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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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63/66

それぞれの正義

◇ ◇ ◇



帝国。



第三騎士団本部。



早朝。



普段とは。



明らかに違う。



慌ただしさ。



騎士達が。



廊下を。



行き交っている。



武器。



防具。



兵糧。



軍馬。



次々と。



運び出されていく。



「第二陣!」



「正午に出るぞ!」



「物資を西門へ回せ!」



「魔術部隊への通達は!」



「既に完了しています!」



その様子を。



窓から。



黙って。



見つめる。



一人の。



女性。



エリス。



机の上。



一枚の。



命令書。



ミラーク王国。



そして。



そこに。



記されている。



少女の名。



ヒルメ。



「……。」



エリスの。



手が。



命令書を。



強く握る。



ドラゴンの墓場。



黒い外套。



黒い杭。



帝国の記録から。



消された。



情報。



そして。



ヒルメ。



調べれば。



調べるほど。



何かが。



おかしかった。



以前。



エリスは。



動こうとした。



ヒルメへ。



危険を。



知らせるために。



だが。



ガロンに。



止められた。



敵が。



誰なのか。



分からない。



目的すら。



分からない。



そんな状態で。



下手に動けば。



逆に。



ヒルメを。



危険へ。



晒しかねない。



その言葉を。



否定出来なかった。



だから。



待った。



だが。



今は。



違う。



帝国自身が。



動いた。



ヒルメのいる。



ミラークへ。



軍を。



向けた。



その上。



ヒルメを。



引き渡せと。



要求した。



「……。」



エリスが。



命令書を。



机へ。



置く。



そして。



振り返る。



「第三騎士団を。」



「全員。」



「集めろ。」



側にいた。



騎士が。



顔を。



上げる。



「全員ですか?」



「ああ。」



「訓練場へ。」



「すぐにだ。」



「はっ!」



◇ ◇ ◇



第三騎士団。



訓練場。



騎士達が。



ずらりと。



並んでいる。



アテナ。



フレイヤ。



そして。



第三騎士団。



全隊員。



その前。



エリス。



「全員。」



ざわめきが。



止まる。



「これから。」



「私は。」



「陛下のもとへ行く。」



隊員達が。



僅かに。



反応する。



フレイヤが。



首を。



傾げる。



「ミラークの件っすか?」



「ああ。」



「直接。」



「陛下に問う。」



アテナの。



表情が。



僅かに。



変わる。



「その前に。」



エリスが。



全員を。



見渡す。



「お前達へ。」



「命令しておく。」



空気が。



張り詰める。



「私が戻るまで。」



「第三騎士団は。」



「ここを動くな。」



「……。」



「何があってもだ。」



ざわっ。



隊員達が。



顔を。



見合わせる。



一人の。



騎士が。



口を開く。



「隊長。」



「何があっても。」



「ですか?」



「ああ。」



「他の騎士団から。」



「応援を求められても。」



「軍務局から。」



「出撃命令が来ても。」



「動くな。」



フレイヤが。



一歩。



前へ。



「待ってくださいっす。」



「それ。」



「陛下から。」



「直接命令が来ても?」



一拍。



「ああ。」



ざわっ。



明らかな。



動揺。



アテナが。



エリスを。



見つめる。



「隊長。」



「何をするつもりです。」



「話を。」



「しに行くだけだ。」



「それだけで。」



「この命令を?」



「アテナ。」



「はい。」



「お前なら。」



「分かるだろう。」



「……。」



アテナが。



黙る。



エリスは。



続ける。



「もう一つ。」



「私に。」



「何があっても。」



「追うな。」



「……!」



「助けにも。」



「来るな。」



「ミラークへも。」



「向かうな。」



フレイヤの。



顔が。



険しくなる。



「それは。」



「無理っすよ。」



「隊長に。」



「何かあったら――」



