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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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60/66

嵐の前

◇ ◇ ◇



ミラーク王立魔法学院。



その一角。



本来。



この学院には。



存在しなかった。



教室。



貴族。



平民。



身分。



家柄。



その全てを。



問わない。



必要なのは。



ただ。



実力。



そして。



才能。



それだけ。



――特別クラス。



もっとも。



その設立に。



誰よりも。



熱心だった人物には。



別の目的も。



あったのだが。



「ヒルメ様!」



「今日も。」



「私のお隣です!」



「え?」



ヒルメが。



席へ。



着こうとした。



その瞬間。



アリシアが。



当然のように。



隣の椅子を。



引いた。



「こちらへ!」



「は、はい……。」



ヒルメが。



座る。



満足そうに。



アリシアも。



その隣へ。



座る。



「……。」



その様子を。



ミアが。



じっと。



見ていた。



「……アリシア様。」



「はい?」



「前から。」



「聞こうと。」


「思ってたんですけど。」



「何でしょう?」



「この。」


「特別クラスって。」



「本当に。」


「身分に関係なく。」


「優秀な生徒を。」


「集めるために。」


「作ったんですよね?」



「もちろんです。」



即答。



「……。」



ミアが。



アリシアを見る。



アリシアも。



笑顔で。



ミアを見る。



「……。」



「……。」



「じゃあ。」



ミアが。



ヒルメを見る。



そして。



もう一度。



アリシアを見る。



「ヒルメと。」


「一緒のクラスに。」


「なりたかっただけじゃ。」


「ないですよね?」



「………………。」



長い。



間。



「……。」



ミアの。



眉が。



上がる。



「その間は。」


「何ですか。」



「うふふ。」



「否定してくださいよ!」



「もちろん。」



「それだけでは。」


「ありませんよ?」



「それだけでは!?」



リナが。



吹き出す。



「やっぱり。」


「入ってるじゃないですか!」



「当然です。」



アリシアが。



胸を。



張る。



「ヒルメ様と。」


「同じ教室で。」


「共に学べる。」



「これ以上の。」


「利点が。」


「ありますか?」



「目的と利点が。」


「逆なんですよ!」



「?」



「なんで。」


「不思議そうな顔。」


「するんですか!」



「ふふっ……。」



ヒルメが。



小さく。



笑う。



「ヒルメ様!?」



「ご、ごめんなさい。」



「でも。」


「なんだか。」


「楽しくて……。」



「……!」



アリシアが。



固まる。



そして。



ゆっくり。



ミアを見る。



「ミアさん。」



「はい?」



「今の。」


「聞きました?」



「聞きましたけど。」



「ヒルメ様が。」


「楽しいと。」



「言ってくださいました。」



「はい。」



「つまり。」



「この特別クラスを。」


「作った私の判断は。」


「完全に。」


「正しかったということです。」



「そういう。」


「話でしたっけ?」



◇ ◇ ◇



「……。」



少し。



離れた席。



アルベルトが。



その光景を。



眺めていた。



「……本当に。」


「戻ってきて。」


「よかったのだろうか。」



ぽつり。



呟く。



その足元。



「……。」



シロが。



アルベルトを。



見ていた。



「っ!?」



ビクッ!



