35サウスウエイドで米発見!
馬車は順調に進んで昼前にはサウスウエイドに着いた。
サウスウエイドは穀物の街で街は賑やかだった。街道には大きな穀物蔵が立ち並び、金色の麦の絨毯が辺り一面に広がっていた。
ノートンはすぐにギルドに向かいドクとアリシア達は昼食を取ろうと近くに食堂に入った。
食堂は人で溢れている。注文もをしてカウンターでトレイに入った食事を受け取るシステムらしく、人の列が同じ方向に流れている。
そこでアリシアが目にしたのは…『うそぉ、あれって米じゃない?まじまじ、ここってお米を食べる習慣があるの!』
客が受け取るトレイの上には確かに米粒のパエリアのような物があった。この世界に確かに米はあった。でも、アリシアの知っている限り米はほとんど流通しておらず見た事はなかった。
『アリシア、何を騒いでいる?』
いきなり脳内日話しかけて来たのは、当然オディアスだった。
『あっ、もうオディアス様、今いい所何ですから邪魔しないで下さいよ。もう、私米は食べれないって諦めてたんです。でも、ほら、あれ見て下さい。米ですよ!米!』
『さっきから、米、米ってなんだ。それはうまいのか?』
『それはもう美味しいに決まってるじゃないですか!!』
アリシアは速攻でそのパエリア風のメニューを選んだ。
ドクさんはいつもにパンとスープ。オディアス様は私と同じパエリア風の物にした。父の分は持ち帰り用にサンドイッチにして三人で席に着いた。
アリシアは早速パエリア風のご飯を一口。
「うんうん、おいし〜い!米の芯まで味が染み込んでていい仕事してるぅ」
『うぐ〜、パエリア風のご飯の上には魚やエビが乗っていて小さく切った玉ねぎやほんのり香るニンニクとスパイス。これはもう前世のパエリアを凌駕するくらい美味しいのでは』
アリシアの脳内ツッコミはもう止まるところを知らず暴走を続ける。
オディアスはそんなアリシアの脳内呟きを聞きながらパエリア風なご飯を口にした。
「何だこれは!魚のダシと香味が絶妙にマッチして何とも言えない味のハーモニーを奏でているではないか。これはもはや全世界に通用するベストフードと言えるではないか!」
「竜王さん、あんたさっきから一体何言ってるんだ?いいから黙って食え!」
「すまん。あまりに美味しくてつい口から賞賛が漏れ出てしまった」
「ねっ、言った通りでしょう?これすごく美味しい。夕食もこれがいい。ドクさん、持ち帰り頼んでもいい?」
「ああ、まだ食うのか?」
「だって、美味しいんだから」
「アリシア、私の分も頼んでくれ、私は二人前頼む」
「ええ、いいわよ」
アリシアは持ち帰りを頼んで残りを完食した。
満足して食堂を出るとノートンがギルドの方から来るのが見えた。
「父さん、どうだった?」
「ああ、何だかサウスイードの領主から直々にお達しが来てたみたいで、聖教会にはフリーパスで入れるみたいだ。聖女様が祀られている聖女の石碑に参拝したいからってことになってるんだ。今からでも行けそうだが、アリシアどうする?お前が疲れてるなら明日にしてもいいが」
「そんなの、今行けるなら行くに決まってるじゃない。オディアス様もいいですよね?」
「ああ、もちろんだ」
私達はいつものように聖教会に行くと司祭様が出て来て挨拶をされた。
どうやらイラエードやサウスイードの浄化の事を聞いているらしい。
王都の状況も伝わっていてふと竜毒の心配がないのか気になった。
「あの、司祭様、こちらでは竜毒の心配はないのですか?」
「聖女様、もちろん王都の結界が危険な状態という話は伝わっております。ですが、ここサウスウエイドでは、昔からこの国の穀倉地帯を守る名目で四方に毒を中和してくれる薬草を植えているのです。そのお陰で今までも竜毒の侵入を防いで来れましたし、今回も領地境に育ったドクダミが充分な成果を発揮しておりますのでご安心下さい」
