記憶の強者たち
◇ ◇ ◇
世界樹の最深部。
『――始めよ。』
ドン!!
三人が。
同時に。
動いた。
「来い!」
アリアナも。
剣を。
構える。
最初に。
真正面から。
飛び込んできたのは。
フレイヤ。
巨大な。
戦斧。
《イグニート・アクス》。
その刃へ。
炎が。
纏わりつく。
《フレイム・エンチャント》。
ゴォォォォッ!!
「いきなり。」
「お前からか!」
振り下ろされる。
巨大な。
炎の戦斧。
アリアナが。
横へ。
飛ぶ。
ドォォォォン!!
床が。
砕けた。
熱風。
頬を。
焼く。
「相変わらず。」
「馬鹿みたいな。」
「威力だな!」
着地。
そのまま。
フレイヤの。
懐へ。
走る。
振り下ろした直後。
今なら。
「もらった!」
剣を。
振る。
だが。
ガキィィン!!
「――っ!」
横から。
一本の剣。
エリス。
「やはり。」
「来るか!」
剣と。
剣。
ぶつかる。
「くっ……!」
重い。
純粋な。
剣技。
一瞬で。
分かる。
強い。
「だが!」
アリアナが。
剣を。
滑らせる。
力を。
受け流す。
そのまま。
身体を。
回転。
エリスの。
横を。
抜ける。
「――!」
その瞬間。
魔力。
後方。
アテナ。
杖。
魔法陣。
「まずい!」
魔法が。
放たれる。
ドォン!!
アリアナが。
横へ。
跳ぶ。
直撃は。
避ける。
だが。
爆風。
身体が。
僅かに。
浮く。
「しまっ――」
そこへ。
フレイヤ。
炎の戦斧。
横薙ぎ。
「《シルフィード》!」
翠色の風。
剣へ。
纏わせる。
ガァァァン!!
「ぐっ……!」
剣を。
持つ腕が。
痺れる。
まともに。
受けるものではない。
「このっ!」
風を。
爆発させる。
ブワァァァッ!!
強引に。
距離を。
開く。
着地。
「……。」
アリアナが。
三人を見る。
前。
エリス。
フレイヤ。
後方。
アテナ。
三人とも。
何も。
喋らない。
表情すら。
ほとんど。
変わらない。
ただ。
アリアナを。
倒すために。
動いている。
「……なるほど。」
アリアナが。
剣を。
握り直す。
「姿だけではなく。」
「戦い方まで。」
「私の記憶から。」
「再現しているのか。」
エリス。
前衛。
剣技で。
相手を。
封じる。
フレイヤ。
同じく。
前衛。
圧倒的な。
破壊力。
そして。
アテナ。
魔術師。
決して。
前へは。
出ない。
後方から。
戦況を。
見ながら。
魔法で。
逃げ道を。
潰す。
「……。」
アリアナが。
苦笑する。
「本当に。」
「嫌な三人を。」
「選んでくれたな。」
◇ ◇ ◇
エリスが。
地面を。
蹴る。
速い。
「来た!」
ガキン!
ガキィン!!
連続する。
剣撃。
アリアナが。
受ける。
流す。
避ける。
反撃。
だが。
エリスも。
防ぐ。
ガキィン!!
剣を。
押し合う。
「っ……!」
その時。
後方。
魔力。
「またか!」
アテナ。
魔法陣。
アリアナが。
エリスから。
離れる。
ドォン!!
先ほどまで。
立っていた場所へ。
魔法。
そして。
逃げた先。
「――!」
フレイヤ。
炎。
戦斧。
「くっ!」
振り下ろされる。
ドォォン!!
さらに。
避ける。
だが。
今度は。
エリス。
「っ!」
剣。
剣。
剣。
「休ませる気は。」
「ないらしいな!」
受ける。
避ける。
後退。
また。
アテナ。
魔法。
「……!」
横へ。
逃げる。
そこへ。
フレイヤ。
「くそっ!」
戦斧。
紙一重。
熱。
髪が。
僅かに。
焦げる。
アリアナが。
大きく。
後方へ。
跳んだ。
「はぁ……。」
「はぁ……。」
三人は。
追ってこない。
距離を。
保ちながら。
こちらを。
見ている。
「……強い。」
エリス。
アテナ。
フレイヤ。
実際に。
出会った時から。
分かっていた。
三人とも。
間違いなく。
強者。
それが。
連携している。
「一人ずつでも。」
「面倒なのに。」
アリアナが。
額の汗を。
拭う。
「三人まとめてとは。」
上。
世界樹を。
見上げる。
「性格が。」
「悪いな。」
返事は。
ない。
「……ふっ。」
アリアナが。
笑う。
「そうか。」
「お前も。」
「喋る気はないか。」
視線を。
三人へ。
戻す。
「なら。」
「こちらも。」
「考えさせてもらう。」
◇ ◇ ◇
三人。
同時に。
相手をしては。
勝てない。
なら。
崩す。
連携を。
「……。」
アリアナが。
周囲を。
見る。
巨大な。
世界樹の根。
柱のように。
伸びる。
幾つもの。
太い根。
「使えるものは。」
「使わせてもらうぞ。」
走る。
三人へ。
ではない。
横。
巨大な根。
その陰へ。
「……。」
エリス。
フレイヤ。
追う。
アテナは。
動かない。
後方。
魔法陣。
「そうだ。」
「お前は。」
「そこにいろ。」
魔法。
放たれる。
アリアナが。
根の裏へ。
回る。
ドォォン!!
