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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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61/66

帝国の野望

◇ ◇ ◇



「我が。」



「偉大なる。」



「帝国の民よ――。」



皇帝の。



声が。



帝都へ。



響き渡る。



数万の。



民衆。



誰一人。



声を。



発さない。



ただ。



皇帝を。



見上げている。



「今日。」



「諸君らを。」


「ここへ。」


「集めたのは。」



「我ら帝国が。」



「新たなる。」


「時代へ。」


「進むことを。」



「告げるためだ。」



「……。」



静寂。



皇帝が。



ゆっくりと。



広場を。



見渡す。



「諸君。」



「この大陸で。」


「最も。」


「豊かな国は。」


「どこだ?」



一瞬。



間。



『帝国!!』



数万の。



声。



「最も。」


「強き国は?」



『帝国!!』



「最も。」


「優れた民は?」



『我ら帝国民!!』



皇帝の。



口元が。



吊り上がる。



「そうだ。」



「我らだ。」



「ならば。」



皇帝が。



両腕を。



広げる。



「何故。」



「我らより。」


「劣る者どもが。」



「国を。」


「名乗っている?」



「……。」



「何故。」



「我らより。」


「劣る者どもが。」



「土地を持ち。」



「富を持ち。」



「王を名乗ることを。」



「我々が。」


「認めねばならぬ?」



ざわっ。



民衆の。



空気が。



変わる。



『そうだ……。』



『おかしい……。』



『なぜ俺たちが……。』



皇帝が。



笑う。



「ミラーク。」



その名に。



民衆が。



反応する。



「豊かな。」


「土地。」



「優れた。」


「魔術師。」



「大量の。」


「資源。」



「それらを。」


「奴らは。」


「我が物顔で。」


「独占している。」



『許せない!』



一人が。



叫ぶ。



すると。



『そうだ!!』



『帝国のものだ!!』



『ミラークに渡すな!!』



声。



増えていく。



皇帝は。



それを。



満足そうに。



眺める。



「そして。」



「ミラークには。」



「もう一つ。」



「我ら帝国が。」


「手に入れねばならぬものが。」


「ある。」



皇帝の。



目。



細くなる。



「ヒルメ。」



◇ ◇ ◇



その名を。



知る者は。



少ない。



民衆が。



ざわつく。



「一人の。」


「少女だ。」



「だが。」



「その少女は。」



「我が帝国の。」


「未来を。」


「大きく。」


「変える力を。」


「持っている。」



「その力を。」



「ミラークは。」


「独占している。」



『……。』



「本来ならば。」



「大陸全土のために。」


「使われるべき。」


「その力をだ。」



皇帝が。



拳を。



握る。



「我々は。」


「求めた。」



「その少女を。」


「帝国へ。」


「引き渡すように。」



「だが。」



「ミラークは。」


「それを。」


「拒もうとしている。」



まだ。



要求すら。



正式には。



届いていない。



それでも。



皇帝は。



断言した。



「何故だ?」



「何故。」



「ミラークは。」


「拒む?」



「答えは。」


「一つだ。」



「奴らは。」



「恐れているのだ。」



「帝国が。」


「さらに。」


「豊かに。」



「さらに。」


「強くなることを!」



『卑怯者!!』



『ミラークを許すな!!』



『ヒルメを帝国へ!!』



歓声。



怒号。



罵声。



それらが。



入り混じる。



誰一人。



ヒルメを。



知らない。



誰一人。



ミラークへ。



行ったことすら。



ない。



それでも。



憎む。



当然のように。



◇ ◇ ◇



城。



最上部。



赤黒い。



宝玉。



ドクン。



脈打つ。



魔力。



帝都全体へ。



広がる。



見えない。



触れない。



感じない。



ただ。



少しずつ。



心へ。



入り込む。



疑問を。



薄れさせる。



忠誠を。



強める。



優越感を。



膨らませる。



そして。



敵意を。



増幅する。



だが。



民衆は。



知らない。



自分たちは。



自分の意思で。



皇帝を。



支持している。



自分の意思で。



他国を。



憎んでいる。



そう。



信じている。



皇帝自身も。



それを。



疑わない。



「我が民よ!」



皇帝が。



叫ぶ。



「我々は。」



「奪うのではない!」



「取り戻すのだ!」



「本来。」



「我々のもので。」


「あるべきものを!」



ウォォォォォォォォォッ!!!



