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偽聖女と言われて婚約破棄されてうっかり竜王の封印を解いたら子竜になった竜王に懐かれました  作者: はるくうきなこ


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16アリシア、竜王と契約を結ばされる


 アリシアは小さな竜のオディアスを連れて来た道を引き返した。

 「アリシア〜!アリシア〜。おーい、返事をしろ〜」

 アリシアを探す声が遠くに聞こえる。

 樹海の出口に近づくと、オディアスを上着の中に隠した。

 『オディアス様、見つからない様にするにはこうするしかありません。しばらく大人しくしてて下さいね』

 脳内で会話出来るので言葉を出さずに会話をする。

 『おい、こんな狭っ苦しい所我慢出来ん!』

 『だって仕方ないですよ。マントも鞄もないんです。すぐに自分の部屋に帰りますから、そうすれば私だってこんな恥ずかしい事今すぐやめたいんですから!』

 アリシアはオディアスをお腹の辺りに隠している。とは言っても下着はあるので地肌に直接触れられている訳でもない。が。だからと言って淑女にあるまじき行為だと言う事は自分でも分かっている。でも、隠す場所がないのだからオディアスにだって我慢して欲しい。

 オディアスがアリシアのズボンのベルトに後ろ脚をぐっとめり込ませる。

 『ちょっと、わざとですか!?』

 『早くしてくれ。窮屈でかなわん。それにもう少し静かに歩けないのか、振り落とされそうだ。ったく。竜王たる私がなんたる不甲斐ない姿なんだ!』

 『いいから少し黙ってて下さいよ』

 『いいじゃないか、声は聞こえん』

 『そういう問題ではありません』

 アリシアは服の上からオディアスの身体をグニっと抓る。

 ずりっと落ちそうになったオディアスの悲痛な声がした。

 『うぐ、お、お前!覚えてろよ!!』



 「アリシア、大丈夫か?」

 ドクさんが走り寄る。

 「はい、すみません。心配をおかけしました」

 「何があった?それに樹海から出て来なかったか?」

 「いえ、ほらあそこに薬草があったので思わずそれを摂っていたんです」

 アリシアは樹海の出口付近で偶然見つけた解毒解毒効果のあるドクダミを見せた。

 咄嗟に思いついた事だったがうまく行った。

 「お前、急にいなくなるから心配しただろ。でも無事でよかった」

 「すみませんでした。あの、私、少し疲れたので、もう家に帰ってもいいでしょうか?」

 「ああ、もちろん。副隊長には俺から言っておく。一人で帰れるか?」

 「はい、大丈夫です」

 「そうか。気をつけて帰れよ」

 「はい、お先に失礼します失礼します」


 アリシアはドクと別れると急いで家に戻った。

 家の中に入るとクレアさんが出迎えてくれた。

 「おや、アリシアもう帰ったのかい?」

 「ただいまクレアさん。結界の手伝いをしたら少し疲れました。部屋で休みます」

 「結界の?そう言えば隊服じゃないか。それで怪我は?」

 「大丈夫です」

 「そりゃご苦労さん。あんまり無理すんじゃないよ。後でお茶でも持っていこうか?」

 「いえ、少し横になりたいので」

 「そうかい。みんなは魔物が出たって聞いてギルドに行ってるんだ。アリシアはしっかり働いた様だから、ゆっくりすればいい」

 クレアさんはそう言うとまた忙しそうに向こうに行った。

 ここでは休みでも、魔物が出たとなるとみんなで協力するらしい。いい所だ。

 とにかく。

 

 アリシアは急いで部屋に入ると、上着のボタンを外して、下着にへばりついているオディアスを引き剥がした。

 『ちょ、何すんだ。いきなりそう言う事をする奴がいるか!』

 『いい加減にして下さい。ここなら誰もいませんから、もう離れても大丈夫です』

 『それならそうと早く言え!こっちは必死で‥ったく!』

 アリシアはオディアスを床に下ろすとほっとしたが、ボタンを外した上着を見てぎょっとした。急いで服を着替えに洗面台に行き、顔洗うと別のワンピースを着てやっとソファに腰を下ろした。

 

 オディアスはソファの横に置いてあるテーブルの上に肩肘をついて寝そべっていた。

 『おい、腹が減った。何か食べ物を用意しろ』

 もう片方も前脚でテーブルの上をトントン叩いている。

 何こいつ!

