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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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53/66

その名はアリシア

◇ ◇ ◇



「……舐めないでくださいませ!!」



セレスティアが。


杖を振り上げた。



「《ライトニング・ジャベリン》!!」



バチィィィィィッ!!



巨大な雷槍。



一直線。



アリシアへ。



「……。」



アリシアは。


避けない。



杖を。


ほんの僅かに。


持ち上げる。



「消えなさい。」



パァン。



「……え?」



消えた。



雷槍が。



跡形もなく。



「な……。」



セレスティアの顔が。


固まる。



「何を……。」



「遅いですね。」



「――っ!?」



足元。



光。



「いつの間に――」



次の瞬間。



ドォン!!



「きゃあっ!!」



セレスティアの身体が。


地面へ。


叩きつけられる。



「ぐっ……!」



動こうとする。



動けない。



「な……。」


「何ですの、これは……!」



「拘束魔法です。」



アリシアが。


ゆっくりと。


歩いてくる。



笑顔。



「それくらいは。」


「お分かりになるでしょう?」



「くっ……!」



セレスティアが。


魔力を込める。



「《フレイム――》」



「遅い。」



パァン!!



「っ!?」



魔法が。


発動する前に。


消える。



「……。」



セレスティアの顔から。


血の気が引く。



詠唱すら。


させてもらえない。



「どうしました?」



アリシアが。


首を傾げる。



「先ほどまで。」


「あれほど楽しそうに。」


「戦っておられたではありませんか。」



「……っ。」



「さあ。」



アリシアが。


杖を向ける。



「立ちなさい。」



拘束。


消える。



「……!」



セレスティアが。


咄嗟に。


後ろへ下がる。



「私はまだ。」



アリシアが。


微笑む。



「何もしていませんよ?」



「……。」



セレスティアの手が。


震える。



それでも。



「わ……私は……!」



杖を。


構える。



「負けませんわ!!」



魔力。



集める。



だが。



「そうですか。」



アリシアが。


一度だけ。


杖を振った。



「では。」



魔法陣。



一つ。



セレスティアの頭上。



「終わりにしましょう。」



「――え?」



光。



落ちる。



ドォォォォォン!!!



「きゃああああっ!!」



ブゥゥゥン!!



保護術式。



激しく輝く。



セレスティアの身体が。


吹き飛ぶ。



ドン!!



