男は少しこちらを見た。
でも、
「そうですか」
と言っただけだった。
三週間後。
その場へ行った別の人から、
話を聞いた。
○○社の人もいた。
あの人も。
この人も。
話が進んだ。
新しい企画も始まりそうらしい。
笑った。
「そうなんですね」
帰宅した、机に座った。
何もできなかった、、、自分で断った。
男は悪くない、差し出してくれた。
取らなかった。
なぜ。
男を利用しているような気がしたから。
顔を覆った。
馬鹿だ。
男が欲しかったのではない。
その先が欲しかった。
ずっとそうだった。
そう決めていた。
なのに。
男を人として見た。
感謝した。
悪いと思った。
それで、取れなかった。
午前零時十一分。
資料を開く。
閉じる。
男とのメッセージを開く。
――また機会があれば。
優しい。
画面を伏せる。
午前零時十三分。
そう思った。
感情は、、、、糸を弱くする。