「まあ、それは安心です。それにしてもサウスウエイドの後領主様は優れた方ですのね」
「はい、歴代の領主様が勤勉な方だったと伺っております。今は先代の領主が怪我でお亡くなりになって嫡男のセバスチャン・サウスウエイド公爵が引き継いだばかりでおられます」
「そうですか。では、司祭様、私達は参拝をさせて頂きますので」
「それはご丁寧にありがとうございます。参拝が終わられましたらお茶でもいかがですか?あちらの窓口にお声をかけて頂ければすぐに用意出来ますので」
「はい、ありがとうございます、では、後ほど」
司祭はついては来ずそこでアリシア達と別れた。
アリシアとオディアスはすぐに聖女の石斧に行った。ノートンとドクは近くに座ってノートンはサンドイッチを食べながら待つことになった。
「オディアス様、準備はいいですか?」
「ああ、任せろ」
アリシアはいつものように聖女の石碑に手を合わせた。
『聖女リリア様、あなたが持っている竜王の宝珠、回収しますね。長い間ありがとうございました』
オディアス様が聖女リリア様の石碑の前の地面に手をつく。しばらくすると金色の光が土の中から湧き上がって来た。オディアス様はそれを身体に取り込みもう一度地面に手を差し入れると金色の宝珠が現れオディアス様の胸に吸い込まれて行った。
『宝珠を無事に返せて良かった。ありがとう』
そんな言葉がアリシアの脳内に聞こえた。
『リリア様、安心して眠って下さい』
アリシアはもう一度手を合わせて祈った。
「アリシア、シトリンを回収した。力は生命力だ」
そう言ったオディアスの身体がまた一回り大きくなった。少年から青年に変わる大人でもないけど子供でもない。青臭い未完成の姿。背はゆうにアリシアを超えている。
顔つきは精悍な雰囲気を纏い頼りない感じだった顔が一気に大人っぽくなった。そのギャップに思わずアリシアはうっとり見惚れた。
『うわっ、この顔すっごく好み。何だか無口で冷徹な感じの中にちょっとかわいいところもあって萌えるっていうかえ。ああ、もう!たまんない』
「おい、大丈夫か?」
オディアス様がアリシアの顔を覗き込む。
『なんて言うか、こう、下からくいっと見上げた角度、その金紅色の何とも色気のある瞳が!もう、無理!』
アリシアは思わず目を逸らして言う。
「えっ?いや、その、ちょっと、いきなりこんな大きくなるなんて反則ですよ!」
「仕方がない。竜力を取り戻すとこうなる事は知っているはずだ。ただ想定内の出来事だろう」
「まあ、そうなんですけど…あっ、それで生命力ってどんな力何ですか?」
何とかこの状況に慣れようと深く深呼吸をして彼を見る。
「竜力の発生を促すような物だ。いわゆる人間が食事をして体力を得るような」
『もう、このなに?筋肉美。もはや神、いや、神のような人だから。ああ、耐えれないかも』
アリシアは必死に平常心を保とうと自分を律した。
「おい、聞いてるのか?」
「はい、もちろん。この力は人間の食事と同じって事ですよね。じゃ、今までオディアス様はどうやって体力を維持してたんです?」
「だから腹が減ったと言ってただろう」
「へっ?じゃ、これからは食べなくても生きていけるって事です?」
「まあ、基本的には、だが、これからも食事はする。何よりアリシア、お前の作る食事はうまいからな」
「ちょ、いきなり何言ってるんです!そんなに褒めたって何も出ませんよ!」
むふふ。アリシアはもう興奮状態だ。
「だ、誰が!私はそんな事を言ったんじゃない!でも、今度はさっき食べた米で何か美味い物を作ってくれ」
「もう、そんな事を言ってないって言いながらちゃんと言ってるじゃないですか!まあ、美味しい物を食べれるのはすごくうれしいから良いんですけど」
アリシアはなぜか顔が火照った。
もう!褒められたのか何なのかよく分からないオディアスの言葉がすごくうれしいなんて!