「……。」



静寂。



誰も。


声を出せない。



アリシアは。


倒れたセレスティアを。


静かに見下ろす。



「覚えておきなさい。」



笑顔は。


もうない。



「次はありません。」



「……。」



「私の友人に。」



一拍。



「二度と。」


「同じことをしないように。」



「……。」



返事はない。



アリシアが。


杖を下ろす。



膨大だった魔力が。


消えていく。



静寂。



誰もが。


アリシアを見ていた。



この国の王女。



そして。



この国最強の魔術師。



その力を。


ほんの僅かに。


目の当たりにして――



「……。」



アリシアが。


振り返る。



倒れている。



三人。



リナ。



ミア。



そして。



ヒルメ。



「……。」



ヒルメを。


見る。



「…………。」



数秒。



「ヒルメ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



「!?」



空気が。


全部。


吹き飛んだ。



アリシアが。


走る。



「ヒルメ様!!」


「ヒルメ様ぁ!!」



「……アリ……シア……?」



「喋ってはいけません!!」



ヒルメの横へ。


膝をつく。



「誰か!!」


「医務室へ!!」



教師たちが。


我に返る。



「担架を!」



「早くなさい!!」



「は、はい!」



「丁重に!!」



「……え?」



「ヒルメ様のお身体ですよ!?」



「は、はい!!」



「揺らしてはいけません!」


「絶対にです!」


「細心の注意を払って!」


「丁重にお運びなさい!!」



「アリシア……。」



「はい!!」



「……うるさい。」



「申し訳ございません!!」



即答。



「……。」



少し離れた場所。



ミアが。


倒れたまま。



「……私も。」


「いるんだけど……。」



「もちろんです!」



アリシアが。


振り向く。



「ミアさんも!」


「リナさんも!」


「すぐに医務室へ!!」



そして。



また。



ヒルメを見る。



「ですがヒルメ様は特に丁重に!!」



「やっぱり……。」


「扱い違うじゃん……。」



ミアの。


弱々しい突っ込み。



その横。



リナは。



完全に。


気を失っている。



「急いでください!」


「ですが走ってはいけません!」


「ヒルメ様が揺れます!」



「殿下。」


教師が。


困った顔をする。



「急ぐのと揺らさないのを両方は――」



「両立なさい!!」



「はい!!」



つい先ほど。



この国最強の魔術師として。


コロシアム全体を。


震え上がらせた王女は。



もう。



どこにもいなかった。



そこにいるのは。



いつもの。



ヒルメ様第一。



アリシアだった。


◇ ◇ ◇



クラス対抗戦は。


思わぬ形で。


幕を閉じることとなった。



ヒルメ。


リナ。


ミア。



三人は。


全員が戦闘不能。



そして。



セレスティアも。


アリシアとの戦闘によって。


試合続行不可能。



結果。



両チームとも。


次の試合を。


棄権することとなった。



『両チーム棄権により――』



教師の声が。


コロシアムへ響く。



『決勝戦は不戦勝!』



『今年度クラス対抗戦――優勝!』



『アリシア組!!』



ワァァァァァァァァ!!