アルベルトの。



身体が。



跳ねる。



「シ、シロ……。」



「……。」



じー。



「……。」



じー。



「その……。」



アルベルトが。



視線を。



逸らす。



そして。



また。



シロを見る。



「先日の件は。」



「本当に。」


「申し訳なかった。」



「……。」



「私が。」


「どうかしていた。」



「何の罪もない。」


「お前を。」


「蹴るなど……。」



アルベルトが。



頭を。



下げる。



「許してくれとは。」


「言わない。」



「だが。」



「謝らせてほしい。」



「本当に。」


「すまなかった。」



「……。」



シロが。



アルベルトへ。



近付く。



「……っ。」



アルベルトが。



身構える。



シロ。



目の前。



「……。」



くん。



くん。



匂いを。



嗅ぐ。



そして。



ぷいっ。



顔を。



背ける。



ヒルメの。



ところへ。



歩いていく。



「……。」



アルベルトが。



その背中を。



見送る。



「これは……。」



「許されたのか?」



「たぶん。」



セレスティア。



「たぶん!?」



「噛まれなかったし。」



「基準が。」


「恐ろしすぎないか!?」



「アルベルトさん。」



リナが。



笑う。



「大丈夫ですよ。」



「シロちゃん。」


「本当に嫌だったら。」


「もっと。」


「分かりやすいですから。」



「……そうなのか。」



「はい。」



アルベルトが。



少しだけ。



安心する。



その瞬間。



シロが。



振り返る。



「っ!」



また。



固まる。



「……。」



シロ。



じー。



「……。」



アルベルト。



じー。



「……やはり。」


「まだ。」


「怖いのだが。」



「自業自得。」



セレスティアが。



即答した。



「ぐっ……。」



「反論できん。」



◇ ◇ ◇



授業。



今日の。



課題は。



魔力操作。



標的へ。



魔法を。



当てる。



ただし。



威力ではなく。



指定された。



場所へ。



正確に。



魔力を。



集中させる。



訓練。



「難しい……。」



リナが。



杖を。



睨む。



標的。



中心から。



少し。



右。



「また。」


「ずれた。」



「力を。」


「入れすぎだ。」



「え?」



声。



アルベルト。



「魔力を。」


「押し出そうと。」


「しすぎている。」



「でも。」


「弱くしたら。」


「届かなくないですか?」



「弱くするのではない。」



アルベルトが。



自分の。



杖を。



構える。



「流れを。」


「細くする。」



「流れ?」



「ああ。」



「大量の水を。」


「一気に。」


「流すのではなく。」



「細い管へ。」


「通すように。」


「意識する。」



「……。」



アルベルトの。



杖先。



魔力。



集まる。



派手さは。



ない。



「見ていろ。」



シュン!



魔力。



一直線。



標的。



中心。



小さな。



穴。



「おお……。」



リナが。



目を。



丸くする。



「すごい。」



「やってみろ。」



「はい!」



リナが。



杖を。



構える。



「細い管……。」



「そうだ。」



「無理に。」


「威力を。」


「出そうとするな。」



「魔力そのものは。」


「十分にある。」



「……。」



集中。



シュッ!



