13ルナの家に行く
のご
翌日は休みだった。アリシアは朝早くからホットドッグを作ると何度も鏡の前で服を着替えたり、髪をむすんだりほどいたりしてやっと今日着ていく服が決まった。
そして時間より少し早くルナと待ち合わせた場所に出かけた。
待待ち合わせ場所は街の広場で、中央には丸い噴水があり、その周りにはベンチがあった。
アリシアはベンチに腰掛けてルナを待った。目の前には、パン屋や雑貨店などが立ち並んでいるが、その建物は、どれも屋根は傾き板壁は所々痛んでいる。それでも働く人の姿は皆生き生きとしていた。
「ごめん待った?」
ルナが走ってやって来た。
「ううん、私も今来たところ」
ルナは、可愛い。小花柄のワンピース姿で髪は下ろしていた。
「ルナ可愛い」
アリシアは、つい前世の感覚で声をかけた。
ルナは、顔を赤くして「やだアリシアったら!」と照れた。
「もう、アリシアこそ、その服よく似合ってるよ」
アリシアは、クレアさんが用意してくれたベージュに赤いステッチの入った少しふんわりした女の子らしいワンピースを着て髪は三つ編みにしておた。
「そう?クレアさんが用意してくれたのよ。今までこんなおしゃれしたことなかったから、自分でも似合うか自信がなかったんだけど、ほんとに似合ってる?」
「うん、すごく可愛い」
「ありがとう、じゃあそろそろ行こうか?」
「うん、うちは父が騎士だから騎士団の宿舎にいるんだ。ギルドから近いし家族用の宿舎だから近所には世話焼きなおばさんとかいて助かってる」
「そうなんだ。何だか羨ましい。私、父とはずっと音信不通でつい最近再開したばかりで、実はまだあまり馴染めてないって言うか」
「そうなの?全然そんな風に見えなかった」
「父が色々気を使ってくれてるって分かってるんだけど、なかなか素直になれなくて」
「いきなりじゃ無理だよ。アリシアの思うようにやったらいいよ」
「良いのかな?」
「うん、いいに決まってる。王都からも追放されて嫌なこといっぱいあったんでしょ?アリシアはすごく頑張ってるじゃん」
「ありがとう」
「あ、あそこが家」
ルナの家は騎士団の隣にある2階建ての建物だった。建物は結構古くて、あちこち傷んでいるがにぎやかな声が聞こえていた。
ルナに案内されて、家の中に入った。
部屋は2部屋で窓は1つ。きちんと片付けは出来ているが、壁の至るところにシミがあり部屋には酒の匂いが籠っていた。
奥の部屋は薄暗かったがそれでもベッドの上に男の人がいるのが見えた。
アリシアは前世で暮らしていた安アパートの自分の部屋を思い出した。
「ごめん。驚いたでしょ」
「ううん、ルナちゃんと片付けしてるんだ。すごいと思う」
「そう?父さんまた飲んでるの?今日は友達を連れてくるって言ったじゃない!」
ルナは照れたが父の姿を見て苛立っているのか声を荒げた。
「飲んで何が悪い?飲まなきゃやってられないだろ!」
「そんなことばっかしてるから、治るもんも治らないでしょ」
「うるせえ!子供が親に説教するんじゃねぇ」
「ガチャン!」
ルナは怒って部屋の扉を思いっきり閉めた。
「ごめんアリシア。やっぱりこんなやつの治療なのかしなくていいよ」
「私、気にしてない。聖教会で治療してた時もすごく偉そうな貴族がいて、こんなの全然平気いいからお父さんに合わせて」
アリシアは持っていた。籠を置くと扉を開けて彼に近づいた。
「なんだよお前は」
「失礼します。私はルナさんの友人で、少し治癒魔法が使えます。もし良かったらその怪我の治療させてもらえませんか?」
「治癒魔法だって?そんな都合よくこの怪我が治るもんか。見てみろ。この腕を。こんなにねじれて痛みだって取れやしねぇ」
「ええ、そうですね。これはかなり痛むはず。いいから腕を出してください」
「父さん、アリシアの言うことを聞いて」
「ったく。しょうがねぇな」
ルナの父親は、いぶかしげな顔をしながらも腕を出した。
アリシアは、手を合わせて力を込める。そして彼の折れた骨が元の形に戻りよじれた筋が元通りになるように脳内で念じると淡い光が手のひらに現れ、その手のひらを、彼の腕にかぶせるようにする。
「な、何をする?」ドク(ルナの父)は怯えたような声を出す。
「心配いりません。少しの辛抱です」
アリシアは自分の声に驚いた。
何年も怪我や病気の手当てをしてきた。騎士団と結界を張りに行って騎士の怪我の治療もしたことがあった。でも、こんなに時間が経って変形した傷は初めてだったが何とかやってみる。
光は腕の歪みを治して行く。
「終りました。腕を動かしてみてください」
ドクが恐る恐る腕を動かす。
「あれ?痛くない。嘘だろ。あんたほんとに俺の腕を治して‥くそ。これならまた剣が握れる。アリシアとか言ったな。あんたすげえ」
「よかった」
アリシアはうまくいって良かったとほっとした。
「父さん。ったく、ありがとうでしょう。アリシア、ありがとう。本当にありがとう」
「ううん、自信なかったけど、うまくいって良かった」
「アリシアさん、ありがとう。本当に感謝する」
お父さんが床に頭を擦り付けた。
アリシアは慌てて言う。
「そんな、ルナは私にとって、はじめての友達なんです。その友達の頼みですからうまくいって良かったです。あの、これルナと一緒に食べて下さい」
「アリシア、今お茶を入れるから一緒に食べて行かない?」
「ええ、いいの?」
「もちろん」
ルナがお茶を入れてくれて、お父さんは顔洗って見出し並みを整えて改めてお礼を言った。
「アリシアさん、これからは騎士団に戻って頑張るから、これからもルナのこと。よろしく頼みます」
お父さんはまた頭を床に擦り付けた。
「お父さん、そんなことするならもう治しませんよ」
「そりゃ困る。でも、本当に感謝している。ありがとう」
「お茶が冷めるよ。はい、アリシアの分」
「紅茶?」
「うん、ノースライル様がお見舞いに下さったんだ。今まで飲む機会もなくて」
「美味しい」
「アリシア、まじ、これ美味しい!」
「何だこりゃ?こんな美味いもん食ったことねぇぞ」
「父さん、言ったでしょう。すごくおいしいって」
「ああ、生きてて良かったぁ」
「大袈裟ですよ二人とも」
3人で食べるホットドッグは格別だった。
アリシアがそろそろ帰ろうとした時だった。
騎士団の方から怒号が響いた。
「緊急出動!結界が破られている。魔物がこちらに向かっている。急げ!すぐに出動だ!!」
「ルナ、俺は騎士団に行く。お前らはすぐにノースライル様の屋敷に避難しろ!」
「わかった。父さん気をつけて」
「ああ、いいから急げ」
「アリシア行くよ」
「行くよって、でも私、もしかしたら役に立てるかも。お父さん、私も騎士団に連れて行って下さい」
「そりゃ無理だ。あんたみたいな女じゃ怪我するだけだ。いいから早く避難しろ!」
「それは北辺境伯に決めてもらいます。ルナは避難して、私は騎士団に行くから、グエンさん達に会ったらそう伝えておいて」
「分かった。でも、無理はしないで」
アリシアはドクと一緒に騎士団に向かった。




