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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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52/66

この国最強の魔術師

◇ ◇ ◇


黒い炎が。


コロシアムを照らしていた。


ゴォォォォォォ……。


「……。」


誰も。


声を出せない。


赤でもない。


青でもない。


漆黒。


リナの周囲で。


今まで誰も見たことのない炎が。


静かに。


燃えている。


「……何ですの。」


セレスティアが。


僅かに眉を寄せた。


「その魔法は。」


「……。」


リナは。


答えなかった。


答えられなかった。


自分にも。


分からない。


ただ。


怒り。


悲しみ。


悔しさ。


全部が。


胸の奥で。


混ざっている。


「……。」


頬を。


涙が伝う。


その後ろ。


ヒルメ。


ミア。


二人は。


倒れたまま。


動かない。


自分を。


守って。


自分なんかのために。


「……。」


リナが。


杖を握り締める。


「絶対に……。」


黒炎が。


揺れた。


「許さない。」


「……そうですの。」


セレスティアが。


杖を構える。


「ならば。」


「その力で。」


「私を倒してみなさい。」


「……。」


リナが。


顔を上げた。


その瞬間。


「……え?」


頭の中に。


何かが。


流れ込んできた。


言葉。


知らない言葉。


詠唱。


聞いたことがない。


習ったこともない。


なのに。


分かる。


どう魔力を動かすのか。


どこへ集めるのか。


どう放つのか。


最初から。


知っていたかのように。


「……何よ。」


リナが。


小さく呟く。


杖先。


黒炎が。


集まっていく。


そして。


自然と。


口が動いた。


「黒き炎よ――」


「……!」


セレスティアの目が。


細くなる。


「我が怒りを喰らい――」


「眼前の敵を焼き尽くせ――」


黒炎が。


一気に。


膨れ上がる。


「《ブラック・フレア》!!」


ゴォォォォォォッ!!


巨大な黒炎。


一直線。


セレスティアへ。


「《アクア・ウォール》!」


ザァァァン!!


巨大な水壁。


激突。


ジュワァァァァァァ!!


「……っ!?」


水壁が。


黒炎に触れた場所から。


次々と。


蒸発していく。


一枚。


突破。


「《アクア・ウォール》!!」


二枚目。


ザァァァン!!


黒炎。


激突。


ジュワァァァァァ!!


ようやく。


消える。


「……。」


セレスティアが。


僅かに。


後ろへ下がる。


「……。」


リナも。


自分の杖を見ていた。


今の魔法。


知らない。


それなのに。


使えた。


「……何なのよ。」


「これ……。」


「よそ見をする余裕が。」


セレスティア。


杖。


「ありまして?」


「!」


「《ライトニング・ボルト》!」


バチィィィッ!!


「っ!」


リナが。


横へ飛ぶ。


ドォン!!


雷。


石床を撃つ。


着地。


その瞬間。


「《アイス・ランス》!」


氷槍。


五本。


「っ!」


リナ。


一本。


避ける。


二本。


避ける。


三本目。


肩を掠める。


ブゥン!!


保護術式。


「くっ……!」


四本目。


五本目。


迫る。


その瞬間。


また。


頭の中へ。


言葉。


流れ込む。


――闇よ。


――我が意志に従い。


――敵を穿つ槍となれ。


「……!」


知らない。


でも。


分かる。


「闇よ――」


「我が意志に従い――」


「敵を穿つ槍となれ――」


杖先。


黒い魔力。


一本。


二本。


三本。


四本。


五本。


鋭い槍へ。


「《ダーク・ランス》!!」


シュババババッ!!


黒槍。


氷槍。


真正面。


ガガガガガン!!


氷が。


砕け散る。


「……!」


セレスティアの目が。


見開かれた。


「……。」


リナも。


驚いている。


「また……。」


頭の中。


まだ。


何かがある。


知らない言葉。


知らない魔法。


必要になるたび。


自然と。


浮かんでくる。


「……。」


リナが。


杖を握り直した。


「何だか知らないけど……。」


黒炎。


揺れる。


「使えるなら。」


セレスティアを。


睨む。


「全部使ってやる。」


◇ ◇ ◇


「随分と。」


「調子に乗っていますのね。」


セレスティアの声が。


低くなる。


「《アース・バレット》!」


ドドドドドッ!!


岩弾。


速い。


「っ!」


リナ。


走る。


一発。


避ける。


二発。


身体を捻る。


三発目。


「くっ!」


脇腹。


直撃。


ブゥン!!


保護術式。


身体が。


横へ飛ぶ。


ドン!!