大歓声。



拍手。



祝福。



アリシアたちの。


優勝。



こうして。



波乱続きとなった。


今年のクラス対抗戦は。



幕を閉じた。



もっとも。



その優勝者本人は。



表彰を終えるなり。



ずっと。



ある場所を。



気にしていたのだが。



◇ ◇ ◇



学院。



特別医務室。



そこは。



普段。


生徒たちが利用する医務室とは。


まるで違っていた。



大きな窓。



高そうな家具。



柔らかな絨毯。



そして。



広い部屋に。


並べられた。



三つの大きなベッド。



王族や。


学院を訪れた要人が。



万が一。



体調を崩した際に使用する。



特別な医務室。



そのベッドに。



ヒルメ。



リナ。



ミア。



三人が。


並んで寝かされていた。



「……。」



ミアが。



天井を見る。



「ここ……。」



「本当に医務室?」



「……知らないわよ。」



隣。



リナも。



布団に入ったまま。



部屋を見回す。



「私の部屋より。」


「ずっと豪華なんだけど……。」



「ベッド。」


「すごくふかふか。」



「……。」



ミアが。



ヒルメを見る。



「そこ?」



「うん。」



「ヒルメは。」


「いつでもヒルメね……。」



「?」



少し離れた場所。



椅子に座っていた。


エルドが。



ため息をつく。



「それだけ喋れれば。」


「三人とも。」


「ひとまず問題なさそうだな。」



「エルド先生。」



「まったく。」



エルドが。



リナを見る。



「特にお前だ。」



「……。」



リナが。



視線を逸らす。



「何よ。」



「何よではない。」



「覚醒したばかりの固有魔法を。」


「あれだけ立て続けに使う奴があるか。」



「……仕方ないじゃない。」



「身体が追いついておらんのだ。」



「分かってる。」



「分かっておらんから。」


「ああなったのだろうが。」



「……。」



リナが。



布団へ。



少し潜る。



「でも……。」



小さな声。



「勝ったし。」



「それで倒れていれば。」


「世話はないわ。」



「うるさい。」



「先生にうるさいって言った。」



ミアが。



笑う。



「ミアも怒られたいか?」



「ごめんなさい。」



即答。



ヒルメが。



くすくす笑う。



「……。」



そんな三人を。



エルドが。



少しだけ。



穏やかな顔で見ていた。



その時。



ミアが。



何かを思い出したように。



口を開く。



「ねえ。」



「何だ?」



「アリシアって。」



「……。」



一拍。



「何者なの?」



「……王女だが?」



「それは知ってるよ!」



ミアが。



身体を起こそうとして。



「痛っ。」



「寝ておれ。」



「はい……。」



再び。



横になる。



「そうじゃなくて。」



ミアが。



天井を見ながら。



続ける。



「強すぎない?」



「……。」



リナも。



黙って。



エルドを見る。



ヒルメも。



思い出す。



あの時。



アリシアが。



魔力を解放しただけで。



コロシアム全体が。



震えた。



セレスティアの魔法を。



簡単に消し。



何もさせず。



圧倒した。



「すごかった。」



ヒルメが。



呟く。



「セレスティア。」


「何もできなかった。」



「……そうだな。」



エルドが。



小さく笑う。



「あれが。」


「アリシアだ。」



「……?」



「この国で。」


「最も優れた魔術師。」



「アリシアは。」



エルドが。



椅子へ。



深く腰掛ける。



「幼い頃から。」


「魔法の天才だった。」



◇ ◇ ◇



「儂は。」



エルドが。



少し。



懐かしそうに。



目を細める。



「あの子が。」


「赤ん坊の頃から。」


「知っておる。」



「赤ちゃんの頃から?」



ヒルメが。



聞く。



「ああ。」



「王家との付き合いが。」


「長くてな。」



そして。



アリシアが。



魔法を学び始めた頃から。



エルドも。



その成長を。



ずっと。



見てきた。



「一つ教えれば。」


「十を理解する。」



「一度見せた魔法を。」


「次には。」


「自分のものにしておる。」



「……。」



「新しい術式を教えれば。」


「その術式を。」


「自分で改良して持ってくる。」



ミアが。



瞬きをする。



「それ。」


「先生いらなくない?」



「……。」



エルドが。



少し。



遠い目をする。



「そうなのだ。」



「え。」



「最初のうちは。」


「儂も師として。」


「色々と教えておった。」



「だが。」



ため息。



「すぐに。」


「教えることがなくなった。」



「……。」



「気付いた時には。」


「儂すら。」