「帝国万歳!!」



「皇帝陛下万歳!!」



「ミラークを潰せ!!」



「ヒルメを帝国へ!!」



「帝国万歳!!」



子供まで。



拳を。



上げる。



『帝国万歳!!』



皇帝が。



笑う。



満足そうに。



笑う。



◇ ◇ ◇



演説。



終了。



皇帝が。



城内へ。



戻る。



扉が。



閉じる。



それでも。



外から。



歓声が。



聞こえる。



「素晴らしい。」



黒い。



ローブの。



人影。



「民は。」


「完全に。」


「陛下を。」


「支持しております。」



「当然だ。」



皇帝が。



玉座へ。



座る。



「帝国の民ならば。」



「誰が。」


「正しいのか。」



「理解できて。」


「当然だ。」



「……。」



人影が。



僅かに。



笑う。



「それで。」



皇帝。



「各地からの。」


「返答は?」



側近が。



前へ。



出る。



「はっ。」



「まず。」



「霊獣王より。」


「正式な。」


「返答が。」



「帝国との。」


「協力を。」


「受け入れるとのことです。」



「ほう。」



「ただし。」



「条件として。」



「王妃。」



「そして。」


「娘である。」


「フェネクス様の。」


「捜索への協力を。」


「求めております。」



「……。」



皇帝が。



鼻で。



笑う。



「くだらんな。」



「妻と。」


「娘か。」



「王を。」


「名乗る者が。」



「その程度のことで。」


「我らへ。」


「頭を下げたか。」



「いかが。」


「いたしましょう。」



「好きにさせろ。」



「探すだけならば。」


「勝手に。」


「探させればよい。」



「兵が。」


「必要だと言うなら。」


「少しくらい。」


「貸してやれ。」



「はっ。」



「霊獣どもには。」



「前線で。」


「存分に。」


「働いてもらう。」



「……。」



「死ぬならば。」



「それも。」


「構わん。」



「兵を。」


「減らさずに。」


「済むからな。」



◇ ◇ ◇



「獣人側は?」



「一部の。」


「有力部族が。」


「協力を。」


「表明しております。」



「人族国家への。」


「長年の。」


「不満を。」


「持っていた者が。」


「多かったようで。」



「ふっ。」



皇帝が。



笑う。



「獣とは。」


「扱いやすい。」



「少し。」


「餌を。」


「見せてやれば。」



「勝手に。」


「尻尾を振る。」



「彼らには。」



「戦後。」



「領地と。」


「自治権を。」


「認めると。」


「約束しております。」



「……約束?」



皇帝が。



側近を見る。



「はっ。」



「……。」



「それが。」



「どうした?」



「……いえ。」



皇帝が。



肘掛けへ。



頬杖を。



つく。



「ミラークが。」


「落ちた後まで。」



「獣どもとの。」


「約束を。」


「守る必要が。」


「あるのか?」



「……。」



側近が。



黙る。



「使える間は。」


「使う。」



「役目を。」


「終えれば。」



「処分すればよい。」



あまりにも。



当然のように。



皇帝は。



言った。



◇ ◇ ◇



「ドワーフは。」



「武具。」



「魔道具。」



「その他。」


「軍需物資の。」


「供給には。」


「応じるとの。」


「返答です。」



「ただし。」



「職人の。」


「帝国への。」


「移住については。」


「拒否しております。」



「構わん。」



皇帝。



即答。



「……よろしいので?」



「今はな。」



「……。」



「国を。」


「手に入れれば。」



「職人も。」



「工房も。」



「技術も。」



「全て。」


「我々のものだ。」



「わざわざ。」


「今。」


「揉める必要はない。」



「……御意。」



「そして。」



側近が。



少し。



言いにくそうに。



口を。



開く。



「魔国ですが……。」



皇帝の。



目が。



側近へ。



向く。



「我が帝国との。」


「同盟を。」


「正式に。」


「拒絶しました。」



「……。」



「我らは。」


「人族同士の。」


「争いへ。」


「介入するつもりはない。」



「帝国の。」


「大陸統一にも。」


「興味はない。」



「……とのことです。」



「そうか。」



皇帝は。



怒らない。



ただ。



笑った。



「では。」