 「今、帰ったばかりですよ。少し待って下さい。私も疲れてるんです」つい声が出る。

 『はっ?それが竜王の私に対する態度か?もう少し敬意を払ったらどうなんだ?』

 アリシアはふんぞり返ったオディアスを睨みつけながら脳内で言い返す。

 『そんなの知りませんよ。だったら国に帰ればいいじゃにですか。竜王なんですよね?国に帰れば下々の者があなたに世話をしてくれるんでしょ?いっぱいご馳走が食べれますよ』

 『だから言っただろ。そう言うわけには行かないって!とにかく腹ごしらえをしたら私の宝珠を取り戻しに行く』

 『はい?竜王は宝珠の在処をご存知なんですか?』

 『そんなの知るか!500年前、この国の王が取り上げたんだ。この国の王宮にでもあるだろう』

 『王宮に?私が簡単に王宮に入れるとでも思います?もう、諦めた方がいいのでは?』

 『そう言うわけにいくか。それに宝珠を奪ったのは』

 『私じゃありません』

 『ああ、だがこの国の人間だ。だからアリシア、お前にも責任がある』

 『そんなぁぁ』

 『いいから、何か食べ物を持って来い!』

 『はいはい、仰せのままに』


 アリシアはしつこいオディアスに負けて、食べ物を取りに厨房に行った。

 しかし竜が何を食べるのかわからない。かといって、もう一度部屋に戻ってあいつに尋ねるのも癪に触る。

 アリシアは自分もお腹が減っていると気づき厨房に残っていたパンにチーズやトマトを挟んで簡単なサンドイッチを作りミルクをコップに入れて部屋に戻った。


 『はい、これでいい?』

 アリシアが部屋に戻ると5歳くらいの男の子がいた。真っ黒い髪に金紅色の目は竜の時と同じでかなり可愛い。

 「あなただあれ?」つい言葉が出た。

 『私だ。オディアスだ。見れば分かるだろ!』

 「オディアス?やっぱり。あなたって人の姿にもなれたんです?」

 『まあな。やっと力が落ち着いたからちょっと変身してみた。だが、子供にしかなれんとは‥』

 「ちょっと、変身出来たなら言って下さいよ。あんな苦労しなくて良かったのに!でも、その格好じゃ」

 アリシアは持っている服からシャツとズボンは合わないのでドロワーズを履かせた。

 オディアスは服を着せられるとアリシアの小言など気にしない風でテーブルに置かれたサンドイッチを口に運ぶ。

 『これは、チーズか。まあ、いいだろう』

 オディアスはサンドイッチを掴むとがぶっとかぶりついた。

 『ぐぇ、何だ。これは、赤くて酸っぱい。ぐっ、まずい!』

 オディアスはトマトを口から吐き出す。

 「ちょっと、いい加減にして下さい。食べ物は大切にしなきゃ。それに一度口に入れた物を吐き出すなんてマナーがなってませんね」

 『お前は平気なのかこんなまずいものが食えるのか?』

 「だったら食べなきゃいいじゃないですか?」

 『いや、そういう訳には腹が減ってるんだ。わかった。我慢する。おい、それはミルクか?』

 「そうですけど」

 『ミルクがあるなら、早く言え!アリシア、それを飲ませろ』

 子供の姿でも態度が大きい。

 「ミルク好きなんですか?」

 『ああ、喉も渇いてるんだ。早くしろ』

 「どうしましょう?お願いしてくれるなら飲ませて上げてもいいですよ」

 『お前な。私は竜王だぞ!』

 「これは私が持って来た物ですよ」

 オディアスが唇をギュッと噛む。

 『クソ!ミルクをくれ。さあ、早く』

 アリシアはカップを持ち上げるとオディアスの手に渡す。

 オディアスは両手でカップを持つと小さな口にカップを当てた。ミルクが少しずつ流れ込む。オディアスの喉が上下してミルクを飲み下している様子が見て取れる。

 アリシアは思わず可愛いと思った。


 考えてみれば酷い事をしたのはこの国の王族達で、オディアスの言い分は最もなことだとも思ってもいる。

 それにいつまでもここにいてもらうのは困るし、何とか宝珠を探し出して彼にグリアダ王国に帰ってもらはなくてはならない。

 「仕方がありませんね。あなたに協力するしかなさそうです」

 そう思ったのが運の尽きだった。

 『アリシア、お前を私の従者とする。これからよろしく頼む』

 「いえ、そんな約束してませんよね?」

 『さっき協力すると言っただろ。それにもう従属の契約を交わした。お前は私の命令には逆らえんからな』

 「そんなぁぁぁ」

 アリア様こんなの聞いてませんよぉ!

















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