「追い抜かれておったよ。」



「エルド先生より!?」



ミアが。



驚く。



「ああ。」



エルドは。



あっさり。



認める。



「悔しくないの?」



ヒルメが。



聞く。



「少しはな。」



「少しなんだ。」



「相手が悪い。」



エルドが。



苦笑する。



「アリシアは。」


「天才だ。」



「それも。」


「儂が知る限り。」


「最も魔法に愛された天才だ。」



「……。」



「だからこそ。」



エルドの表情が。



少し。



曇る。



「あの子は。」


「孤独だった。」



「……え?」



ヒルメが。



エルドを見る。



「王女という立場。」



「そして。」


「誰もが認める。」


「圧倒的な魔法の才能。」



幼いアリシアの周りには。



いつも。



人がいた。



王族。



貴族。



家臣。



教師。



使用人。



同年代の子供。



それでも。



「友人と呼べる者は。」


「一人もおらんかった。」



「……。」



ミアの。



表情が変わる。



「近付いてくる者は。」


「皆。」


「王女殿下に近付いていた。」



「アリシアではない。」



「……。」



「同年代の子供でさえ。」


「親から。」


「王女殿下に失礼のないようにと。」


「言い聞かされてから。」


「あの子の前へ来る。」



「……それ。」


「友達じゃないね。」



ミアが。



小さく言う。



「ああ。」



「アリシアも。」


「それくらい。」


「分かっておった。」



「……。」



「だが。」


「それでも昔は。」


「今より明るい子だった。」



魔法が。



大好きだった。



新しい魔法を。



覚えるたび。



嬉しそうに。



エルドへ。



見せに来た。



自分の才能を。



誇りに思っていた。



そして。



いつしか。



誰もが。



彼女を。



この国で最も優れた魔術師と。



呼ぶようになった。



「だが。」



エルドの声が。



低くなる。



「病にかかった。」



「……。」



ヒルメが。



僅かに。



目を見開く。



「あの病気?」



「ああ。」



エルドが。



頷く。



「お前が。」


「治した。」


「あの病だ。」



「……。」



アリシアは。



自分で。



治そうとした。



当然だった。



この国で。



誰よりも。



魔法に精通している。



治癒魔法も。



数え切れないほど。



知っている。



何度も。



何度も。



自分へ。



魔法を使った。



それでも。



治らない。



王宮の魔術師。



医師。



そして。



エルド。



誰にも。



治せなかった。



「……。」



エルドが。



目を伏せる。



「ある時。」


「あの子が。」


「儂に言った。」



『何が。』



『この国で一番の魔術師ですか。』



『自分の病すら。』



『治せないではありませんか。』



「……。」



ヒルメが。



布団を。



握る。



「それからだ。」



「アリシアが。」


「変わっていったのは。」



次第に。



笑わなくなった。



人と。



話さなくなった。



元々。



心から。



友人と呼べる者もいない。



そこへ。



自分の魔法への。



自信まで。



失った。



「見ておってな。」



エルドが。



静かに。



言う。



「不憫でならなかった。」



「……。」



「赤ん坊の頃から。」


「見てきた子だ。」



「魔法を覚えて。」


「嬉しそうに笑っていた子が。」



「自分の魔法を。」


「否定するようになっていく。」



「だが。」



拳。



僅かに。



握る。



「儂には。」


「どうしてやることも。」


「できんかった。」



「……。」



しばらく。



誰も。



何も言わなかった。



そして。



エルドが。



ヒルメを見る。



「そこへ。」



一拍。



「お前が現れた。」



「……私?」



「ああ。」



エルドが。



頷く。



「アリシアにも。」


「王宮の魔術師にも。」


「儂にも。」


「治せなかった病を。」



「お前は。」



ヒルメを。



真っ直ぐ見る。



「《サンクチュアリ》で。」


「治してしまった。」



「……。」



ヒルメが。



瞬きをする。



「アリシアにとって。」


「あれは。」


「ただ命を救われた。」


「というだけではない。」



「……?」



「自分が。」


「どれだけ魔法を学んでも。」


「辿り着けなかった魔法。」



「この国で。」


「最も優れた魔術師と呼ばれる。」


「自分ですら。」


「知らなかった魔法。」



「それを。」


「お前が使った。」



「……。」



「だから。」


「アリシアは。」


「お前に感謝している。」



「命を。」


「救ってくれたことを。」



「そして。」



エルドが。



少し。



笑う。



「尊敬しておる。」