「フレイヤ。」



低い。



声。



「……。」



「命令だ。」



フレイヤが。



拳を。



握る。



「……了解っす。」



エリスが。



アテナを見る。



「私が。」



「いない間。」



「第三騎士団を。」



「頼む。」



「……承知しました。」



だが。



アテナの。



視線は。



エリスから。



離れない。



エリスが。



もう一度。



第三騎士団を。



見渡す。



長く。



共に。



戦ってきた。



部下達。



命を。



預け。



命を。



預けられた。



仲間達。



「……。」



ほんの。



僅かに。



表情が。



緩む。



「今まで。」



「よく。」



「ついてきてくれた。」



「……?」



フレイヤが。



眉を。



寄せる。



「隊長?」



アテナも。



僅かに。



目を。



見開く。



だが。



エリスは。



それ以上。



何も。



言わない。



「以上だ。」



踵を。



返す。



「待機していろ。」



『はっ!!』



第三騎士団。



全員が。



敬礼する。



エリスは。



振り返らない。



そのまま。



訓練場を。



後にした。



◇ ◇ ◇



第三騎士団本部。



廊下。



一人。



歩く。



エリス。



その先。



壁へ。



背を預け。



腕を組んでいる。



ガロン。



「話は。」



「終わったか。」



「ああ。」



「で。」



「どこへ行く。」



「陛下のところだ。」



「やめておけ。」



「退け。」



「嫌だ。」



「……ガロン。」



「何だ。」



「退け。」



「だから嫌だ。」



「……。」



二人が。



見つめ合う。



ガロンが。



先に。



口を開く。



「前に。」



「言ったはずだ。」



「下手に動けば。」



「ヒルメを。」



「危険に晒す。」



「分かっている。」



「なら。」



「大人しくしてろ。」



「前とは。」



「状況が違う。」



エリスが。



ガロンを。



真っ直ぐ。



見る。



「帝国が。」



「ヒルメのいる。」



「ミラークへ。」



「軍を向けた。」



「しかも。」



「ヒルメを。」



「引き渡せと。」



「要求した上でだ。」



「……。」



「もう。」



「黙って見ている。」



「つもりはない。」



「陛下に。」



「直接問う。」



「何故。」



「ヒルメを求める。」



「何故。」



「ミラークへ。」



「軍を向ける。」



ガロンが。



ため息を。



つく。



「答えが。」



「気に入らなかったら?」



「その時に。」



「考える。」



「嘘つけ。」



「……。」



「もう。」



「決めてる顔だ。」



エリスは。



答えない。



ガロンが。



頭を。



掻く。



「止めても。」



「行くんだな。」



「ああ。」



「命令しても?」



「行く。」



即答。



「……やれやれ。」



ガロンが。



道を。



開ける。



「好きにしろ。」



エリスが。



その横を。



通る。



数歩。



進む。



「エリス。」



足が。



止まる。



「死ぬなよ。」



「……。」



エリスが。



僅かに。



振り返る。



「ああ。」



そのまま。



歩いていく。



ガロンは。



その背中が。



見えなくなるまで。



黙って。



見送る。



「……ったく。」



頭を。



掻く。



「世話の。」



「焼ける奴だ。」



ガロンが。



踵を返す。



「さて。」



「こっちは。」



「こっちで。」



「動くか。」



◇ ◇ ◇



帝国王城。



謁見の間。



巨大な。



扉が。



開く。



「帝国第三騎士団隊長。」



「エリス・フォン・アルセリア。」



玉座。



皇帝。



その傍ら。



重臣達。



そして。



少し離れた場所。



黒い衣を。



纏った。



男。



「……。」



エリスの。



視線が。



一瞬。



その男へ。



向く。



嫌な。



気配。



どこか。



ドラゴンの墓場で。



感じたものを。



思わせる。



だが。



今は。



それよりも。



聞かなければ。



ならないことがある。



エリスが。



皇帝へ。



向き直る。



「何用だ。」



「陛下。」



片膝を。



つく。



「問いたいことがある。」



「申せ。」



「何故。」



「ミラークへ。」



「軍を向けた。」



謁見の間が。



