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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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27仕方ありません


 アリシアが部屋に戻るとオディアスは昨日買った服を着て支度を終えていた。

 「どこに行っていた?」

 「ちょっと」

 「ちょっとと言う場所はないと思うが」

 「何でもない。いいじゃない、私がどこに行こうと」

 「アリシアとは従属の契約をしている。勝手にいなくなってもらっては困る」

 「もう、喋れるようになったら随分言うようになったわね」

 「前から言っていた。声にしていなかっただけだ」

 そんな会話をしながらもアリシアはさっさと鞄に荷物を詰めて行く。

 「さあ、忘れ物はない?」

 「私の問いに答えていない」

 「女にそんな事聞く?女にはお手洗いや身だしなみをする時間が必要なの!」

 「それにしては髪はさっきのままだが」

 「オディアス、あなたって絶対女に嫌われるタイプよね」

 「女に興味はない。番はもういない。後の人生で女と関わる事はない!」

 「だったらもういいでしょう。さあ、行くわよ」

 やっとオディアスが黙って付いて来る。



 宿の入り口に来るとノートンとドクさんが待っていた。

 「お待たせ、もう、オディアス様が遅いから!」

 「大丈夫だ。忘れ物はないか?」

 「ええ、大丈夫。あれ?ドクさんどうしたの?」

 ドクさんの顔色が悪い事に気づいた。

 「大丈夫だ。こんなの何でもない!」

 「でも、顔色が悪い。もしかして」

 アリシアがドクの額に手を当てる。少し熱っぽい。

 「このまま出発は無理だわ」

 「大丈夫だって、そうだ、途中で薬を買えばいい。何よりここに長くいない方がいい」

 ドクさんは先に立って歩き出した。目指しているの少し向こうに看板が見える薬屋だろう。

 みんなで急いでドクさんを追う。

 ドクさんは足早に歩いて薬屋に入った。 

 「もう、ドクさん早すぎ」

 アリシア達が遅れて薬屋に入るとドクさんが倒れていた。

 「だから言ったのに!ドクさんしっかりして、今、治癒魔法掛けるから」

 薬屋の店主が奥に案内してくれて、長椅子にドクさんを寝かせるとアリシアはいつものように手を合わせて祈り始めた。淡い光がドクさんを包み込むとすぐにドクさんの意識が戻り顔色も良くなった。

 「あれ?俺は‥」

 「もう、ドクさん、無理しすぎ。今治癒魔法掛けたからもう大丈夫だけど、まだ無理しちゃダメだよ」

 「ああ、すまん。アリシアにすっかり迷惑かけちまって」

 


 そんな様子を薬屋の店主が見ていた。

 アリシア達がすっかり良くなったドクさんと一緒に出て来た所で声を掛けられた。

 「あの、貴方まさか、聖女様ではありませんか?どうかお願いします。この数日熱がでたり具合の悪い人が急増してるんです。薬もそろそろ底をつき始めてて、治療院も患者が溢れていると聞いています。王都から竜毒が流れ込んでいると言う噂も満更嘘ではないようですし、どうかこの街の人を助けてはもらえませんか?」

 「見てたんですか?」

 「すみません。ですがどうかお願いです」

 「でも、治療院の人達だけを治癒しても、それだけでは済みません。街中に竜毒が蔓延しているならこれからも病人はどんどん増えて行くはずです」

 「では、どうすれば?」

 「ここの地形は王都との境に高い山があったはずだが」

 そう言ったのはオディアスだった。

 「はい、そうです。高い山の裾野がここイラエードですので」

 「それならばあの山から結界を張って街ごと結界で閉じ込めればいい」

 「それはすごい考えですね。坊ちゃん。ですがそんな事出来るわけもありません」

 「ちょっと、オディアス!余計な事を言うんじゃないの。もう、この子ったらいつも突飛なことを言って人を驚かすのが得意でして‥」

 アリシアはオディアスの店の外に連れ出す。


 「もう、どう言うつもり?あんないい加減な事を言うなんて!」

 「アリシア、お前ならこの範囲の結界はは張れるだろう?」

 何言ってるんだと思いながらもアリシアは辺りを見回す。まあ小さな街だし、あの山までくらいなら何とか出来る気も‥

 「私が浄化をする。お前は竜毒がここに入らないようにする」

 「そんな事出来るんです?オディアス様の力じゃ、無理ですよ!」

 「地脈の力と再生の力があれば出来る。地面に竜力を注ぎ大地の力と植物の力を掛け合わせてそこに再生力が加われば空気を浄化する事など容易い」

 「本当に?出来なかったら結界の中に竜毒を閉じ込める事になるんですよ」

 「アリシア、私は竜王だぞ」

 「でも、今は不完全なんですよね?」

 「まったく。安く見られたものだ。もし、出来たらお前にはホットドッグを作ってもらう」

 「はい?最初は嫌がってたくせに。やっぱり美味しかったんですか?」

 「ばか、朝食がまだだ。腹が減ってるだけだ」

 「まあ、仕方ありません。では人気のない所で」

 話がつくとアリシアはノートンに事情を説明した。

 「アリシア、本当に大丈夫なんだろうな?まかり間違ってお前に何かあるなんて事はないのか?」

 「父さん、あそこまでオディアスが自信たっぷりに言うんだからきっと大丈夫。ドクさんと一緒に待ってて」

 「わかった。気をつけろよ」

 「うん、オディアスに気をつける」

 「ああ、あいつには一番気を付けろ」

 「ええ」

  


 それから街のハズレまで急いで移動した。

 人気がないことを確かめて、アリシアは両手を大きく広げて、結界を張り始めた。

 結界を張るには何段階があって最初に山のてっぺんに大きな雲を作るイメージで力を注ぐ。それが終わると上から下に広がるように魔力を伸ばして行く感じ。大きなテントをイメージして街全体を包み込むようにして行く。

 すぐ近くでオディアスが両手を広げて空に手を上げゆっくり手を地面に下ろし、両手のひらを地面に押し付け竜力を注ぐ。大地の地脈の隅々まで力を流し込みそれからそれを押し上げるように街全体の地面に呼びかける。

 地面の上に生えている植物にも力を流し込み、そこから出る空気に浄化の力を纏わせ空気中にある竜毒を浄化して行く。

 目には見えないはずだった。街を覆う結界も空気中に広がる浄化も。でも、不思議と二人にはそれが見えた。

 「やったわ」

 「ああ、出来ただろう?アリシアにも見えたはずだ」

 「ええ、見えたわ。仕方ない、材料とどこか厨房を借りて作るしかないわね」

 「ああ、約束だ」

 「もう、パン屋で買ったサンドイッチでもいんじゃない?」

 「いや、あれがいい。だって俺はお前の作ったホットドッグを食べていない」

 「ほんと、嫌な人!」

 「でも、食べてみろと最初に言ったのはお前だ。アリシア」

 「食べさせるんじゃなかった」

 「ミルクも付けてくれ」

 「もう!」












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