「……っ。」


転がる。


だが。


すぐに。


杖をつく。


立つ。


「……。」


セレスティアが。


その姿を見る。


「力が変わったところで。」


「あなた自身まで。」


「強くなったわけではありませんわ。」


「……分かってる。」


リナが。


息を吐く。


「あなたが。」


「私より強いことくらい。」


「なら――」


「でも。」


リナが。


遮る。


「関係ない。」


「……。」


「今は。」


杖。


構える。


「あなたを。」


「ぶっ飛ばしたいだけ。」


「……。」


セレスティアの眉が。


ぴくりと動く。


「《ライトニング・ボルト》!」


雷。


「っ!」


リナ。


避ける。


その先。


「《アース・スパイク》!」


地面。


ゴゴゴゴッ!!


「!」


岩槍。


足元から。


避けられない。


その瞬間。


また。


頭へ。


言葉。


――影よ。


――我が身を覆い。


――災いを拒め。


「影よ――!」


リナが。


咄嗟に。


杖を。


地面へ。


「我が身を覆い――」


「災いを拒め――」


黒い魔力。


広がる。


「《シャドウ・ヴェール》!!」


ブワッ!!


リナの前。


黒い幕。


岩槍。


激突。


ドドドドン!!


「くっ……!」


全部は。


防げない。


一部。


突破。


「っ!」


肩。


脚。


保護術式。


光る。


それでも。


致命的な一撃は。


防いだ。


「防御まで……。」


セレスティアが。


呟く。


「……。」


リナが。


黒い幕を見る。


「こんなのまで……。」


だが。


その瞬間。


視界が。


ぐらりと揺れた。


「……っ。」


一歩。


ふらつく。


身体が。


重い。


魔法を使うたび。


身体の奥から。


何かを。


ごっそり。


持っていかれる。


「……。」


それでも。


リナは。


杖を構えた。


◇ ◇ ◇


「《ライトニング・ボルト》!」


「《シャドウ・ヴェール》!」


バチィィィッ!!


黒幕。


雷。


「《アイス・ランス》!」


「《ダーク・ランス》!!」


ガガガガガン!!


氷。


闇。


砕ける。


「《アクア・ショット》!」


「っ!」


水弾。


リナの肩。


直撃。


「ぐっ!」


ブゥン!!


「《アース・バレット》!」


「……っ!」


避ける。


避ける。


一発。


腹。


「がっ……!」


身体が。


折れる。


「……。」


それでも。


リナは。


倒れない。


「しつこいですわね。」


「そっちこそ……。」


リナが。


笑う。


「さっきまでより。」


「余裕ないんじゃない?」


「……。」


セレスティアの表情が。


消える。


「《ライトニング・ジャベリン》!」


バチィィィィッ!!


巨大な雷槍。


「……!」


リナ。


避けられない。


その瞬間。


頭。


また。


言葉。


――深淵より這い出る影よ。


――その身を縛り。


――我が敵の自由を奪え。


「……。」


リナの目が。


変わる。


「深淵より這い出る影よ――」


「?」


セレスティアが。


僅かに。


眉を寄せる。


「その身を縛り――」


「我が敵の自由を奪え――」


リナが。


杖を。


振り下ろす。


「《シャドウ・バインド》!!」


ズズズッ!!


「なっ!?」


セレスティアの。


足元。


影。


そこから。


黒い帯。


一気に。


伸びる。


脚。


腕。


「くっ!」


ほんの。


一瞬。


動きが。


止まる。


雷槍。


軌道。


逸れる。


バチィィィッ!!


リナの横。


通過。


「今!!」


杖。


向ける。


「《ブラック・フレア》!!」


ゴォォォォォォッ!!


「っ!」


セレスティア。


拘束。


引き千切る。


「《アクア・ウォール》!」


水壁。


ジュワァァァァ!!


突破。


「《アース・ウォール》!!」


岩壁。


ドォン!!


砕ける。


黒炎。


まだ。


残る。


「くっ――!」


セレスティアが。


身体を。


横へ。


ゴォッ!!


黒炎。


頬を。


掠める。


ブゥン!!


