12昼ご飯作ってみた
その翌日、アリシアは朝食の手伝いをしてまたギルドに行った。クレアさんはギルドに手伝いもするけど家の仕事があるので凄く忙しい時以外は来ないらしい。
扉を開けるとすでに昨日と同じメンバーが揃っていた。
ルナはアリシアを見つけると走って近づいて来た。
「おはよう。アリシア」
「おはようございます。ルナさん」
「もう、アリシアったら私達友達だよ。ルナでいいよ」
「あっ、そうなんですね。じゃ、ルナおはよう」
「そう、その調子」
ルナが屈託のない笑顔を向けるとアリシアも自然と笑顔になった。
アリシアは床が汚れているのを見つけて掃除を始めた。
その後も掲示板をきちんと整えたり足りない書類などの準備をする。
「アリシアって本当に貴族だったの?そんな事が出来るなんて本当おかしな子」
「聖教会でも掃除はお勤めでやる事があったから、それに書類は必要かと思ったから、ごめん、私ったら余計な事をした?」
「ううん、すごく助かる」
アリシアはルナに釣られて喋る言葉も少しずつ砕けた感じになって行った。元々前世の記憶があるからこっちの方が馴染みやすいと言えば馴染みやすかった。
昼までの仕事は順調に進んだ。
受付は次々にはけて昼前にはひと段落した。
「そろそろ昼にするか」
グエンさんが言った。
「あの、実は私昼ご飯を作って来たんですが、良かったら皆さん召し上がりませんか?」
「アリシアが作ったの?すごいじゃん!」
ルナが興味深そうにアリシアが持って来た籠を覗く。
「それで朝早くから厨房にいたのか。どれ何を作ったんだ?」
グエンさんも近づいて来た。
「そんな期待されると‥簡単なものなんですが」
「おっ、うまそうだな」
「昨日の肉挟みを参考にして中にマヨネーズで和えた卵とソーセージをトマトソースで絡めたものなんですが」
「マヨネーズ?なんだそりゃ?」
今度はエドガーさんが驚いた声を上げた。
「俺も何を作ってるのかさっぱり分からなかったんだが、でも一生懸命作ってたから食べてやってくれないか」
父はアリシアが何か作っていた事は知っていた。
アリシアにとったらただのホットドッグだったが、ここは異世界だと言う事をすっかり失念もしていた。
何しろ昨晩昼に食べた肉挟みを食べるくらいなら自分で作って持って行った方が良いと思い初めて何を作ろうかと悩んだ。
今朝早くに起きて昼食の準備をしようと厨房に行った。ちょうど父が火を起こした所だった。
「あの、卵とソーセージ。それとトマトはありますか?」
アリシアはこの世界にあるもので作れるものを考えてホットドッグを作れないかと思っていた。
それに、父が食事を作っていると知って少し無理を言っても許して貰えるかもとも思った。
「ああ、あるけどどうするんだ?」
「昼ご飯を作ろうと思って」
「アリシアが?」
「はい、そうです」
「何を作るんだ?」
「ホットドッグを」
「何だそりゃ?」
父はキョトンとした顔でアリシアを見た。
「ああ、いえ、パンに具材を挟むだけです。それで卵やトマトはどこに?」
「ああ、今持ってくる」
父はパンや卵を持って来てくれた。
アリシアは心の中でガッツポーズをして嬉しくてはやる気持ちを抑えつけ平生を装い「ありがとうございます」と澄まして言った。
「ああ、卵はどうする?」
「ゆで卵にします」
「俺がやる」
「でも」
「火を使った事があるのか?」
アリシアはえっと思ったが、流石に前世でバンバン使っていたとも言えず「いいえ」と言うしかなかった。
父は卵を鍋に入れてゆで卵を作り始める。
「ああ、でも、何を作るんだ?ホットドッグ?犬の肉でも使うのか?でも、ここにゃ犬の肉はないぞ」
「犬の肉?そんなの使いません。ソーセージを使うだけです。あの、トマトを切っても?」
「ああ、いいけど‥」
アリシアが包丁を握ったのを見た父は驚いたのかぎこちない。
アリシアは何も言わずにトマトを刻み「この鍋使っても良いですか?」と聞くと「ああ」さらに顔を強張らせた父が言う。
