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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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34サウスイード公爵家に匿われる


 

 アリシア達が宿に入ったのを確かめるとノートンはギルドに向かった。

 今夜は祭りという事もあってギルドにはまだ職員が残っていた。

 「いやぁ、屋台はうまく行った。ありゃ結構楽しいもんだな。それにしても唐揚げ担当になったもんで気分がわりぃわ」

 「それはお疲れ様でした。宿も手配はしておきましたのでゆっくり休んで下さい」

 「ああ、ありがとう。世話になって、それにしても王都はどうなっているんだ?」とノートンは切り出した。

 ギルドで聞いた話では、アリシアを勝手に婚約破棄にして偽聖女として追い出したエリオット殿下は、当てにしていたエリーシャが結界の維持も出来ず、治癒をさせても切り傷程度の治癒しか出来ない事が分かって騙されたとエリーシャとの婚約を破棄した。

 まあ、それはいいとしても、結界が維持できなくなった事で王都に竜毒が流れ込み、たくさんの人が竜呪熱になって苦しんでいると言う。エリーシャの治癒は当てにはならず、竜力を使える貴族は結界の維持に全て回されていて、治療院には苦しむ人が溢れていると言う。

 おまけに王都に入る商人がいなくなり品物が入って来なくなった。

 麦や肉や魚、チーズにソーセージなどの保存食もほとんど流通しておらず平民は明日の食べ物にも困る始末らしい。

 食べる物を求めて暴動が起き略奪もあるらしい。

 国王はすでに王都民に厳戒態勢をとって夜間外出禁止令を出し、騎士団が街の巡回をして取り締まりを強化しているが、いつまで王都が持ち堪えれるかと思われている。

 貴族達はそれぞれの領地に引き上げ始め残っているのは領地を持たない宮廷貴族ばかりだとか。

 国王は王宮に留まり王妃や親族は既に穀倉地帯にあるサウスウエイドにある王家の別荘辺りに避難しているとも言われている。

 エリオット殿下はすでに王太子ではなくなり次期国王の器ではないと判断された。そしてアリシアを追っている騎士団を率いているのがエリオットらしいと言う情報も入っていた。

 アリシアともう一度聖女として取り戻し王都を建て直せば王太子に返り咲けると思っているのかも知れない。

 とにかく王都騎士団には絶対に見つからないようにしなければならない。

 ノートンはサウスイードを直ぐにでも立った方がいいと判断したのだ。


 宿に帰るとノートンはアリシアに言った。

 「いいか、アリシア、どうやら王都騎士団はエリオット元殿下が指揮を取っているらしい。あいつはお前を取り戻して王太子の座を取り戻そうとしているに違いねぇ。急いで次の目的地に行かなきゃならん。サウスウエイドでは、姿を変えた方がいいかも知れねぇ」

 「そうなの。全くいい加減にして欲しいわよ。向こうが勝手に追い出したくせに今更戻って来いなんて、本当に都合いいんだから!」

 「何百年経ってもこの国の王族は勝手な事ばかりだな。いっそ滅ぼすか」

 「物騒な事を言わないで下さい。いくら腹が立つからって殺そうとは思いません」

 「だが、あんな奴らが国をダメにしていると思わんのか?」

 「まあ、そうですけど」

 「まあまあ、今はそんな事より見つからない方法を考えなきゃな」

 「竜王さんはまた大きくなったんじゃねぇか。もう、アリシアの子供じゃ通用しねぇな。アリシアは男の姿に変装した方がいいな」

 「ええ、いいけど」

 「ああ、特にその胸、布を巻きつけて目立たないようにしねぇと、それから髪は…」

 流石にノートンも言いにくかった。

 「いいわよ。髪切るから」

 「でもなぁ…最後にしよう。髪は最後に。いいな」

 「そんなの気にしなくていいのに。でも、ありがとう父さん」



 宿の人が部屋に飛び込んできた。

 「直ぐにここを出て領主様のお屋敷に逃げて下さい」

 「何があった?」

 「王都の騎士団が宿を改めているそうです。ここにも、直ぐにやって来ます。さあ、すぐに下へ。おかみさんが案内します」

 「おお、すまめぇな」

 「父さん、信じて良いんでしょうか?」

 「何してんだい!早くしないと騎士団が来ちまうよ!」

 「おかみさん、すみません。この情報はどこから?」

 「イラエードの後領主様が領主様の所に直に来たって話だ。あんたイラエードでも随分と人を助けたらしいじゃないか。私らだってこんな聖女様どんな事をしたってあいつらから守って見せるさ。さあ、早く」