「自分の知らない魔法を。」


「見せてくれた。」


「一人の魔術師としてな。」



「……。」



ヒルメが。



少し。



照れたように。



布団へ。



顔を隠す。



「でも。」


「私。」


「そんな大したこと……。」



「それだけではない。」



「え?」



「お前は。」


「何も求めなかった。」



「……?」



ヒルメが。



また。



顔を出す。



「何か。」


「欲しかったの?」



「逆だ。」



エルドが。



呆れたように。



笑う。



「王女の命を。」


「救ったのだぞ。」



「普通なら。」


「褒美を求める。」



「金。」



「地位。」



「土地。」



「望めば。」


「王家は。」


「相応の褒美を。」


「与えただろう。」



「……。」



ヒルメが。



少し。



考える。



そして。



「いらない。」



「だろうな。」



リナが。



横から。



呟く。



「ヒルメだし。」



「うん。」



ミアも。



頷く。



「ヒルメだもん。」



「何それ。」



「褒めてる。」



「そう?」



「たぶん。」



「たぶん?」



エルドが。



笑う。



「アリシアも。」


「同じようなことを。」


「聞いたのだろう。」



「何が欲しいのか。」



「何を望むのか。」



「……。」



「だが。」


「ヒルメは。」


「何も望まなかった。」



ヒルメが。



不思議そうに。



首を傾げる。



「だって。」



「苦しそうだったから。」



「助けただけだよ?」



「……。」



エルドが。



しばらく。



ヒルメを見る。



「そういうところだろうな。」



「?」



「アリシアが。」


「お前を。」


「あれほど慕うのは。」



「……。」



ミアが。



にやり。



「ヒルメ様ぁ。」



「やめて。」



「ヒルメ様ぁぁ。」



「ミア。」



「はい。」



リナが。



少しだけ。



笑う。



「でも。」



ミアが。



今度は。



自分を指差す。



「私たちは?」



「ん?」



「アリシア。」


「私とリナのことも。」


「友人って言ってたよね。」



「……ああ。」



エルドが。



ミア。



そして。



リナを見る。



「お前たちは。」



一拍。



「アリシアを。」


「王女として扱わんからな。」



「……。」



ミア。



考える。



「うん。」



リナも。



「扱ってないわね。」



「少しは扱え。」



「嫌。」



「即答するな。」



「だって。」


「アリシアはアリシアでしょ?」



ミアが。



当たり前のように。



言う。



「王女だからって。」


「急に話し方変えるのも。」


「変じゃない?」



「私も無理。」



リナが。



続ける。



「今さら。」


「殿下とか言えって言われても。」


「気持ち悪い。」



「お前たちな……。」



エルドが。



呆れる。



だが。



すぐに。



笑った。



「それで。」


「いいのだろう。」



「……。」



「アリシアにとっては。」


「それこそが。」


「何より嬉しいはずだ。」



王女としてではない。



この国最強の魔術師としてでもない。



ただ。



アリシアとして。



笑う。



話す。



時には。



からかう。



遠慮もしない。



「お前たちは。」



エルドが。



三人を見る。



「アリシアにとって。」


「ようやくできた。」



「大切な。」



一拍。



「本当に。」


「大事な友人なのだろう。」



「……。」



三人が。



静かになる。



「儂も。」



エルドが。



続ける。



「あそこまで。」


「怒ったアリシアを。」


「初めて見た。」



「……そんなに?」



ミアが。



聞く。



「ああ。」



「赤ん坊の頃から。」


「見てきた儂が。」


「初めてだ。」



「……。」



「お前たちが。」


「傷付けられたことが。」


「余程。」


「許せなかったのだろう。」



エルドが。



ヒルメ。



ミア。



リナ。



一人ずつ。



見る。



そして。



少し。



優しい声で。



言った。



「だから。」



「これからも。」



「仲良くしてやってくれ。」



「……。」



「王女殿下と。」


「仲良くしろと言っているのではない。」



「アリシアと。」



「友人でいてやってくれ。」



「……うん。」



ヒルメが。



笑う。



「もちろん。」



「私も。」



ミアも。



笑う。



「今さら。」


「友達やめる理由ないし。」



「……私も。」



リナが。



少しだけ。



恥ずかしそうに。



顔を逸らす。



「別に。」


「王女だから友達になったわけじゃないし。」



「……そうか。」



エルドが。



目を細める。



「それを聞けば。」


「あの子も――」



バァァァン!!