静まる。



皇帝が。



僅かに。



眉を。



上げる。



「そのようなことか。」



「……そのようなこと?」



エリスが。



顔を。



上げる。



「既に。」



「多くの兵が。」



「国境へ。」



「向かっている。」



「戦になれば。」



「帝国の兵も。」



「ミラークの兵も。」



「多くが死ぬ。」



「民も。」



「巻き込まれる。」



「それを。」



「そのようなことと?」



皇帝が。



鼻で。



笑う。



「戦で。」



「兵が死ぬ。」



「当然だ。」



「兵とは。」



「国のために。」



「命を使うもの。」



「……。」



エリスの。



目が。



細くなる。



「では。」



「何故。」



「ヒルメを。」



「要求した。」



「何故。」



「あの少女を。」



「帝国へ。」



「引き渡せと?」



「必要だからだ。」



「何に。」



「貴様が。」



「知る必要はない。」



「ある。」



エリスが。



立ち上がる。



「私は。」



「第三騎士団隊長だ。」



「部下を。」



「戦場へ送る。」



「その命令が。」



「何のためなのか。」



「知る責任がある。」



「責任?」



皇帝が。



笑う。



「貴様の責任は。」



「余の命令に。」



「従うことだ。」



「騎士に。」



「考える必要などない。」



「余が。」



「進めと言えば。」



「進め。」



「殺せと言えば。」



「殺せ。」



「死ねと言えば。」



「死ねばよい。」



「それが。」



「帝国騎士だ。」



「……。」



エリスの。



拳が。



握られる。



「獣人族。」



「霊獣族まで。」



「巻き込んだのは。」



「何故だ。」



「戦力になる。」



「それだけだ。」



「彼らにも。」



「国がある。」



「民がいる。」



「それがどうした。」



皇帝が。



エリスを。



見下ろす。



「弱き国は。」



「強き国に。」



「従えばよい。」



「弱き種族は。」



「強き者のために。」



「使われればよい。」



「それが。」



「世界の道理だ。」



「……。」



「ミラークも。」



「同じ。」



「余に従えば。」



「生かす。」



「逆らえば。」



「滅ぼす。」



「ただ。」



「それだけだ。」



エリスが。



皇帝を。



見据える。



「では。」



「ミラークが。」



「ヒルメを。」



「差し出せば。」



「軍を退くのか。」



皇帝が。



笑った。



「何を言う。」



「既に。」



「あれだけの軍を。」



「動かしたのだぞ。」



「ミラークほどの。」



「豊かな国を。」



「目の前にして。」



「帰る理由が。」



「どこにある。」



「……。」



エリスの。



表情が。



消える。



「そうか。」



「ああ。」



「ミラークを落とす。」



「ヒルメも。」



「手に入れる。」



「そして。」



「次は。」



「魔国だ。」



「……。」



「魔族共は。」



「余の誘いを。」



「断った。」



「ならば。」



「力で。」



「従わせればよい。」



「その後は。」



「ドワーフも。」



「獣人も。」



「霊獣も。」



「全て。」



「帝国の下へ。」



「置く。」



皇帝が。



両腕を。



広げる。



「この大陸に。」



「国など。」



「一つでよい。」



「帝国だけで。」



「よいのだ。」



「……。」



長い。



沈黙。



皇帝が。



続ける。



「エリス。」



「第三騎士団を。」



「率いろ。」



「ミラークへ。」



「向かえ。」



「余に。」



「逆らう者を。」



「皆殺しにせよ。」



「ヒルメだけは。」



「生かして。」



「連れてこい。」



「皇帝命令だ。」



「……。」



エリスは。



動かない。



「どうした。」



「返事をせぬか。」



「……違う。」



「何?」



エリスが。



皇帝を。



真っ直ぐ。



見る。



「私は。」



「そのために。」



「騎士になったのではない。」



「民を守るため。」



「仲間を守るため。」



「弱き者の。」



「盾となるため。」



「私は。」



「剣を握った。」



「くだらん。」



皇帝が。



吐き捨てる。



「正義など。」



「勝者が。」



「決めるものだ。」



「……。」



エリスが。



静かに。



首を。



横へ振る。



「ならば。」



「私は。」



「貴方には。」



「従えない。」



一拍。



「私の中の。」