 「イラエードの。すみません。おかしな事を聞いて」

 「いいって事よ。あんな奴らにいいようにされたんだ。人も信じれなくなるさ」

 「オディアス様急いで下さい。敵です。逃げますよ。さあ、急いで」

 「何だ?いきなり起こしたかと思えば走れだと?全く、この国の奴らと来たら!!」

 おかみさんに道案内されてアリシア達はサウスイード侯爵の屋敷に逃げ込んだ。



 「聖女様。ご無事で何よりです。王都騎士団がサウスイードに向かったので先回りしてお知らせに参った次第でして」

 いきなり出迎えたのはイラエード公爵だった。

 「これはイラエード公爵様、感謝します」

 「なに、礼には及びません。それにしても聖女様、サウスイードでも大活躍されたと聞きました。こんな人を追放するなどとけしからん殿下になど絶対に渡しませんから、そうですよなぁ、サウスイード公爵!」

 「はい、もちろんです。聖女様、川の浄化、誠にありがとうございました。領民はどれほど聖女様に感謝しているか知れません。私からも心よりお礼を申し上げます。どうか、今夜は安心して我が家でお休み下さい。明け方には馬車を手配して聖女様達の行きたい所にお送りいたしましょう。それからイラエード公爵とも話しましたが聖女様に護衛をつけさせて頂きたい。この先も王都騎士団は執拗に追いかけると予測されます。聖女様の身に万が一の事がないよう私どもでお守りさせて頂きたく思います」

 「いえ、それはお断りします。護衛などをつければ余計に目立ってしまいます。申し訳ありませんがお気持ちだけで結構です」

 二人ともさすが公爵。整った顔立ちに中年の色気ぷんぷんだ。

 でも、アリシアのことは恐れ多い存在と思っているらしいのでほっとした。

 王都にいる頃には病気の治癒をしてわざと手を握って来たり身体に触ったりする中年の貴族が多かったのだ。


 「そうですか。では、何かあればいつでもギルドにでもお伝えくだされば駆けつけますので」

 「はい、ありがとうございます」

 アリシアは安心してほっと息を吐く。

 「あの、お連れはお父上と護衛の騎士とお聞きしましたが、そちらのお子様はどちらの?」

 サウスイード公爵が不思議そうにオディアスを見た。

 「ああ、こいつですかい。こりゃアリシアの腹違いの弟なんでさ。どうしてもついていくと言って聞かなくって。おい、こら、挨拶くらいしろ!」

 ノートンがすかさず答えた。

 「オディアスだ」

 「ああ、そりゃお姉さん思いの弟さんだ。何か困った事があったらいつでもおじさんを頼ってくれ」

 「オディアスったら、もう、すみません。何だか気を使わせたみたいで」

 アリシアは必死で誤魔化した。

 そしてそろそろ休んでくれと言われすぐに休む事にした。案内された部屋は豪華でベッドもフカフカだった。

 もちろんアリシアは一人部屋。父とドクさんとオディアスは三人で同じ部屋だった。

 アリシアは久しぶりに豪華な風呂に入り一人を満喫した。


 しばらくして王都騎士団がやって来たらしかったが、サウスイード公爵がうまく誤魔化して騎士団を追い払ってくれたのでアリシア達は安心して休めた。

 どうやら騎士団は宿も取れずに近くの森で野営をするらしいとの事。

 魔物にでも襲われればいいのに。なんていけない事を思ったアリシアだった。


 翌朝はまだ日が昇らないうちに出発をした。 

 今回はサウスイード公爵が手配してくれた馬車を使う事になったのでかなり豪華な馬車になった。馬は二頭立てで御者も公爵家御用達らしい。

 騎士団はどうやら川の水が汚染された事や聖女がそれを浄化した事まで調べをつけているらしい。

 まあ、あれだけ街中の人々に知らせれば話が騎士団に伝わっても無理のない事だ。


 「アリシア、次の街ではもう何もするなよ。これ以上騒ぎが大きくなるとまずい」

 オディアスはすっかり警戒している。馬車に乗る前から匂いを確かめ辺りを伺いながら馬車に乗り込んだ。

 「私だって好きでやってる訳じゃないわよ!」

 「それにしてもよりに寄ってお前の弟だと笑わせてくれる!」

 「仕方ないじゃない。父さんもよく思いついたわよ。弟ならおかしくなかったもの」

 その後オディアスはずっと喋らなかった。 

 どうやら怒ったらしい。










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