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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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29竜王、アリシアを助ける


 「ノートン、アリシアの具合は?」

 「竜王さん、アリシアは竜力を使いすぎたのだと思う」

 「ばかな奴め!どうしてそこまでする?」

 「どうしてって、なあ。自分に出来る事がしたいんだよこいつは。アリシアは生まれた時に竜聖印を持って生まれた。そりゃ、もう、みんなが期待して赤ん坊の頃から手を触らせろとか抱かせろなどと人が近づいて来たり、聖教会からは引き取りの要望も来た。でも、うちの奴はこんな幼子を手放す事は出来ないと猛反対したんだ。でもよ、5歳になる前母親が病気で亡くなると俺はすっかり気落ちしてこんな力を持つアリシアを抱えて生きて行く事が怖くなっちまった。いや、俺は女房を無くしてすっかり気力を無くしちまってた。だから一人で育てる自信がなかったんだ。それで聖教会預けた。その方がアリシアに為だって言い訳した。聖教会でアリシアはなかなか竜力が現れなくて随分努力したらしい。色々な努力してやっとの思いで竜力を開花させたと聞いた。何年も一人で頑張って来たんだ。俺は親らしい事何もしてやってないのによお。それなのに散々いい様に使われて偽物だと言われ裏切られ傷つけられた!でも、俺は思うんだ。アリシアがこんなに努力したのはもう何よりみんなを助けたいと思ったからじゃねぇかって。だから、こいつは偽物と言われようと見て見ぬふりが出来ないんじゃねぇかって思うんだ」

 「全く。アリシアはばかだ!おい、このお茶を淹れてやってくれ」

 「竜王さんそんな言い方はないだろう。まあいい、俺が頼んで来る」

 ドクが瓶を持って出て行った。


 「おい、アリシアに私の竜力を分けるから少し離れてろ」

 「竜王が?そんな事出来んのか?」

 ノートンが疑いの眼差しを向けた。オディアスはすっと目を細めたが「ああ、これでも竜力ナンバーワンと言われていた。アリシアに竜力切れくらいどうにでも出来る」さらりと言う。

 「そうか、すまない」

 「なに、こいつにはホットドッグを作ってもらわなきゃならん。私の為だ。勘違いするな!」

 オディアスはアリシアの寝ているベッドに近づくとアリシアの顔に近づいた。

 額と額を合わせる。

 これは竜人の竜力を分け与える行為だが、もう一つ番と心を交じり合わせる時にもする。

 オディアスは生涯で一度だけやった事のある行為だった。それはアリアと初めて心を通わせた時にやった事だ。二人の竜力が混じり合い番との絆を結ぶ為に。

 もう、二度とこんな事をするとは思わなかった。でも、オディアスはアリシアに竜力を分け与える事に迷いはなかった。

 ふと、オディアスはアリシアがオディアスの額にキスをした事を思い出す。

 『アリシア、お前は知らずにあんな事したのだろう?私もお前が番だとは思っていない。でも、お前は何と言うか、癪に触る。でも、憎めない女だ。早く元気になれ』

 オディアスはそっとアリシアの額に自分の額を当てる。

 淡い光がオディアスの身体から湧き上がりアリシアを包み込む。金色の粒子がアリシアに身体に吸い込まれて行く。

 「これでいい。しばらくすれば目を覚ますはずだ」

 「ありがとう」

 「仕方がない、ホットドッグのためだ」

 「ホットドッグなら俺が作ろうか?アリシアに作り方を聞いて、ほら、昨日食べたのも俺が作ったんだぞ」

 「ああ、でも、アリシアが作るのがいいんだ」

 「でも、腹が減ってんじゃねぇのか?」

 「アリシアが元気になってからでいい」


 しばらくするとアリシアが身じろぎした。

 「う、ううん、あれ私?」

 「アリシア?気がついたか?もう、どんだけ心配したと思ってんだ」

 「父さん?オディアス様もどうして‥」

 「お前は竜力切れを起こしていた。私が力を分けた。まだ、無理は出来んぞ」

 「そっか。ごめん、心配かけて」

 「そりゃいいんだ。でも、あんまり無茶はすんな」

 そこにドクさんが入って来た。

 「おかみさんにお茶を淹れて貰ったぞ。おっ、アリシア気がついたのか。ったくよぉ、心配したぞ」

 「ドクさんも心配かけてすみません」

 「いいって事よ。さあ、このお茶は竜王さんが薬屋で作ったんだぜ」

 「オディアス様が?」

 「お前たちが帰って来ないから、暇を持て余しただけだ。薬屋の店主が手伝えと言って仕方なくだ」

 「いいから飲んでみなって」

 ドクさんにお茶を手渡されてアリシアはカップを取った。

 カモミールとローズヒップの香りがした。甘酸っぱい香りにりんごのような匂いが混じって口に入れるとほっとする気がして身体の強張りが解けるようだった。

 「うぅぅん、おいしい。疲れが取れる」

 「店主が疲労回復にいいと言っていた。アリシア全くお前と言うやつはどうしてあんな無茶をした?少しは自分の身体の事も考えれないのか!」

 「心配してくれたんだ」

 「ばか、誰がお前なんかを。私はお前にホットドッグを作ってもらおうとずっと待っていたんだぞ。それなのにお前と来たらいつになっても帰って来ない。おまけに倒れるまで‥ばかだお前は」

