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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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41アリシアと再会


 王宮はすっかり焼け落ち国王を始めエリオット殿下や騎士、魔術騎士達は跡形がなかった。王宮のあった場所も王都の貴族街も殆ど固まった溶岩で覆われていた。

 だが、平民が住む地域の被害は少なく平民の被害はほとんどなかった。

 北辺境領に向かう地域も深刻な被害が出たが、領民の被害はほとんどなかった。

 樹海は溶岩流で押し潰され魔物は全滅した。国中にあった竜毒もすっかり消えてこの先竜毒の心配もほとんどなさそうだった。

 どうやら竜人の竜力は憎しみや怒りで発すると毒を発生させ、愛や優しさで竜力を使うと浄化の力があるらしい。



 オディアスは溶岩が樹海まで到達すると判断した時に火山の噴火口を大きな岩で塞ぎマグマの流出を止めた。

 この後三日三晩雨が降ると予測した。樹海に流れた溶岩はこの雨で完全に固まると判断するとアリシアの元に急いだ。


 「ノートン!アリシアは気が付いたか?」

 人間の姿に戻りウエンドの郊外のコテージに入る。

 「ああ、すっかり元気になった」

 「アリシア、無事で良かった」

 アリシアはもうすっかり良くなっていたが父に言われてベッドにいたくらいで顔色は良かった。

 「オディアス様、どこに行ってたんです?心配してんですよ。身体はもう大丈夫なんですか?」

 アリシアの記憶はオディアスが魔道具で竜力を奪われて苦しんでいた時で途切れていた。

 「ああ、アリシアが私を庇ってくれたから魔道具が爆発して私は助かった。でもその爆発で君は意識を失ったんだ。私は王宮にいるのが危険だと判断してお父さんの所に転移で連れて来た。無事で良かった」

 オディアスの瞳は蕩けるかと思うほど下がり目尻に皺がよる。

 「あなたが無事で良かった。あっ、それで国王はなんて?あなたにふざけた事を言ったましたよね?あなたが怒るのは当然です。でも、殺したりしてないですよね?」

 オディアスは思わず口篭った。


 「アリシア、実は火山が噴火を起こしたんだ。こっちは安全だったが王都側に溶岩が流れたんだ」

 ノートンが小さな声で言った。

 「火山が噴火?どう言う事です。オディアス様!」

 アリシアが跳ね起きた。

 大きな体躯のオディアスがしゅんと身体を下ろすとアリシアの寝ていたベッドに跪きアリシアの赦しをこう様な目をした。

 「魔道具が爆発した後、私は、私はすぐに起き上がれなかった。そのせいでアリシアを人質に取られた。あのバカ王子はアリシアの首にナイフを突きつけて‥それで私は理性を失った。竜化してアリシアを助けるとここに連れて来てまずは君の安全を優先した。それから‥」

 「それから?」

 アリシアの釣り上がった目はオディアスの話を聞くうちに眦が下がり差し伸ばそうとして引き戻されたオディアスの手を掴んでいた。

 「それで‥すまないアリシア。これでも最大限の理性を働かせたんだ。人は傷つけていない。傷つけたのはあいつらだけだ!」

 「あいつらって?」

 アリシアは必死で怒りを抑えて優しく尋ねた。

 「国王やエリオット、騎士も多分。だが、それだけだ!あの王宮に溶岩を流れ込ませた。今はあの王宮は溶岩の塊になっている」

 「はぁ、でも、あなたの気持ちはよく分かる。私も手を叩いて喜びたい気持ちだけど人が死んで喜ぶのはちょっと」

 「すまない。あいつらは君を利用しようとした。だから」

 「ええ、気持ちはわかるわ。他にも何かあるの?」

 ちらっとまるで子犬が悪さした時白眼を見せる様なそんな仕草でアリシアを見た。

 「私、怒ったりしない。だから話して」

 「それから、溶岩を北辺境にまで流した。樹海に溶岩を流し込んで魔物は全て倒した。竜毒の発生も抑えられると思う」

 アリシアの口元がパッと開く。

 「オディアス様、それって本当?樹海の魔物を?竜毒まで」

 「ああ、だからもうこの国は安全だ」

 「もう、オディアス様ったらなんて良い人なの。あなたってやっぱりすごいわ!」

 「そうか?ふっと思いついたんだ。溶岩で樹海を覆えば魔物がいなくなるんじゃないかって。うまく行った」

 「ええ、もう、あなたって天才!」

 「いや、そんな事は‥」

 「それで?オディアス様はどうするつもり?」

 「どうするって?」

 「もう、やだ。あなたの国に帰るの?」

 「えっ?あっ、それはまだ考えていないって言うか。まあ、とにかく今は君の体調が一番だから」

 「ありがとう。でも、ほら、かなり良くなっているから心配ないわ」

 