「正義が。」



「それを。」



「許さない。」



静寂。



皇帝の。



表情が。



変わる。



エリスが。



胸元へ。



手を。



伸ばす。



第三騎士団。



隊長の。



徽章。



それを。



外す。



コトン。



床へ。



置く。



そして。



腰へ。



手を。



伸ばす。



一振りの。



剣。



第三騎士団隊長へ。



任命された。



あの日。



皇帝より。



下賜された。



剣。



幾度もの。



戦場で。



振るってきた。



帝国騎士。



そして。



第三騎士団隊長としての。



証。



エリスが。



鞘ごと。



腰から。



外す。



一歩。



前へ。



カチャ。



徽章の。



隣へ。



置く。



「……何の真似だ。」



皇帝の。



声が。



低くなる。



エリスが。



床の。



剣を見る。



「この剣は。」



「帝国を。」



「民を守るために。」



「賜ったものだ。」



「侵略のために。」



「振るう剣ではない。」



「貴様……。」



エリスが。



皇帝を見る。



「第三騎士団隊長の。」



「任を返す。」



「この剣も。」



「返す。」



「……。」



「本日をもって。」



「帝国騎士団を。」



「抜ける。」



皇帝が。



ゆっくりと。



立ち上がる。



「余が。」



「許すと思うか?」



「許可を。」



「求めてはいない。」



「……!」



「私は。」



「もう。」



「貴方には従わない。」



「それだけだ。」



「エリス!!」



皇帝の。



怒声。



「反逆だぞ!!」



「好きに呼べ。」



エリスが。



背を。



向ける。



「捕らえろ!!」



騎士達が。



一斉に。



エリスを。



囲む。



剣。



槍。



その全てが。



向けられる。



エリスは。



丸腰。



「抵抗するな!」



一人の。



騎士が。



腕を。



伸ばす。



その瞬間。



グッ。



「なっ――」



エリスが。



腕を取り。



体勢を。



崩す。



ドンッ!!



「ぐあっ!」



床へ。



叩きつける。



別の。



騎士が。



剣を。



振る。



エリスが。



半歩。



横へ。



躱す。



手首を。



掴む。



捻る。



カランッ。



剣が。



床へ。



落ちる。



エリスが。



拾う。



「借りるぞ。」



「囲め!!」



ガギィィィン!!



「ぐあっ!」



一人。



ドンッ!!



「がっ!」



二人。



ガンッ!!



「ぐはっ!」



三人。



斬らない。



殺さない。



だが。



誰一人。



エリスを。



止められない。



「西回廊を封鎖しろ!」



「魔術師部隊を呼べ!」



「それが!」



「何だ!」



「魔術師部隊は。」



「北区画へ。」



「移動しています!」



「何!?」



「誰の命令だ!」



「軍務局です!」



◇ ◇ ◇



軍務局。



ガロン。



机の前。



「第三警備隊。」



「東門への移動。」



「完了しました。」



「ああ。」



「西回廊の。」



「魔術師部隊も。」



「北区画へ。」



「向かわせています。」



「そうか。」



ガロンが。



書類へ。



判を。



押す。



部下が。



首を。



傾げる。



「ですが。」



「何だ。」



「この配置変更。」



「今でなければ。」



「ならないのですか?」



ガロンが。



顔を。



上げる。



「何か。」



「問題でもあるか。」



「い、いえ。」



「なら。」



「さっさと行け。」



「はっ!」



部下が。



出ていく。



扉が。



閉じる。



「……。」



ガロンが。



配置図へ。



目を。



落とす。



「俺は。」



「何も知らん。」



一枚。



書類を。



手に取る。



「偶然。」



「東門に。」



「兵が集まった。」



判。



「偶然。」



「西門の。」



「警備が薄い。」



判。



「偶然。」



「伝令が。」



「少し。」



「遅れただけだ。」



ガロンが。



鼻で。



笑う。



「だから。」



「さっさと行け。」



「エリス。」



◇ ◇ ◇



帝都。



西門。



「いたぞ!!」



「エリスだ!!」



「門を閉じろ!!」



一頭の。



軍馬。



その背。



エリス。



腰には。



王城で。



奪った。



剣。



「はっ!」



ドドドドドドッ!!