根へ。
魔法が。
直撃。
「今!」
反対側から。
飛び出す。
エリス。
既に。
そこにいる。
「読まれたか!」
ガキィン!!
剣。
激突。
そこへ。
フレイヤ。
戦斧。
「っ!」
アリアナが。
身体を。
沈める。
ブォン!!
頭上を。
戦斧が。
通過。
そのまま。
地面へ。
手。
「風よ!」
ブワッ!!
低い姿勢。
一気に。
二人の間を。
抜ける。
目の前。
アテナ。
「まず。」
「お前からだ!」
アリアナが。
一直線に。
走る。
アテナ。
杖。
魔法陣。
一発。
「っ!」
横へ。
避ける。
二発。
「まだ!」
逆。
三発。
「……!」
足元。
爆発。
アリアナが。
跳ぶ。
「上手いな……!」
直接。
当てようとしている。
だけではない。
右。
左。
前。
アリアナが。
進める場所を。
削っている。
「誘導しているのか!」
気付く。
だが。
背後。
エリス。
「――っ!」
振り返る。
ガキィン!!
間に合う。
しかし。
横。
フレイヤ。
「しまっ――」
ドン!!
戦斧の。
柄。
腹へ。
直撃。
「がっ!」
アリアナの。
身体が。
吹き飛ぶ。
床を。
転がる。
一回。
二回。
三回。
剣を。
床へ。
突き刺す。
「ぐっ……!」
止まる。
「はぁ……。」
「はぁ……。」
腹を。
押さえる。
痛い。
「……なるほど。」
アリアナが。
ゆっくり。
立つ。
視線。
後方。
アテナ。
「やはり。」
「最初に。」
「落とすなら。」
「お前だな。」
◇ ◇ ◇
再び。
走る。
今度は。
壁際。
アテナが。
魔法を。
放つ。
ドン!!
避ける。
二発目。
ドォン!!
さらに。
避ける。
「……。」
アリアナが。
壁を見る。
そして。
跳ぶ。
壁へ。
足。
「はっ!」
蹴る。
さらに。
風。
ブワァッ!!
身体が。
上へ。
「何も。」
「地面だけを。」
「走る必要はない!」
巨大な根。
高い位置へ。
着地。
アテナの。
杖が。
上を。
向く。
「遅い!」
根を。
蹴る。
風。
爆発。
アリアナが。
上空から。
一直線。
アテナへ。
落ちる。
魔法陣。
展開。
「撃たせるか!」
剣。
振る。
ズバァン!!
「――!」
アテナの。
身体が。
吹き飛ぶ。
着地。
「まだだ!」
追う。
だが。
エリス。
ガキィン!!
「っ!」
剣で。
止められる。
「本当に。」
「邪魔をするな!」
ガキン!
ガキン!
剣を。
交える。
その横。
フレイヤ。
炎の。
戦斧。
アリアナが。
後方へ。
飛ぶ。
戦斧が。
振り下ろされる。
その先。
「……!」
アテナ。
フレイヤの。
戦斧が。
寸前で。
止まった。
「……。」
アリアナの。
目が。
細くなる。
「そうか。」
「そこまで。」
「再現しているのか。」
仲間を。
巻き込まない。
判断。
戦い方。
癖。
アリアナの。
記憶。
その全て。
「なら。」
「利用させてもらう!」
フレイヤの。
動きが。
止まった。
一瞬。
その横。
駆け抜ける。
狙い。
アテナ。
「風を司る精霊よ。」
翠色の。
風。
剣へ。
集まる。
「我が剣へ集いて。」
アテナが。
杖を。
向ける。
「全てを断つ。」
魔法陣。
「疾風となれ!」
アリアナ。
踏み込む。
「《シルフィード》!!」
ズバァァァン!!