「!?」



突然。



扉が。



勢いよく。



開いた。



「ヒルメ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



「……。」



全員。



固まる。



入口。



アリシア。



豪華な。



ドレス。



髪も。



綺麗に。



整えられている。



優勝者として。



祝賀会へ出席していた。



その姿。



なのだが。



「はぁ……!」


「はぁ……!」



息。



切れている。



どう見ても。



走ってきた。



「アリシア?」



「ヒルメ様!!」



一直線。



走る。



「ヒルメ様ぁ!!」



「わっ。」



ベッドの横へ。



膝をつく。



「お身体は!?」


「痛むところは!?」


「気分は悪くありませんか!?」


「眩暈は!?」


「吐き気は!?」


「お水は!?」


「寒くありませんか!?」


「暑くありませんか!?」



「アリシア。」



「はい!!」



「一回。」


「落ち着いて。」



「無理です!!」



「え。」



「ヒルメ様が!」


「このようなお姿なのですよ!?」



「……元気だよ?」



「元気な方は!」


「ベッドで寝ておりません!!」



「それはそうかも。」



「でしょう!?」



「……。」



エルドが。



その様子を。



ぽかんと。



見ている。



そして。



ふと。



アリシアの服装を見る。



「……待て。」



「何です?」



「お主。」



「今は。」



一拍。



「優勝の祝賀会の最中では!?」



「……。」



アリシアが。



エルドを見る。



きょとん。



そして。



「は?」



「……。」



エルドの眉が。



動く。



「は?」



「何を仰っているのです?」



「いや。」


「だから!」


「祝賀会だ!」



「お主が主役だろうが!」



「それが何か?」



「それが何かではない!」



「途中で抜け出してきたのか!?」



「はい。」



「はいではない!!」



「戻れ!」



「嫌です。」



「即答するな!」



「そもそも。」



アリシアが。



少し。



眉を寄せる。



「あのような。」


「意味のないパーティーなどより。」



「意味がない!?」



「ヒルメ様のお身体の方が。」



ヒルメの手を。



そっと。



両手で包む。



「遥かに。」


「大事に決まっているではありませんか。」



「……。」



エルドが。



固まる。



「いや。」


「お主の優勝を祝うために。」


「王族や貴族まで――」



「知りません。」



「知りません!?」



「優勝したことなど。」


「もう皆様。」


「ご存じでしょう?」



「そういう問題ではない!」



「では。」


「どういう問題です?」



「お主が主役なのだ!」



「主役だから何です?」



「祝ってもらえ!」



「もう祝われました。」



「まだ始まったばかりだろうが!」



「十分です。」



「十分ではない!」



「十分です。」



「戻れ!」



「嫌です。」



「アリシア!!」



「エルド。」



アリシアが。



真顔になる。



「はい。」



「……。」



エルドが。



反射的に。



返事をしてしまう。



「私は。」



アリシアが。



ヒルメを見る。



「今。」


「ヒルメ様のお側に。」


「いたいのです。」



「……。」



「それに。」



視線。



ミア。



リナ。



「ミアさんも。」


「リナさんも。」



少し。



表情が。



柔らかくなる。



「大切な。」


「私の友人です。」



「……。」



三人が。



アリシアを見る。



「三人が。」


「こんな状態なのに。」



「私だけ。」


「笑ってパーティーなど。」


「できるわけがないでしょう。」



「……。」



静かになる。



先ほどまで。



エルドから。



聞いていた。



アリシアの。



過去。



友人と呼べる者が。



いなかった少女。



その少女が。



今。



当たり前のように。



自分たちを。



友人と。



呼んでいる。



「……。」



ミアが。



少し。



笑う。



リナも。



口元を。



僅かに。



緩める。



ヒルメも。



アリシアの手を。



握り返す。



「アリシア。」



「はい!」



「ありがとう。」



「……。」



アリシアが。



一瞬。



固まる。



そして。



「ヒルメ様ぁ……。」



目。



潤む。



「わっ。」



「本当に!」


「ご無事でよかったです!!」



「ちょっ。」


「アリシア。」


「痛い痛い。」



「はっ!!」



即座に。



離れる。



「申し訳ございません!!」



「大丈夫。」



「医師を呼びます!!」



「いるから。」



エルドが。



言う。



「では治癒術師を!!」



「もう診てもらった。」



「ではもっと優秀な治癒術師を!!」



「落ち着け!」



「ヒルメ様のことですよ!?」


「落ち着いてなどいられません!!」



「さっきまで。」


「国一番の魔術師として。」


「あれだけ格好良く決めておった奴が……。」



エルドが。



頭を抱える。



「……。」



ミアが。



リナを見る。



「ねえ。」



「何?」



「さっきの話。」


「本当に同じ人?」



「……。」



リナが。



アリシアを見る。



「たぶん。」



「たぶんなんだ。」



その時。



アリシアが。



突然。



立ち上がる。



「そうです!」



「何?」



「お食事!」



「え?」



「三人とも。」


「お腹が空いているのでは!?」



「まあ……。」



「すぐに用意させます!」



「普通のでいいよ?」



ヒルメが。



言う。



「もちろんです!」



アリシアが。



満面の笑顔。



「王宮から最高の料理人を呼びます!」



「普通って言ったよ!?」



「ヒルメ様に普通などあり得ません!!」



「何で!?」



「アリシア!」



「何ですかエルド!」



「祝賀会へ戻れ!!」



「嫌です!!」



「戻れぇぇぇ!!」



「絶対に嫌です!!」



豪華な。



特別医務室。



その中に。



二人の声が。



いつまでも。



響いていた。



「……。」



ミアが。



笑う。



「いつものアリシアだ。」



「そうね。」



リナも。



笑う。



ヒルメも。



嬉しそうに。



頷いた。



「うん。」



「いつものアリシア。」

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