巨大な。



門が。



閉じ始める。



「急げ!」



「反逆者を逃がすな!!」



エリスが。



馬を。



加速させる。



ズズズズズズッ!!



残り。



僅か。



「閉じろ!!」



ドドドドドドドドッ!!



一気に。



門を。



駆け抜ける。



ドォォォン!!



直後。



巨大な。



門が。



閉じた。



「……。」



エリスが。



一度だけ。



振り返る。



帝都。



生まれ。



育ち。



騎士となり。



守ってきた。



国。



胸には。



もう。



第三騎士団の。



徽章はない。



「……さらばだ。」



エリスが。



前を。



向く。



「ヒルメ。」



馬が。



走り出す。



「今度は。」



「私が。」



「助ける番だ。」



◇ ◇ ◇



帝国領。



街道。



ドドドドドドドドッ!!



エリス。



その後方。



複数の。



騎馬。



さらに。



魔術師達。



「いたぞ!」



「エリス確認!」



「逃がすな!」



「陛下より。」



「反逆者を。」



「捕らえよとの。」



「命令だ!」



エリスが。



振り返る。



杖が。



一斉に。



向けられる。



「放て!!」



ゴォォォォォッ!!



炎。



雷。



風。



無数の。



魔法。



エリスへ。



迫る。



エリスが。



馬から。



飛び降りる。



剣を。



抜く。



「風よ。」



横薙ぎ。



ズバァァァァァン!!



魔法が。



まとめて。



切り裂かれる。



ドドドドドドォォォン!!



爆発。



煙。



「やったか!?」



「馬鹿!」



「相手はエリスだぞ!」



煙の中。



一人。



立つ。



エリス。



「最後に。」



「一度だけ。」



剣を。



下げたまま。



追手を見る。



「退け。」



「出来ない!」



「我々も。」



「皇帝陛下の。」



「命を受けている!」



「……そうか。」



エリスが。



剣を。



構える。



「なら。」



「来い。」



ドンッ!!



姿が。



消える。



「なっ――」



ドガァァァン!!



「ぐあっ!」



ガンッ!!



「がっ!」



「囲め!」



「後衛!」



「距離を取れ!」



「遅い。」



ズバァァァァン!!



爆風。



騎士達が。



まとめて。



吹き飛ぶ。



一人。



また。



一人。



倒れていく。



やがて。



立っている者は。



エリスだけ。



「……。」



剣を。



鞘へ。



収める。



「死者は。」



「いない。」



倒れた。



騎士達を見る。



「これ以上。」



「追うな。」



「次も。」



「手加減出来るとは。」



「限らん。」



馬へ。



乗る。



誰も。



動けない。



エリスが。



再び。



走り出す。



向かう先。



ミラーク王国。



◇ ◇ ◇



第三騎士団本部。



「……は?」



フレイヤが。



固まっていた。



アテナも。



無言。



第三騎士団。



全員。



その前。



一人の。



伝令。



「もう一回。」



フレイヤが。



伝令を見る。



「言ってくださいっす。」



伝令が。



息を。



飲む。



「エリス隊長は。」



「皇帝陛下へ。」



「第三騎士団隊長の。」



「徽章と。」



「下賜された剣を。」



「返上。」



「帝国騎士団を。」



「脱退されました。」



「……。」



「現在。」



「反逆者として。」



「追跡命令が。」



「出ています。」



「……。」



数秒。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



フレイヤの。



叫び。



「何すかそれ!!」



「隊長が!?」



「一人で!?」



「反逆者ぁ!?」



ドンッ!!