翠色の。
斬撃。
直撃。
アテナの。
身体が。
大きく。
揺れる。
そして。
パァァァ……。
光。
崩れる。
消える。
「……よし。」
アリアナが。
剣を。
構え直す。
「まず。」
「一人。」
◇ ◇ ◇
残る。
エリス。
フレイヤ。
二人が。
動く。
「さっきよりは。」
アリアナの。
身体を。
風が。
包む。
「やりやすい!」
フレイヤ。
戦斧。
振り下ろす。
避ける。
エリス。
剣。
受ける。
ガキィン!!
流す。
回る。
二人の。
間を。
抜ける。
フレイヤが。
振り返る。
「今度は。」
「お前だ!」
風。
強く。
アリアナの。
速度が。
上がる。
右。
斬る。
フレイヤが。
戦斧を。
振る。
もう。
いない。
左。
一撃。
背後。
二撃。
「力では。」
「勝てない。」
さらに。
風。
「なら。」
「速さで。」
「勝つ!」
斬る。
斬る。
斬る。
フレイヤが。
戦斧を。
大きく。
振り回す。
アリアナが。
跳ぶ。
その瞬間。
「――!」
エリス。
空中へ。
剣。
「くっ!」
ガキィン!!
受ける。
身体が。
弾かれる。
だが。
空中。
風。
姿勢を。
変える。
「まだだ!」
着地。
同時。
フレイヤへ。
踏み込む。
「《シルフィード》!!」
ズバァァァン!!
翠色の。
斬撃。
フレイヤの。
身体が。
吹き飛ぶ。
巨大な。
根へ。
激突。
ドォォン!!
「……。」
フレイヤが。
立とうとする。
「させるか!」
アリアナが。
さらに。
踏み込む。
一閃。
パァァァ……。
フレイヤが。
光へ。
変わる。
消える。
「……二人。」
残る。
一人。
◇ ◇ ◇
静寂。
エリス。
アリアナ。
二人。
剣を。
持ち。
向かい合う。
「……。」
エリスは。
何も。
喋らない。
ただ。
静かに。
剣を。
構える。
その姿。
あの時。
出会った。
本人と。
変わらない。
「……最後は。」
「お前か。」
アリアナも。
剣を。
構える。
「小細工は。」
「もう。」
「必要ないな。」
風。
静かに。
アリアナの。
周囲を。
流れる。
「正面から。」
「やろう。」
ドン!!
同時。
踏み込む。
ガキィィン!!
剣と。
剣。
激突。
「くっ!」
押される。
やはり。
純粋な。
剣技なら。
エリスが。
上。
一撃。
受ける。
二撃。
流す。
三撃。
避ける。
剣先。
頬。
掠める。
血。
「っ!」
だが。
下がらない。
反撃。
一撃。
防がれる。
二撃。
防がれる。
三撃。
ガキィン!!
全て。
止められる。
「……やはり。」
「強いな。」
エリス。
踏み込む。
高速の。
斬撃。
アリアナ。
受ける。
受ける。
受ける。
「くっ……!」
ガァン!!
剣が。
大きく。
弾かれる。
胸元。
エリスの。
剣。
迫る。
「風よ!」
ブワッ!!
身体を。
強引に。
横へ。
ずらす。
剣。
脇腹。
掠める。
「っ……!」
血。
それでも。
止まらない。
距離。
開く。
「……。」
アリアナが。
剣を。
両手で。
握る。
「私は。」
「剣士だ。」
翠色の。
風。
「剣だけなら。」
「お前の方が。」
「上かもしれない。」
風。
さらに。
強く。
「だが。」
アリアナの。
髪が。
舞う。
「私は。」
「剣だけで。」
「戦ってきたわけじゃない。」
エリスが。
踏み込む。
アリアナも。
踏み込む。
「風を司る精霊よ。」
剣へ。
風。
「我が剣へ集いて。」
エリス。
剣。
振り上げる。
「全てを断つ。」
アリアナ。
さらに。
魔力。
「疾風となれ――!」
二人。
同時。
剣を。
振る。
「《シルフィード》!!」
ドォォォォォン!!!
激突。
翠色の。
風が。
最深部を。
駆け巡る。
「ぐっ……!」
押される。
エリスの。
剣。
強い。
「まだ……!」
アリアナが。
魔力を。
注ぎ込む。
迷宮。
何度も。
挑んだ。
敗れた。
戻った。
また。
挑んだ。
魔物を。
倒した。
強くなった。
それでも。
足りない。
もっと。
強く。
ヒルメ。
シロ。
フェネクス。
もう一度。
あいつらと。
肩を並べる。
そのために。
「私は……!」
風。
さらに。
強く。
「まだ。」
「強くなる!!」
バキィン!!
