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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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8グエンとクレアに会う


 馬車が速度を落としとうとう止まった。

 外は何だかざわついていた。

 アリシアは少し前から馬車の窓から外の様子を見ていた。

 道の両脇に人がちらほら立っているのが見えた。一人が「来たぞ!」と声を張り上げて道を走って行った。

 その先に大きな家が見えた。

 そして馬車が止まった。 

 「アリシア、着いたぞ」

 「ひゃい」

 おかしな声が飛び出て返事がまともに出来なかった。

 扉が開く。 

 「緊張してるのか。何も心配ないって、さあ」

 父の声に勇気づけられて馬車を降りた。


 目の前に白髪の男の人と少し皺のある女の人が立っていた。身なりは質素だが清潔できちんとした服で髪もきちんと撫で付けて整えられている。

 女の人は母の髪色と目の色が同じ茶色い髪に黒い瞳だ。男の人は茶色い髪に濃茶色の目をしている。どちらも平民には多い色だ。

 「アリシアか?」

 緊張しているのか声がほんの少し強張っている。

 「はい、アリシアです。あの、グエンさんでしょうか?私のお祖父様だと伺いましたが」

 恐る恐るそう言う。

 「ああ、キエナは一人娘だった。お前が生まれたと聞いてもの凄く嬉しかったが、会いに行けてなくてすまなかった。その後もお前は聖教会に預けられてそれで会う事もままならなくなった。悪かったアリシア、お前に会ってなくて、それなのに今更と思うだろう?でも、お前が王都を追放されてここに来ると聞いて力になりたいと思った。だから俺たちを頼って欲しい」

 「アリシア、私はクレア。キエナの母親だよ。ずっとお前に会いたかった。でも、なかなか王都までは行けなくて‥すまない。本当に」

 「いいえ、とんでもありません。私に家族がいたなんて知らなくて。だから私うれしくって、こんな事になって一人でどうしようってすごく恐かったんです。でも、父が来てくれて、お祖父様やお祖母様がいると聞かされてどんなにうれしかったか」

 「じゃ、許してくれるのか?俺らと家族になってくれるのか?」

 グエンさんとクレアさんの顔がくしゃくしゃになる。

 「もちろんと言いたいのですが、何しろまだ慣れていなくて‥申し訳ありません。ですがお祖父様、お祖母様どうぞよろしくお願いします」

 「ああ、こっちこそ。それでだ。そのお祖父様って言うのはやめて欲しい。爺さんとかグエンでもいい。なあ、クレア」

 「ああ、アリシアはずっと貴族として生きて来たんだろうが、ここじゃそんな堅苦しい言葉じゃねぇ。私の事はクレアと呼んでおくれ」

 「はい、グエンさん。クレアさん。これでいいいでしょうか?」

 「って。ああ、まあ最初はそれくらいで。さあ、腹が減っただろう。今日は孫娘と家族になった祝いだ。みんな好きなだけ飲んで食べてくれ!」

 グエンさんがそう言うと周りにいた人達が一斉に集まって来た。数にして20人ほど。


 「アリシアさん、俺はエドガーって言うんだ。こっちはオリルとコルノだ。みんなギルドで働いているんだ。あんたもギルドで働くって聞いた。これからよろしくな」

 「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 エドガーと名乗った男は中年であとの二人は20代、茶色い髪に茶色の瞳。親しみやすそうな優しい顔立ちをしていた。


 アリシアは大きなテーブルの真ん中に座らされグエンとクレアが両隣に座った。その隣には父のノートンが座り、後はギルドで働く人や街の商店の人たちらしい。

 夕食は豪華でチキンの丸焼きがテーブルの真ん中に置かれ、他にも鴨肉や羊肉などが並んでいた。果物もたくさん盛り付けられ野菜やスープ、お酒や葡萄ジュースなどが振る舞われた。

 アリシアは緊張しながらもたくさんの人に囲まれて楽しい時間を過ごした。


 食事が終わるとクレアが部屋に案内してくれた。

 「アリシア、あんたの部屋は二階だよ。適当に寝巻きタオルなんかも用意したけど明日にでも必要なものを買いに行くつもりだからね。心配ないよ」

 クレアさんが部屋に案内がてら話をしてくれた。

 「あの、私お金出しますので」

 「何言ってるんだい。そんな事してみろ。あたしゃグエンに蹴っ飛ばされるよ。アリシアは何も心配しなくていいんだ。食事も必要な物も全部こっちで用意するから、安心してゆっくりすりゃいいさ」

 「ありがとうクレアさん」

 「さあ、ここがアリシアの部屋だ。グエンが張り切ってベッドを注文してね。そこの小さなテーブルと一人掛けのソファーはアリシアの母さんが使ってたんだ。キエナの部屋から運んだんだ。新しいのが良けりゃ買うから言っとくれ」

 「お母さんの?いえ、すごく嬉しい。大切に使います」

 「そうかい。喜んでもらえてたら良かった。シーツなんかは全部新しいから安心おし、さあ、疲れただろう。後でお茶でも持って来るからゆっくりしてな」

 クレアの言葉遣いは褒められたものではなかった。でも、アリシアの心はすごく落ち着いた。ずっと幼い頃、微かな記憶の片隅に眠っていた事が蘇るようで何だか懐かしい気がした。

 クレアがいなくなるとアリシアはベッドに飛び込んだ。一度やって見たかった事だった。

 そこでアリシアは思いついた。 

 そうだ。私、これから今までやりたかった事をやって見よう。


 アリシアはノートを取り出すと思いつくまま書いて行った。

 まずは、掃除洗濯を一人で出来るようになる事。料理もして見たい。幸い前世の記憶がある。掃除、洗濯、料理は何とかなりそうだ。次に花や野菜作り。苗を植えて育てた野菜は美味しいに違いない。そうだ。病気や怪我人の治療もしたい。王都でも貴族の治癒ばかりで本当に困っている人を助けたい。

 アリシアはワクワクしながらやりたい事を書いて行った。そのうちいつしか眠っていた。











 

 




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