机を。



叩く。



「ふざけんなっす!!」



「追うっす!」



「今すぐ。」



「隊長を――」



「駄目です。」



アテナ。



「は!?」



アテナが。



拳を。



強く。



握る。



「隊長命令です。」



「何があっても。」



「動くな。」



「隊長を。」



「追うな。」



「助けにも。」



「行くな。」



「ミラークへも。」



「向かうな。」



「……。」



フレイヤが。



言葉を。



失う。



脳裏。



浮かぶ。



出ていく。



直前。



エリスが。



言った。



言葉。



『今まで。』



『よく。』



『ついてきてくれた。』



「……。」



フレイヤが。



俯く。



「何すか。」



「あれ……。」



「別れのつもりだったんすか……。」



アテナは。



何も。



答えない。



ただ。



空になった。



隊長席を。



見つめている。



◇ ◇ ◇



遥か西。



世界樹。



その麓。



エルフの里。



一人の。



エルフが。



帰還していた。



◇ ◇ ◇



長の館。



「……戻ったか。」



長。



その前。



アリアナ。



腰には。



一振りの。



剣。



世界樹の迷宮。



最奥。



その試練を。



乗り越えた者に。



授けられた。



神器。



「ああ。」



「迷宮は。」



「どうだった。」



「最奥まで。」



「辿り着いた。」



長の。



目が。



僅かに。



見開かれる。



「最奥まで?」



「ああ。」



「試練も。」



「越えた。」



アリアナが。



腰の。



神器を。



外す。



「そして。」



「これを。」



「授かった。」



「……!」



長の。



表情が。



変わる。



立ち上がる。



一歩。



また。



一歩。



神器へ。



近付く。



「これは……。」



「知っているのか?」



「ああ。」



長が。



神器を。



見つめる。



「実物を。」



「見るのは。」



「私も初めてだ。」



「だが。」



「間違いない。」



「遥か昔より。」



「エルフに。」



「伝わる武器だ。」



「世界樹の。」



「試練を越えた者が。」



「手にするとされる。」



「古の神器。」



「……。」



アリアナが。



自分の。



剣を見る。



「何のための。」



「武器なんだ。」



長が。



答える。



「エルフを。」



「守る力だ。」



「……。」



「里を守り。」



「同胞を守り。」



「我らエルフを。」



「災厄から。」



「救うための。」



「力。」



「そのために。」



「古くから。」



「伝えられてきた。」



長が。



アリアナを見る。



「世界樹は。」



「お前を。」



「選んだ。」



「その力を。」



「エルフのために。」



「使え。」



「……。」



アリアナが。



神器を。



見つめる。



迷宮で。



受けた。



試練。



エリス。



アテナ。



フレイヤ。



そして。



ヒルメ。



フェネクス。



シロ。



記憶の中から。



現れた。



仲間達。



彼らとの。



戦い。



そして。



最後に。



ヒルメ達と。



戦ったことで。



改めて。



分かった。



自分が。



何を。



守りたいのか。



「……違う。」



「何?」



アリアナが。



神器を。



握る。



「これは。」



「エルフだけを。」



「守るための。」



「力じゃない。」



長の。



眉が。



動く。



「何を。」



「言っている。」



「私には。」



「守りたい奴がいる。」



「仲間がいる。」



「友がいる。」



「大事な人がいる。」



「……。」



アリアナが。



神器を見る。



「これは。」



「そいつらを。」



「守るための。」



「力だ。」



長が。



黙る。



やがて。



静かに。



口を開く。



「仲間。」



「友。」



「大事な者。」



「ああ。」



「それは。」



「エルフか?」



「エルフもいる。」



「……。」



長の。



目が。



細くなる。



「他種族も。」



「いるのか。」



「ああ。」



一拍。



「人間も?」



アリアナは。



迷わない。



「ああ。」



「いる。」



「……。」



「人間を。」



「仲間と。」



「呼ぶのか。」



「呼ぶ。」



即答。



「友とも。」



「呼ぶ。」