エリスの。
剣が。
弾かれる。
「はぁぁぁぁぁっ!!」
一閃。
ズバァァァン!!
翠色の。
風が。
エリスを。
通り抜ける。
「……。」
エリスの。
身体。
静止。
そして。
パァァァ……。
光へ。
変わる。
消えた。
「……。」
アリアナが。
膝を。
つく。
「はぁ……。」
「はぁ……。」
剣を。
床へ。
突き。
身体を。
支える。
「……勝った。」
顔を。
上げる。
誰も。
いない。
「……。」
アリアナが。
小さく。
笑う。
「本人たちに。」
「会った時には。」
「少しくらい。」
「自慢しても。」
「いいだろう。」
その時。
『――第一の試練。』
「……。」
『突破を認める。』
アリアナの。
笑顔が。
止まる。
「……今。」
顔を。
上げる。
「第一と。」
「言ったか?」
『然り。』
「……。」
アリアナが。
目を。
閉じる。
「まだ。」
「あるのか?」
『然り。』
「……少しくらい。」
「休ませてくれないか?」
返事は。
ない。
「……おい。」
沈黙。
「本当に。」
「性格が悪いな。」
その瞬間。
淡い。
緑色の光。
アリアナの。
身体を。
包む。
「……?」
頬。
脇腹。
腹。
傷が。
消える。
疲労。
抜ける。
魔力。
満ちていく。
「……。」
アリアナが。
自分の手を。
見る。
「回復は。」
「してくれるのか。」
『次なる試練。』
「……聞いていないな。」
『汝の記憶に。』
『最も深く。』
『刻まれし者たち。』
「……。」
アリアナの。
表情が。
変わる。
『共に歩み。』
『共に戦い。』
『汝が。』
『仲間と認めし者。』
「……待て。」
嫌な。
予感。
『汝の記憶より。』
『我が。』
『呼び出そう。』
光。
一つ。
小さな。
白い影。
四本の。
足。
ふさふさの。
尻尾。
「……。」
アリアナが。
固まる。
光が。
消える。
白い。
小さな。
獣。
「……シロ。」
当然。
返事は。
ない。
シロの姿をした。
複製。
ただ。
アリアナを。
見ている。
二つ目。
光。
少女。
長い耳。
見覚えのある。
姿。
「……フェネクス。」
こちらも。
無言。
杖を。
構える。
魔力が。
静かに。
高まっていく。
そして。
三つ目。
光。
「……。」
アリアナが。
額へ。
手を。
当てた。
杖。
ローブ。
小柄な。
身体。
光が。
消える。
「……嘘だろ。」
ヒルメ。
いつもの。
笑顔は。
ない。
言葉も。
ない。
ただ。
静かに。
杖を。
アリアナへ。
向ける。
「……。」
三人。
全員。
無言。
そこに。
本人たちの。
意思はない。
アリアナの。
記憶から。
世界樹が。
再現した。
戦うためだけの。
存在。
『第二の試練。』
『汝が。』
『仲間と認めし者たちを。』
『越えてみせよ。』
「……。」
アリアナが。
三人を。
見渡す。
シロ。
フェネクス。
ヒルメ。
「よりによって。」
剣を。
握り直す。
「こいつらか……。」
シロが。
姿勢を。
低くする。
フェネクスの。
周囲へ。
魔力。
ヒルメの。
杖先にも。
光。
「……。」
アリアナの。
頬を。
冷や汗が。
伝う。
知っている。
三人とも。
よく。
知っている。
だからこそ。
分かる。
「改めて。」
「敵に回すと……。」
アリアナが。
苦笑する。
「本当に。」
「最悪の組み合わせだな。」
翠色の。
風。
身体を。
包む。
「だが。」
剣を。
構える。
「私だって。」
「お前たちと。」
「旅をしていた頃の。」
「私ではない。」
『――始めよ。』
ドン!!
シロが。
地面を。
蹴る。
「――っ!」
消えた。
次の瞬間。
真横。
鋭い。
爪。
「速っ――!」
ガキィィン!!
剣。
爪。
激突。
「くっ!」
受けた。
その瞬間。
フェネクス。
魔法陣。
さらに。
後方。
ヒルメ。
杖。
魔力。
「……。」
アリアナの。
顔が。
引きつる。
「休む暇すら。」
「なさそうだな……!」
第二の試練。
アリアナが。
最もよく知る。
仲間たちとの。
戦いが。
始まった。
◇ ◇ ◇