標的。



中心から。



僅かに。



左。



「……!」



リナが。



目を。



輝かせる。



「さっきより。」


「全然。」


「近い!」



「ああ。」



「今の感覚を。」


「忘れるな。」



「はい!」



「……。」



ミアが。



それを。



見ている。



「アルベルトさん。」



「なんだ。」



「教えるの。」


「上手いですね。」



「……そうか?」



「はい。」



「もっと。」


「俺を見て覚えろ。」


「みたいな人かと。」


「思ってました。」



「お前は。」


「私を。」


「何だと思っているんだ。」



「アルベルトさん。」



「そのままじゃないか!」



「ふふっ。」



ヒルメが。



笑う。



「……。」



アルベルトが。



ヒルメを見る。



「……っ。」



目が。



合う。



即座に。



背筋。



伸びる。



「ど、どうした。」



「いえ。」



ヒルメが。



微笑む。



「アルベルトさんって。」


「本当に。」


「魔法が。」


「お上手なんですね。」



「……。」



アルベルト。



固まる。



「ヒルメ様?」



アリシアの。



声。



「はい?」



「アルベルトさんを。」


「そんなに。」


「褒める必要は。」


「ありませんよ?」



「なぜだ!?」



「調子に。」


「乗るかもしれませんので。」



「乗らん!」



「本当ですか?」



「……。」



アルベルトが。



少し。



考える。



「……多少は。」


「嬉しいが。」



「ほら。」



「嬉しいくらい。」


「いいだろう!」



◇ ◇ ◇



その日の。



放課後。



ヒルメ達は。



教室に。



残っていた。



「それで。」



ミアが。



机へ。



頬杖を。



つく。



「明日は。」


「何する?」



「授業が。」


「ありますよ?」



リナ。



「そうじゃなくて。」


「終わったあと。」



「町へ。」


「行きませんか?」



「いいですね。」



リナが。



頷く。



「ヒルメは?」



「私も。」


「行きたいです。」



「じゃあ決まり。」



「ヒルメ様が。」


「行かれるのであれば。」


「私も。」



アリシア。



「聞く前から。」


「分かってました。」



「まあ。」



「ミアさんも。」


「私のことを。」


「随分と。」


「理解してきましたね。」



「嫌でも。」


「分かりますよ。」



「うふふ。」



「褒めてません。」



シロが。



ヒルメの。



膝へ。



顎を。



乗せる。



「シロちゃんも。」


「行きますか?」



「わん!」



「ふふっ。」



ヒルメが。



頭を。



撫でる。



アルベルトが。



それを。



遠くから。



見る。



「……。」



「アルベルトさんも。」



ヒルメ。



「え?」



「一緒に。」


「行きませんか?」



「わ、私もか?」



「はい。」



「同じ。」


「クラスですから。」



「……。」



アルベルトが。



少し。



戸惑う。



以前なら。



こんな誘いを。



素直に。



受けることなど。



なかった。



「……分かった。」



「では。」


「同行させてもらおう。」



「はい!」



シロ。



「……。」



じー。



「……。」



アルベルトが。



シロを見る。



「お前も。」


「一緒なのだな。」



「わん。」



「……。」



少し。



間。



「仲良くしよう。」



シロ。



ぷいっ。



「まだ。」


「駄目なのか……。」



ミアと。



リナが。



笑った。



◇ ◇ ◇



同じ頃。



ミラーク王城。



先ほどまでの。



穏やかな。



空気とは。



まるで。



違う。



国王。



レオン。



そして。



数人の。



重臣。



机の上。



広げられた。



大陸の。



地図。



「……帝国が?」



国王の。



表情が。



険しくなる。



「はい。」



報告に。



訪れた。



騎士が。



頭を。



下げる。



「ここ数週間。」



「帝国内の。」


「兵の移動が。」


「急激に。」


「増えております。」



レオンが。



地図を見る。



「規模は?」



「正確には。」


「掴めておりません。」



「ですが。」



「通常の。」


「国境警備とは。」


「到底。」


「思えません。」



「……。」



国王が。



黙る。



「それだけでは。」


「ありません。」



騎士が。



続ける。



「帝国から。」


「複数の勢力へ。」


「使者が。」


「送られております。」



「どこだ。」



「霊獣族。」



「獣人族。」



「ドワーフの。」


「山岳都市。」



一拍。



「そして。」



「魔国です。」



「……魔国まで。」



レオンが。



眉を。



ひそめる。



「何を。」


「企んでいる……。」



「内容は?」



国王。



「そこまでは。」



「ですが。」



「帝国が。」


「何らかの。」


「大規模な行動を。」


「起こそうとしていることは。」


「間違いないかと。」



「……。」



国王が。



椅子へ。



深く。



座る。



その時。



レオンが。



何かを。



思い出す。



「……アリシア。」



「ん?」



「以前。」



「あいつが。」


「言っていたな。」



「きな臭い動きが。」


「あると。」



「……。」



国王が。



目を。



細める。



「あの娘。」



「どこまで。」


「掴んでいる。」



「分からん。」



レオンが。



ため息。



「最近は。」


「特別クラスを。」


「作ることに。」


「全力だったからな。」



「……。」



国王。



「……あいつ。」



「本当に。」


「ヒルメ嬢と。」


「同じクラスに。」


「なりたかっただけでは。」


「ないだろうな。」



「…………。」



レオン。



長い。



間。



国王が。



見る。



「その間は。」


「何だ。」



「父上。」



「世の中には。」


「知らない方が。」


「幸せなことも。」


「あります。」



「お前まで。」


「何を言っている。」



だが。



すぐに。



二人の。



表情が。



戻る。



国王が。



地図を見る。



帝国。



その。



広大な。



領土。



「警戒を。」


「強めろ。」



「国境だけではない。」



「各地の。」


「情報を。」


「集めるのだ。」



「はっ!」



騎士が。



部屋を。



出る。



「……。」



レオンが。



窓の外を見る。



「何も。」


「起きなければ。」


「よいのですが。」



「……ああ。」



だが。



二人とも。



分かっていた。



これは。



何も。



起きない者の。



動きではない。



◇ ◇ ◇



――帝国。



巨大な。



帝都。



その中心。



帝国城。



そして。



城を。



見上げる。



大広場。



そこには。



人。



人。



人。



見渡す限り。



帝国の。



民。



数万。



いや。



それ以上。



「陛下!」



「皇帝陛下!」



「帝国万歳!」



まだ。



姿すら。



現していない。



それなのに。



歓声が。



止まらない。



老人。



男。



女。



若者。



そして。



子供。



誰もが。



同じように。



城を。



見上げている。



熱に。



浮かされたような。



笑顔。



その。



遥か上。



城の。



最上部。



巨大な。



魔道具。



黒い。



柱。



幾重にも。



刻まれた。



魔法陣。



その中心。



赤黒い。



宝玉。



ドクン。



一度。



脈打つ。



淡い。



魔力が。



帝都へ。



広がる。



だが。



誰一人。



気付かない。



広場の。



人々も。



兵士も。



貴族も。



誰も。



それを。



不自然とは。



思わない。



そして。



城内。



「……。」



一人の。



男が。



ゆっくりと。



歩いている。



豪華な。



衣装。



頭には。



帝国を。



象徴する。



冠。



皇帝。



その。



少し。



後ろ。



黒い。



ローブ。



男とも。



女とも。



判別できない。



人影。



「陛下。」



低い。



声。



「時は。」


「満ちました。」



皇帝が。



笑う。



「ああ。」



「随分と。」


「待たされた。」



「ですが。」



「これで。」



「大陸は。」


「陛下のものに。」



「……違う。」



人影が。



僅かに。



顔を。



上げる。



皇帝が。



振り返る。



「大陸が。」


「我のものに。」


「なるのではない。」



「元より。」



「我のものなのだ。」



「愚か者どもが。」



「それを。」


「理解していないだけだ。」



「……。」



人影の。



口元が。



僅かに。



歪む。



「仰る通りで。」



皇帝が。



巨大な。



扉の前へ。



立つ。



その向こう。



民衆の。



歓声。



「皇帝陛下!」



「帝国万歳!」



「陛下!」



皇帝が。



両腕を。



広げる。



「聞こえるか。」



「我を。」


「求める。」


「民の声が。」



「ええ。」



「素晴らしい。」



「民です。」



「当然だ。」



扉が。



開く。



眩しい。



光。



皇帝が。



バルコニーへ。



姿を。



現す。



瞬間。



ウォォォォォォォォォォォッ!!!



帝都が。



揺れた。



皇帝。



両手を。



広げる。



歓声が。



さらに。



大きくなる。



やがて。



皇帝が。



片手を。



上げる。



それだけ。



数万の。



人間が。



一斉に。



口を。



閉じる。



異様な。



静寂。



皇帝が。



見下ろす。



自らの。



民を。



そして。



笑う。



「我が。」



「偉大なる。」



「帝国の民よ――。」



◇ ◇ ◇

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