「ミラークの。」


「次だ。」



「……!」



側近が。



顔を。



上げる。



「魔国へも。」


「侵攻を?」



「何を。」


「驚いている。」



皇帝が。



不思議そうに。



見る。



「我に。」


「従わぬのだろう?」



「ならば。」



「敵ではないか。」



「……。」



「ミラークを。」


「落とす。」



「魔国を。」


「落とす。」



「ドワーフの。」


「土地を。」


「接収する。」



「そして。」



「役目を終えた。」


「獣どもを。」


「始末する。」



皇帝が。



立ち上がる。



壁。



巨大な。



大陸地図。



その前へ。



歩く。



「国が。」


「多すぎるのだ。」



「王が。」


「多すぎる。」



「種族が。」


「勝手に。」


「己の領地などと。」


「主張する。」



「実に。」


「煩わしい。」



地図へ。



手を。



触れる。



「一つで。」


「よい。」



「国は。」


「帝国だけで。」



「よいのだ。」



◇ ◇ ◇



黒い。



ローブの。



人影が。



その背中を。



見ている。



「素晴らしい。」



「まさしく。」



「陛下こそ。」



「大陸を。」


「統べるに。」


「相応しいお方。」



「ふっ。」



皇帝が。



笑う。



「分かっているではないか。」



「もちろんです。」



人影が。



深く。



頭を。



下げる。



皇帝からは。



見えない。



その。



口元。



ゆっくりと。



歪む。



「……。」



皇帝は。



知らない。



自分が。



利用していると。



思っている。



霊獣も。



獣人も。



ドワーフも。



そして。



自国の。



民すらも。



全て。



自分の。



駒。



そう。



信じている。



だが。



その。



玉座の。



すぐ後ろ。



皇帝自身を。



盤上の。



駒として。



見ている存在が。



いることを。



皇帝だけが。



知らない。



◇ ◇ ◇



「では。」



皇帝が。



玉座へ。



戻る。



「始めると。」


「しよう。」



「まずは。」



「ミラークへ。」


「使者を。」



「はっ。」



「要求は。」


「一つ。」



皇帝の。



口元が。



吊り上がる。



「ヒルメを。」



「帝国へ。」


「引き渡せ。」



「期限は?」



「三日。」



「短すぎるのでは?」



「構わん。」



「どうせ。」



「答えは。」


「決まっている。」



「……。」



側近が。



僅かに。



顔を。



上げる。



「もし。」



「ミラークが。」


「要求を。」


「受け入れた場合は?」



「……?」



皇帝が。



首を。



傾げる。



まるで。



意味の。



分からない。



質問を。



されたように。



「ヒルメを。」


「手に入れる。」



「そして。」



「ミラークも。」


「潰す。」



「……!」



「何故。」



「どちらかを。」


「選ばねばならん?」



皇帝が。



笑う。



「全て。」



「手に入れれば。」


「よいではないか。」



◇ ◇ ◇



その日の。



夕刻。



一頭の。



軍馬が。



帝都を。



出た。



向かう先。



ミラーク王国。



携える。



書状。



それは。



交渉などでは。



ない。



最初から。



答えを。



求めてすら。



いない。



帝国が。



戦争を。



始めるための。



ただの。



口実。



そして。



その頃。



ミラークでは。



「ヒルメ!」



「こっち。」



「こっち!」



「待ってください。」


「ミアさん。」



「早くしないと。」


「お店。」


「閉まっちゃうよ!」



「ヒルメ様。」



「お手を。」



「普通に。」


「歩けますよ?」



「念のためです。」



「何の。」


「念のためですか。」



「……。」



「また。」


「その間ですか。」



笑い声。



ヒルメ。



ミア。



リナ。



アリシア。



セレスティア。



アルベルト。



そして。



シロ。



誰も。



まだ。



知らない。



自分たちの。



穏やかな。



日々を。



壊そうとする。



一通の。



書状が。



こちらへ。



向かっていることを。



◇ ◇ ◇

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