25追っ手が来るかも
ギルドに戻って無事任務が完了した事をグエンに知らせるよう職員に伝えると手紙が来ていると言われた。
みんなは先に着替えを済ませオディアスの替えの服を買いに行こうと話をしていた。
ノートンがみんなの所に戻ると手紙の内容を説明し始めた。
「グエンから連絡が来た。それによるとノースライルが封印が解けた事を王宮に知らせたらしい。それにあの後もアリシアの居場所の問い合わせがギルドにもあったらしい。グエンはとぼけたが行き先は聖女の埋葬地じゃないかって辺りがついているから時期に追ってが来るだろうと言う事だ。アリシアお前、髪を切っても大丈夫か?いざとなったら男の振りをしなきゃならん」
「そんなの平気よ。今ここで切ったほうが良い?」
「そうだな、宿に入る前の方が安全かもしれねぇな」
「アリシア、私の事はしられているのか?」オディアスが聞く。
「オディアスの事はまだあっちは知らないはずよ。あっ、そうか、子供連れなら気づかれないかも」
「それでは、お前は髪を切らない方がいい。子の母の振りをすれば良いではないか」
オディアスは自分を指差す。
「そうか、あんた良い事言うじゃねぇか。アリシア、髪は切らなくて良い。お前は竜王さんのお母さんって事で」
「えぇ、私まだ20歳だよ。それなのにもうこんな大きな子供のお母さんなんて!」
「こいつの服も買わなきゃならん、ついでに少し落ち着いた色の服も買うといい。なぁに、周りの奴らは顔なんて見ちゃいねぇ、服が地味なら大丈夫だ」
「それ、ドクさんの感覚でしょう?絶対無理だと思う」
「アリシアは嫌なのか?私の母親役は」
「当たり前でしょう。あなたの身内になるなんて、もう勘弁してよ」
オディアスの顔がほんの少ししゅんとした。
「オディアス様ひょっとして傷ついた?もう、竜王なんだから、もっとシャッキとしてくれなきゃ」
「だ、誰も落ち込んでなんか、私だってお前が母親などと願い下げだ!」
「わたしだって!」
「ああ、もうわかった。わかった。いいから落ち着け!でも、追っ手が来る事は考えられる。アリシアはドクが言ったようにあいつの母親のふりをしろ。とにかく今は安全が一番だからな。良いなアリシア」
ノートンが二人の間に割って入って話は終わった。
「でも」
「アリシア、父上の命令だ。私ではない」
「もう!」
アリシアも渋々納得してギルドを出て服飾店に入った。
アクルート国の東で一番の街をあって店にはあらゆる品が揃っていた。一般の平民が着る服や子供服、冒険者向けの服やちょっとしたカバンやリュック、それにブーツなども沢山取り揃えてあった。
「オディアス様はまた大きくなるかもしれないから、少し大きめの服にしよう。ベルトで締めればズボンは二回り大きなサイズでも行けそう。シャツも袖を捲ればいいし」
「アリシア、さっきから私の物はかなり雑な扱いだが、これでも一応王なんだ。それなりの身だしなみが」
「どうせすぐ大きくなるし、全部揃えば国に帰るんでしょう?だったら良いじゃない。他にも買わなきゃならないものが沢山あるのよ。下着だっているし、ほらベルトもきついんでしょう?少しは節約しなきゃ」
「アリシア、何だかお母さんっぽくなって来たんじゃねぇか」
ドクさんにそんな事を言われてアリシアはプイと顔を逸らした。
「父さん、地味な服ってどんな感じかわかる?あっ、でも私、お金持っていなかったし、やっぱり私の分はいい」
「そんな事言わなくていい。金はグエンから貰ってるし俺だって働いてるんだ。お前に服の一枚や二枚買うくらいどうってこたぁねぇ。ほら、アリシア、お前の母さんが着ていたのはこんな色の服が多かったぞ」
ノートンが掛けてあった茶色に小花柄の簡素なワンピースを手に取った。
「あっ、可愛い。母さんこんな服着てたんだ。私ほとんど覚えてないわ。顔だってもう殆ど忘れちゃったし」
「ああ、お前はまだ小さかった、無理もない。母さんはお前を抱いて色々な事を教えてた。これはボタン、これはスプーン、この草は毒があるから触るなとか、この花の蜜は甘いとか、一度なんかハチミツを食べさせたらアリシアがツボを握って離さなくなって、でも、あまり食べると腹を壊すって、母さんが泣くお前の手からツボを取り上げたらお前はわんわん泣いてあの時は本当に困った‥」
「そんな事が、全然覚えてない」
「そりゃそうだ。お前はまだ小さかった。それなのに俺はお前に会いにも行ってやらなかった。母さんが死んで辛かったとは言えお前だって悲しかったはずなのに、すまなかった」
「うん、寂しかった。ずっと会いに来て欲しかった。でも、こうして来てくれたじゃない」
「でも、そんなんじゃ許されねぇ、でも、お前の事二度と知らんふりはしねぇ」
「うん、私も全部許すとか多分今は無理。でも、少しずつ受け入れていけると思う」
「アリシアはそんな事を考えなくていい。お前は俺をそばにいさせてくれる。それだけで何も言う事はない。ほら、いいから好きな服を選べ」
「うん、ありがとう、父さん」
アリシアはまた父とに距離が少し縮んだ気がした。
服飾店で必要な物を揃えるとそろそろギルドで紹介された宿に行くことになった。 アリシアは父が見た茶色の小花柄にワンピースともう一枚地味なチェックの大きめなシャツと濃茶のズボンを買った。
宿に入ると辺りはすっかり薄暗くなっていた。
すぐに部屋に入る事になったのは良かったが。
「えぇ、私、オディアス様と同じ部屋なんだけど!」
「ああ、ギルドで宿を聞いた時、ほら、アリシアとあいつを親子にしようって話したろ、だから男二人と親子で部屋を取っちまったんだ」
ドクは何でもないように言った。それにいつの間にかアリシアって呼び捨てにもなっている。
「お客さんすまないね。今日は満室で他に部屋がないんだ。でも、親子だろう?」
宿の人に掛け合ったが反対に怪訝な顔をされて諦めるしかなかった。
先に宿の食堂で夕食を済ませるとアリシアは仕方なくオディアスと同じ部屋に入った。
顔を洗い買ったを大きめのシャツとズボンに着替えるとアリシアはベッドとソファの間に長い紐を置いた。
「オディアス様、この紐見えます?ここから入ったらダメって事ですから、わかりました?」
「ああ、この線が国境って思えば良いって事だろう?」
「ええ、そうです。私達、朝まで国交断絶って事で、話しかけるのも、尋ねるのも禁止です。いいですね?」
「同盟関係が破綻したという事か?」
「同盟関係?私達そんな関係じゃありませんよね」
「いや、先に言ったのはお前だ」
「いえ、ただ今晩私に構うなって事です」
「だったら最初からそう言えば良いだろう」
「まあ、そうですね。では、お休みなさい」
「ああ、お休みって、おい、アリシア私はどこに寝ればいいんだ?まさかこのソファに寝ろと言うんじゃないんだろうな?」
「ピンポン!だってオディアス様小さいんですからそこ、寝れますよね?じゃ」
「おい、それとこれとは話が違うだろ!」
アリシアはオディアスの話など聞くつもりもないらしく一つあったランプの灯りを吹き消した。
部屋は真っ暗になってすぐにアリシアの寝息が聞こえ始めた。
「クソ、アリシア!!」
それでもなぜかその寝息が心地よく聞こえいつしかオディアスも眠りについていた。