長が。



じっと。



アリアナを見る。



「人間だろうが。」



「エルフだろうが。」



「関係ない。」



「私を。」



「助けてくれた。」



「共に。」



「戦った。」



「笑った。」



「飯も食った。」



「命を。」



「預けた。」



アリアナが。



真っ直ぐ。



長を見る。



「種族が。」



「違うだけだ。」



「私にとっては。」



「大事な。」



「仲間だ。」



「……。」



長が。



しばらく。



何も。



言わない。



「随分と。」



「変わったな。」



「そうか?」



「以前のお前なら。」



「人間を。」



「仲間と呼ぶことなど。」



「なかった。」



アリアナが。



僅かに。



笑う。



「色々。」



「あったからな。」



「……。」



長が。



再び。



神器を見る。



「だが。」



「忘れるな。」



「その武器は。」



「エルフに。」



「古くから。」



「伝わるもの。」



「お前が。」



「誰のために。」



「振るうとしても。」



「まずは。」



「我らエルフを――」



ピクッ。



アリアナの。



長い耳が。



動く。



「……。」



「どうした。」



「待て。」



アリアナが。



懐へ。



手を。



伸ばす。



一枚の。



木札。



エルフ文字が。



刻まれた。



木札。



淡く。



光る。



一度。



消える。



再び。



光る。



「……。」



アリアナの。



表情が。



変わる。



「その木札は。」



長。



「以前。」



「一人に。」



「渡した。」



「誰に。」



また。



光る。



アリアナの。



目が。



見開かれる。



「……ヒルメ。」



「人間か?」



「ああ。」



木札が。



再び。



反応する。



先ほどより。



強く。



「……。」



アリアナが。



神器を。



腰へ。



戻す。



「どこへ行く。」



「ミラークだ。」



即答。



「待て。」



長が。



立ち上がる。



「まだ。」



「話は。」



「終わっていない。」



「悪い。」



アリアナは。



もう。



扉へ。



向かっている。



「続きは。」



「帰ってからだ。」



「アリアナ。」



「そのヒルメという者に。」



「何かあったのか。」



「分からない。」



アリアナが。



木札を。



見る。



「だが。」



「こいつが。」



「反応している。」



「いつもと。」



「違う。」



一拍。



「なら。」



「行く。」



「待て!」



アリアナが。



扉を。



開く。



「一人で。」



「人間の国へ。」



「向かうつもりか!」



足が。



止まる。



アリアナが。



僅かに。



振り返る。



「一人じゃない。」



「……何?」



「ヒルメには。」



「仲間が。」



「たくさんいる。」



そして。



少し。



笑う。



「私も。」



「その一人だ。」



そのまま。



館を。



飛び出した。



◇ ◇ ◇



エルフの里。



「アリアナ?」



「どうした!」



「今戻ったばかりだろ!」



里の。



エルフ達が。



振り返る。



だが。



アリアナは。



止まらない。



腰には。



世界樹から。



授かった。



神器。



手には。



エルフ文字が。



刻まれた。



木札。



「悪い!」



「急いでる!」



そのまま。



里を。



駆け抜ける。



木々の間。



風を。



切る。



枝を。



蹴り。



さらに。



前へ。



「……ヒルメ。」



木札が。



また。



淡く。



光る。



アリアナが。



握り締める。



「分かってる。」



「今。」



「行くからな。」



森の。



出口。



視界が。



開ける。



遥か。



その先。



ミラーク王国。



アリアナが。



神器の。



柄へ。



手を。



置く。



長の。



言葉が。



頭を。



過る。



『エルフを。』



『守る力だ。』



「……。」



アリアナが。



前を。



見る。



「仲間を。」



「守る力だ。」



地を。



蹴る。



アリアナが。



森を。



飛び出す。



「待ってろ。」



「ヒルメ。」



向かう先。



ミラーク王国。



◇ ◇ ◇

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