 「ごめんなさい。私だって倒れるとは思っていなかったんだから」

 

 それからおかみさんがパン粥を作ってくれたので、遅い夕食を四人で食べた。

 「何だこのドロドロした食べ物は?」

 オディアスはパン粥をスプーンで掬うと顔を顰めた。

 「竜王さんよ、こりゃパン粥って言う食いもんだ。病人が食べるもんで今のアリシアにはこれくらいがちょうどいいんだ。まあ、遅せえし、こうやって食いもんを出して貰えるだけでもありがてぇと思わなきゃな」

 ドクさんがパン粥を啜るように口に流し込む。

 「これを食べるのか?」

 「ああ、おかみさんはちゃんと栄養を考えてミルク粥にしてくれてるだろう。文句言わずに食いな!」

 「ミルクが入っているのか、どうりでいい匂いがした」

 「ぶっ!食いつくのはそこかよ。竜王さんは相当ミルクが好きなんだな」

 「悪いか」

 「いや、悪くはない」

 三人は黙ってパン粥を啜る。

 アリシアもゆっくりパン粥を口に運ぶ。なるほどこれが肉とかだったらきっと食べれなかっただろう。これなら何とか口に流し込めばいいし、ミルクも入って栄養満点だ。

 そこでようやくオディアスがなかなか食べなかった理由に気づく。

 「オディアス様、ホットドッグ作れなくてすみません」

 いきなり謝られてオディアスの方が驚く。

 「私が病人にそんな事を頼むとでも?」

 「だってさっき」

 「それはお前が倒れる前の話だ。いいから食べて休め」

 それ以上は誰も話をしなかった。

 パン粥を啜る音だけが部屋に響いた。


 「アリシア、明日にはここを出た方が良いだろうからもう休め」

 「うん、そうだね。追っても騒ぎを聞けば私だって気づくだろうし、急いでサウスイードに行った方がいいわね」

 「おりゃ、ちょっとギルドに行ってくる。サウスイードにゃグエンが話を付けてるだろうから、後は馬車の手配だな」

 「ああ、アリシアは荷馬車じゃきついだろうしな」

 「ああ、ギルドから出る定期馬車ならあるだろうしな」

 「ドク、すまねぇな」

 「何言ってんだ。アリシアに怪我を治して貰っていなかったらおりゃ今も苦しんでたんだ。礼を言うのはこっちのセリフなんだからよぉ」

 「ドクさん本当にありがとう」

 「アリシアまで、全くかなわねぇなぁ。いいから早く休め」

 ドクさんは年甲斐もなく照れて部屋を出て行った。


 その後ノートンも部屋に戻り、アリシアをオディアスだけになった。


 「オディアス様、明日はサウスイードです。きっとギルドで手筈を整えてくれてるはずですから、昨日みたいに手際よく宝珠を手に入れましょうね」

 「私は別にお前たちを頼らなくたって宝珠を手に入れられるんだからな。ただ、封印が解けたばかりの時は竜力がなく従属者にしたからお前と離れられないだけだ」

 「オディアス様は後悔してるんです?私が足手纏いになるから」

 「後悔などしていない!」

 「私、この国の人があなたにした事申し訳なく思ってます。だから面倒でも最後まで一緒にお供させて下さい」

 オディアスの金紅色の瞳が見開かれる。

 きっとこんな事言うなんて思っていなかったのだろう。アリシアは最初は責任感から一緒に行く事にした。でも、口は悪いがオディアスは優しい竜だと分かった。今日だって自分を助けてくれた。だからこそ彼の願いを叶えたいと思う。まあ、疎まれている事は分かっているが。

 「‥まあ、そこまで言うなら仕方がない。いいか、元気になったら今度こそホットドッグを作れ!いいな」

 「はい、分かってます。じゃあお休みなさい」

 「ああ、魔力切れは身体を休めるに限るからな。ゆっくり休め」

 「あれ?今日はソファで寝る事文句言わないんですか?」

 「私だってそれくらいの分別はある。いいからもう休め!」

 なんだかんだ言ってもオディアスは優しいと思いながらアリシアは目を閉じた。












 

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