火の前に立ちフライパンにトマトを入れてトマトソースを作り始める。
この世界のコンロはすごく便利で火加減も細かく調節出来るし鍋も頑丈で使いやすかった。
調理場にはニンニクやハーブ、オリーブオイルもあって前世で作っていたレシピを思い出しながらトマトソースを完成させた。
ソーセージも焼いて次にマヨネーズを作る。卵黄、塩、酢を混ぜ合わせオイルを少しずつ。とろとろになったら完成。ほんの少し味見をする。
うん、もう少し塩を入れる。
父がゆで卵が出来たと言ったので、ゆで卵の殻をむいてマヨネーズを和える。そうそう、ピクルスもあったので刻んでそれも一緒に入れた。
それからパンに切れ目を入れてソーセージを挟んでトマトソースを入れたものと卵をマヨネーズで和えたものをパンに挟んで昼食にするホットドッグが出来上がった。
「これはまた美味しそうなのが出来上がったじゃないか」
ちょうどクレアさんが厨房に入ってきた。
「クレアさんも昼に食べて下さい」
「アリシアが作ったのかい?」
「ええ、何とか」
「ありがとう。喜んで食べるよ。これを籠に入れるのかい?」
「はい」
クレアさんが籠に入れるのを手伝ってくれて準備は出来た。
「アリシアが作ったパン食べてみたい」
ルナがそう言うと籠に入っていたソーセージを挟んだパンを取ると口に入れた。
「何これ?すごく美味しい。ほら、みんなも食べて」
ルナがそう言ったのを合図にみんながパンを手に取った。
グエンさんとエドガーさんは卵サンドを。
「こりゃなんだ?卵にクリームみたいな物が絡んでそれがまたうまい!」
「ああ、卵にピッタリで、それに卵がぼろぼろしなくて食べやすいな」
「じゃ、俺はソーセージのほうを‥何だ。このトマトは、アリシアお前天才か?この作り方教えてくれ」
父も驚いた顔でパンにかぶり付く。
オリルさんもコルノさんも喜んで食べてくれた。
「アリシア、これすごく美味しい。もしかしたら冒険者用の昼ご飯にしたら売れるかもよ」
「冒険者の昼ご飯ですか?」
「そう、アリシアも昨日食べたでしょ、この辺じゃあれが定番の昼ご飯なのよ。こんなおいしいものなら絶対売れるよ」
「そんな商売もいいかもしれません」
「でしょ?アリシアがやるなら私手伝うから」
「全く、ルナは何でも金儲けにするな」
グエンさんが呆れたような声で言った。
「だってお金は大切じゃない。たくさんお金が貯まったら王都にだって行けるかもしれないし」
「ルナ、そんな事ばかり考えてないで、親父の具合はどうなんだ?」
「あまり良く無い。骨を折って何とか骨はついたみたいだけど、痛みが残ってどうにも歩くのが無理みたいで、だから父さんったらいつも機嫌が悪くて」
「そうなんだ。ルナ、もし良かったら私、一度様子を見に行ってもいい?」
「アリシアが?ほんと。来てもらっていいの?実はいつか頼めたらって思ってたんだ」
「なんだ。言ってくれればいいのに。私たちもう友達、でしょ?」
「あっ、うん。助かる。それにこれすごく美味しいよ。父さんにも食べさせてやりたい。今度作り方教えてくんない?」
「ええ、いつでもいいよ」
「そっか、じゃあ、アリシアに作ってもらおっかな。私料理あんまり得意じゃないから」
「うん、いつでも作るよ」
「ありがとう。じゃあ、明日は休みだし、明日うちに来ない?」
「いいの?私ずっと憧れてたの。友達の家に遊びに行くの」
「良かったなアリシア。そうだ、俺が送ってやるから」
「えっ?」
「ノートンさん、心配ないよ。うちは騎士団の宿舎なんだから。それに待ち合わせて、私がちゃんと送り迎えするから安心して」
「そうか、じゃ、ルナ頼むぞ」
「もう、失礼よ。と、うさん」
アリシアは一瞬父さんと言う所で戸惑い言葉が詰まった。
「アリシア、私気にしてないから」
「そう?ごめん。じゃ、明日もこれ作るから」
「うん、楽しみにしてる」
ルナとのお出かけがアリシアはうれしかった。




