19こんなの酷すぎますます
アリシアは騎士団長に執務室に案内された。
着ている服は若草色のワンピースで、どこか場違いな気もした。
ノースライルは一度アリシアを見るとさっと目を逸らした。
何か話にくいような顔をされてアリシアはやっぱりと戸惑った。
「あの、すみません。こんな格好で来るなんて、でも、急いでいるのかとも思ったので、それで隊服に着替えずに来てしまって」
思わずアリシアの方が先に口走った。
すると益々困ったようにノースライル様が額の辺りをポリポリしながら言った。
「コホン。いや、アリシア、疲れている所をすまない。君の活躍はレオンから聞いた。さすが聖女だな」
ノースライル様は視線を正し椅子から立ち上がりアリシアを見て礼までした。
「とんでもありません。私のようなものでもお役に立てたなら」
「とんでもない。君は自分の力を軽く見ている。王都の奴らはどうかしている」
「そんな‥」
アリシアは褒められて頬が熱くなった。着ていた服の事ではなかった。やはり結界の事で何か頼みたい事でもあるのだとアリシアはほっとした。
それに王都ではこんなストレートに感謝を伝えられた事などなかった。
聖女なら当然とばかりに次々に祈りや治癒を言いつけられどんなに疲れていようと体調が思わしくなかろうと聖女なんだからそうするのが当たり前だと思われていた。
聖教会も貴族も王族も、でもノースライル様は自分を一人の人間として見てくれる。
アリシアの胸に温かい気持ちが湧き上がる。
「だが、ここ北辺境で厄介な問題が起こった」
「厄介な問題?それは何でしょう。もし魔物討伐とか結界に関する事なら私、お手伝いしますけど」
「そうか。それはありがたい。では、アリシア、君には聖女として最大限の協力をお願いするとしよう。レオン、彼女を地下牢に連れて行け!」
「隊長、今何と?」
レオン副隊長は信じられない顔で聞き返した。
「アリシアを地下牢に連れて行けと言った」
「どう言う事です?彼女が必要なんですよね?だったら」
「竜神殿の封印が解けたと言ったらお前は何を思う?あの封印のお陰でこの国は何とか竜毒を抑え魔物を討伐して結界を守って来たのが今までの現状だ。だが、この先はどうなるか見当もつかん!だから私は古い文献を調べた。聖女は竜王から奪った宝珠をそれぞれ聖教会から受け取っている。その5つの宝珠を持った聖女が決まった場所に埋葬され宝珠が5つ揃うと強固な結界が出来る事がわかった。
万が一封印を解かれた竜王がこの国を攻めて来ても古の教えの通りならこの結界を完成させればアクルート国は難を逃れる事ができるんだ。アリシアはその5番目の聖女。彼女でこの結界が完成する事になる」
「そんな、彼女に犠牲になれと?」
レオンの声が掠れる。
アリシアはオディアスの言っていた事を思い出していた。4つの宝珠を取り戻す。そして力を取り戻して国に帰るとは言っていなかったがきっとそのつもりなのだろう。
それにオディアスは完全に被害者だ。竜人が攻めてくる。それはきっと人間の勝手な思い込みだったの
だろう。もし、それが本当だったならきっと人間にも責任があったに違いない。竜人はこの大陸の守護者とも言われている。
実際、竜王が封印されたがこの国は滅んでいない。もし竜人が極悪非道なら、とっくにこの国は終わっていたはずだ。
アリアさまだってそうだ。人質にされ番である竜王を騙した事をずっと苦しんでいた。
この国の人がするべき事は、宝珠はオディアスに返し過去の過ちをきちんと謝罪する事だ。
アリシアは言い返そうとするが自分が竜王を匿っている事をバラすわけにもいかずじっと成り行きを見ていた。
ノースライル様が顔を顰めて言った。
「私だってこんな事をしたい訳ではない。だが、聖女がここに来たせいで封印に異変が起きたのかも知れないだろう」
「そんな、私、そんなつもりは」
「つもりはと言う事は何か知ってるんだな?何をした。言え!」
「私はただ声が聞こえて、その声は竜王の番だったアリア様の声で、苦しんでました。自分のせいで竜王を閉じ込めた事。でも、私は何もしていません!勝手に水晶球が割れて‥」
アリシアは必死で訴えた。
「やっぱり君のせいじゃないか。だったら仕方がないだろう。この国を救う為なんだ。だから、彼女には生贄になってもらう。それが今できる最善の方法なんだ。分かったらレオン、アリシアを拘束しろ!」
「そんな、ノースライル様何とかならねぇのか。こんな若い女に国の行く末を追わせるなんて勝手過ぎるんじゃねぇのかよ!それにアリシアさんは俺を救ってくれた恩人だ」
ドクさんが反論した。
「ああ、ドク。お前の言う事は当然だ。だが、国民全員の命を引き換えになるならアリシア、お前も分かってくれるはずだ。すまない、どうか私に従ってくれ」
よりにもよってノースライル様が頭を下げた。
期待したのノースライル様も王都にいる貴族達と同じ考えだと分かると何だか彼をいい人だと思ったのがばかばかしくなった。
そんな事より、頭を下げられても困る。竜王は私に部屋にいますし、そんな恐ろしい事をするなんて思えません。きっとあの子竜は宝珠さえ返せば大人しく国に帰るつもりなんです。
などと言えるはずもなく。
「アリシア、申し訳ない。地下牢に同行してくれ」
「そんな、私に死ねと言うんですか?」
「「すまん」」
「そこ、二人で揃って言う事です?」
その間にアリシアは簡単にレオンに拘束されてしまった。
「本当に申し訳ない」
「嫌です!こんなの酷すぎます。北辺境伯考え直して下さい!!」
アリシアはお願いした。
無駄だった。
アリシアはレオンに拘束されたまま地下牢に入れられてしまった。
「ちょっと、嘘ですよね?こんなの酷すぎます。レオン副隊長なら何とかしてくれますよね?私、死にたくありません。助けてください!お願いです。レオン副隊長!!」
アリシアはまだ実感がなかった。でも、冷たい石に囲まれた地下牢に入れられて一気に恐怖がやって来た。
そんな叫びも虚しくレオンは黙って去って行った。
アリシアは散々悪態をついたが、疲れてその場に座り込んでしまった。
もう、嘘でしょう?こんなの信じられない!!




