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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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37サウスウエイド公爵の企み


 セバスチャンはサウスウエイド家の次男だった。母親はセバスチャンが3歳の時に亡くなった。2つ上の兄のクリスチャンは優秀で父はいつも兄ばかりを可愛がった。

 確かに兄に比べてセバスチャンは成績も悪かったし不器用で要領も悪かった。

 兄は弟にセバスチャンを蔑み汚い言葉で罵ったり時には暴力を振るうようになった。 

 それでもセバスチャンは兄のようになりたいとじっと耐えた。

 だが、セバスチャンがずっと好きだった分家のミリアが兄の婚約者になった時に今まで耐えていた我慢に限界が来た。

 セバスチャンは辛くて王都の騎士団に入った。

 そこで見たのがアリシアだった。彼女は王太子エリオット殿下の婚約者だったがその扱いは酷いものだった。

 それにアリシアは元平民の出身でロックフール公爵家の養女にはなってはいるが肩身の狭い思いをしている事も耳に入った。

 いつしかセバスチャンはそんなアリシアを自分の境遇と重ねていた。

 アリシアなら自分の苦しみを分かってくれる。俺だったらアリシアを苦しめたりしないのに、そんな心の葛藤があった。でも、彼女は王太子の婚約者で自分には到底手に入る人ではなかった。

 そんな時、兄とミリアの乗った馬車が事故に遭って二人が亡くなった。

 セバスチャンは騎士団から呼び戻され後継者になった。厳しい後継者教育にも耐えていたが、その間に父が病で倒れ若くして公爵位を継ぎサウスウエイド公爵になった。

 

 そして聞いた王太子がアリシアを偽物だとして王都を追放したと、セバスチャンはすぐに王都の情報を集めた。アリシアが北辺境に行った事や、新しい王太子の婚約者が竜力が乏しく結界を維持出来なくなっている事、王太子が責任を取らされて王太子の座を追われた事、そしてエリオット殿下が王都騎士団を率いてアリシアを連れ戻そうとしている事を。

 知れば知るほど怒りに震えた。

 そしてアリシアはなぜか亡くなった聖女の元を訪れているらしい情報も掴んだ。

 そして今日遂にこにサウスウエイドに来た事も知った。

 このチャンスを待っていたと言わんばかりにセバスチャンはアリシアにこの地に留まって貰って自分を売り込む気だった。

 だが、見れば連れには父親と弟が一緒ですぐにでも次の聖女の地、ウエンドに向かうつもりらしいとわかる。

 何とか引き止めたいが今はそんな余裕もない。焦ったセバスチャンが思いついたのは先に事実を作ってしまえばいいと言う事だった。

 アリシアは絶対に純潔だ。聖女は必ず純潔でなければならないからだ。結婚すれば別だが、結婚までは誰とも関係を持っていないはずだ。だから俺が彼女の純潔を奪えばいい。そうすればアリシアは俺と結婚する事になる。おまけにアリシアはもう聖女ではない。


 セバスチャンは温室の隣にある離れにアリシアを抱き抱えて連れて来た。

 離れには使っていない部屋がありベッドのある。ここでアリシアの純潔を奪えば全てうまく行く。

 ワインに仕込んだ睡眠薬でアリシアは眠っている。今のうちに彼女を‥

 セバスチャンはゆっくりとアリシアのドレスに手を掛けた。




 その頃オディアスはクソみたいな気分で風呂に入っていた。

 確かに部屋は豪華だし風呂だって足を伸ばしてゆっくり入れる大きさがある。タオルも上質で出された衣類も良いものだった。だが、どうしてもあのセバスチャンという奴が気に入らなかった。

 あのアリシアを見る目。何だか舐め回すようなねっとりした視線。優しさを装っているが腹の底には薄汚い算段があるような。

 『あいつ、気に入らない!いや、人間など私の相手になる存在でもない。取るに足らない存在だ。気にする必要もない。はず。なのに。どうにも気になって仕方がない。アリシア、あいつ今頃あの男とワインでも飲んでいるのか。ふん、アリシアがどうしようと関係ない事だ!』


 風呂に浸かりながらふと開けた窓から入って来たアリシアの香り、それに話し声まで聞こえて来た。

 何だか仲良くやっている。クッソ!突然アリシアの苦しげな声がした。胸がビクッと震える。

 『‥‥でも、何でこんなに眠、いん、だ、ろ‥‥』

 うん?アリシア?何があった?

 おい、なんで何も言わない?さっきまで感じていたアリシアの動きが感じれなくなった。

 一瞬、脳内が真っ白になる。あいつ何をした?!

 『アリシア?おい、どこだ?返事しろ!おい、どこだ!お前、いい加減にしろよ!』

 脳内でアリシアに呼びかける。アリシアには私のこの声が聞こえるはずだ。どうしてこたえない?


 するとあの胡散臭い野郎の声が聞こえて来た。

 アリシアの純潔を奪うだと?

 あの野郎!!!

 オディアスは一気にアリシアの元に瞬間移動した。


 「おい、そこで何をしている!」

 「なっ!お前、一体どこから入って来た。ここは俺の家だぞ。勝手に入ってくるなど。出ていけ!今すぐ!」

 「おい、正気で言っているのか?そこに居るのは誰だ?お前何しようとしてた?アリシアの純潔を奪うだと?ふざけるな!!」

 オディアスは言葉を言い終わらない内にセバスチャンをぶん殴っていた。

 セバスチャンは竜人に思いっきりぶん殴られその場にぶっ倒れた。


 「アリシア、酷い目に遭ったな。さあ、帰って寝るぞ」

 オディアスはアリシアを抱き上げた。その拍子に耳にかけてあったバラが落ちた。オディアスはそのバラを思いっきりグシャリと足で踏みつけた。

 そして今夜泊まるはずだった宿に転移した。

 おかみさんは驚いたがオディアスは領主がアリシアを襲った事を話した。すぐに部屋に案内してくれてアリシアを宿のベッドに休ませた。そしてノートンとドクに事情を話して二人も転移で宿に連れ帰った。

 翌朝日の明けない内に四人はウエンドに向かう荷馬車に乗ってサウスウエイドを出た。

 アリシアは相当強い睡眠薬を盛られたらしくまだ眠ったままだった。










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