 ノートンはアリシアの体力が回復したら一度北辺境に帰ろうと言い出した。

 グエンやクレアも心配しているだろう。 

 国王とエリオット殿下は騎士に助け出されて無事だった。だが、今回の事件を引き起こす原因を作ったとして国王は退位する事になった。エリオット殿下は王太子の権限も無くなっていたが今回の事で王族の身分を剥奪された。

 この事は大々的に発表され次期国王は国王の弟アーノルドが即位する事となった。

 新たな国王は竜王オディアスの封印が解かれた事を公にして、今回の噴火で溶岩被害を最小限に抑えてくれた事や樹海の魔物の全滅に多大な貢献をしてくれた事を国民に公表した。

 まさかオディアスが噴火を起こせるとは誰も思ってもいないらしい。

 新国王はアクルート国は長い間のグリアダ王国との関係に終止符を打ち和平の道を歩みたいとも発表した。

 それによってオディアスとアリシアの元に国王から謁見を申し入れられた。

 


 グエンに帰る知らせを出して馬車で出発したのは三日後だった。どうせ帰るには王都経由するので先に国王を会うことになった。

 「せっかく、米料理を作ろうと張り切ってたのに」

 「アリシア、それは北辺境に帰っても出来るだろう。先にグエン達に顔を見せてやれよ」

 「そうね。でも、まず国王と会わなきゃならないのがねぇ。そう言えばオディアス様はどうするか決めたの?」

 「今更、グリアダに帰ったところで国には竜王もいるし私に出来る事はないだろう」

 「じゃ、グリアダに帰るつもりはないって事?」

 アリシアはうれしかった。

 「まあ、今考えているのはアクルート国とグリアダ王国の橋渡しでも出来たらと思っている。アリシアは?」

 「そうね、私は北辺境でギルドの手伝いでもしようかと」

 「もし、国王から聖女として働いてくれって言われたら?」

 「でも、竜毒の心配もほとんどなくなったんでしょう?だったらそこまで出来る事もないと思うし。出来たら小さなレストランでも開けたらいいかな」

 「それは良い。私は毎日料理を食べに行くぞ」

 「いや、オディアス様はもっと偉い仕事をして忙しくなると思いますよ。とても北辺境に毎日は来れませんよ」

 アリシアはなんとなくオディアスの距離を置くようになった。それは彼との別れが近づいていると思ったからアリシアはオディアスを失うのか恐かった。

 オディアスの機嫌が一気に悪くなる。

 「アリシアどうしてそんな事がわかる?私は‥」


 馬車の窓から王都が見えて来た。

 つい先ほどまでは溶岩の流れた景色は見えていなかった。今は目の当たりに溶岩が固まった様子が目の前に広がっている。おまけに馬車は高い位置にいて溶岩で固まった王宮や街の様子が一望出来た。

 「何これ‥‥」

 「うわぁ、こいつはすげぇ。こりゃ復旧にはかなりの時間と手間が掛かりそうだな」

 「ああ、溶岩の後には建物も建てられないし、植物の育たないからな。溶岩のない場所に新たな王宮を作るしかないだろう」

 「オディアス様、溶岩って樹海まで続いてるんですよね?こんな無惨な姿がここから樹海までずっと何ですよね?」

 「すまない。火山は私が怒りに任せて噴火させた。アリシアを酷い目に合わされて理性がぶっ飛んだ。でも途中からせっかくの溶岩流をうまく利用出来ればと樹海まで」

 「まあ、よく見れば王都も被害が酷いのは王宮と貴族街ですし、死んだ人もいなかったんですし、まあ、国王と殿下の処分は仕方がない事ですし」

 「アリシアがそう言ってくれると」

 さすがのオディアスも国を溶岩流で埋めた事はすごく反省している様だ。

 王都に入ると街はすでに活気があった。物資の供給は再開しており平民街はほとんど暮らしには困っておらずパン屋も食堂も宿のいつも通りやっていた。

 困っているのは貴族で竜毒の心配が無くなって王都に戻っても屋敷は溶岩の下に埋まっていて宿はどこも満員状態だった。


 王都の王宮がなくなり今は王立図書館の一部を国の政務機関として使っている。

 オディアスとアリシアは宿は取らず謁見が終わったらすぐに北辺境に出発するつもりだ。

 アリシアは常に明るく振る舞った。でも心の中は不安でたまらなかった。

 オディアスはこの国にいるつもりはないのかも知れない。グリアダ王国に帰ればもう二度と会えないかも知れない。そんな事を考えると胸が痛くなって苦しかった。










 
















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