保護術式。


光る。


「……。」


静寂。


セレスティアが。


自分の頬へ。


触れる。


傷は。


ない。


だが。


保護術式が。


発動した。


リナの魔法が。


自分へ。


届いた。


「……。」


リナが。


肩で。


息をする。


「やっと……。」


笑う。


「当たった。」


「……。」


セレスティアの。


目が。


冷たくなる。


◇ ◇ ◇


教師席。


エルドは。


笑っていなかった。


「……。」


黒炎。


黒槍。


防御。


拘束。


次々と。


発現する。


固有魔法。


それ自体は。


問題ではない。


「……まずい。」


エルドが。


立ち上がる。


「先生?」


隣の教師が。


振り向く。


「リナを見ろ。」


「え?」


「魔法じゃない。」


「本人を見ろ。」


舞台。


リナ。


呼吸。


異常に速い。


手。


震えている。


足も。


僅かに。


ふらついている。


「覚醒したばかりの魔力を。」


「無理矢理使っている。」


「……。」


「身体が。」


「追いついていない。」


「それは……。」


「止めろ。」


エルドが。


審判を見る。


「試合を止めろ!」


「え?」


「今すぐだ!」


審判が。


舞台を見る。


「しかし。」


「両者ともまだ――」


「だから言ってるんだ!」


エルドの声が。


響く。


「リナの身体がもたない!」


「……!」


「試合を止めろ!!」


審判が。


杖を上げる。


「両者――!」


だが。


「《ライトニング・ボルト》!!」


「《ダーク・ランス》!!」


ドォォォン!!


魔法。


激突。


声が。


掻き消される。


「くそっ……!」


エルドが。


舞台を。


睨む。


二人は。


止まらない。


◇ ◇ ◇


「はぁ……。」


「はぁ……。」


リナの。


視界。


揺れる。


身体。


もう。


限界に近い。


対して。


セレスティア。


息は。


僅かに乱れているだけ。


やはり。


強い。


圧倒的に。


魔法の種類。


魔力量。


技術。


判断。


全部。


上。


覚醒しただけで。


埋まる差ではない。


「《アース・バレット》!」


ドドドドドッ!!


「っ!」


リナ。


避ける。


一発。


脚。


「くっ!」


体勢。


崩れる。


そこへ。


「《ライトニング・ボルト》!」


バチィィィッ!!


「がっ!!」


直撃。


ブゥン!!


身体。


吹き飛ぶ。


ドン!!


転がる。


止まる。


「……。」


数秒。


リナの指が。


動く。


「……まだ。」


杖。


握る。


「まだ……。」


立とうとする。


一度。


膝。


落ちる。


「……っ。」


もう一度。


立つ。


「何故ですの。」


セレスティアが。


リナを見る。


「もう。」


「立っていることすら。」


「できないでしょう?」


「……。」


「諦めなさい。」


「嫌。」


即答。


「……。」


リナが。


顔を上げる。


「二人は……。」


視線。


僅かに。


後ろ。


倒れた。


ヒルメ。


ミア。


「私のために。」


「最後まで立ってた。」


「……。」


「だったら。」


杖を。


構える。


「私だけ。」


「諦められるわけないでしょ。」


黒炎。


燃える。


「……。」


セレスティアの。


表情が。


歪む。


「なら。」


杖。


両手。


魔力。


一気に。


膨れ上がる。


「終わらせて差し上げますわ。」


◇ ◇ ◇


雷。


集まる。


バチ。


バチバチ。


バチバチバチッ!!


これまでとは。


違う。


巨大な。


魔力。


「……。」


リナが。


それを見る。


そして。


また。


頭の中。


言葉。


今までより。


長い。


重い。


聞くだけで。


身体の奥が。


震える。


――深き闇よ。


――我が怒り。


――我が悲しみ。


――我が願いを喰らい。


――全てを灼く業火となれ。


「……。」


分かる。


これ。


撃ったら。


もう。


立っていられない。


それでも。


「……いい。」


リナが。


杖を。


両手で握る。


セレスティア。


「天を駆ける雷よ――」


雷。


巨大化。


リナ。


「深き闇よ――」


黒炎。


渦。


「我が怒り――」


「我が意志に従い――」


「我が悲しみ――」


「全てを貫く神槍となれ――」


「我が願いを喰らい――」


二人。


同時。


杖を。


向ける。


「《ライトニング・ジャベリン》!!」


「全てを灼く業火となれ――」


黒炎。


爆発的に。


膨れ上がる。


「《アビス・フレア》!!」


ゴォォォォォォォォッ!!


バチィィィィィィィィッ!!


黒炎。


雷槍。


激突。


ドォォォォォォォォォォン!!!!


「ぐっ……!!」


リナの身体が。


押される。


一歩。


「……っ!」


二歩。


「この程度ですの!?」


セレスティア。


さらに。


魔力。


注ぐ。


雷。


膨れ上がる。


「くっ……!」


黒炎。


押される。


「リナ!!」


エルドの声。


「もうやめろ!!」


聞こえない。


「止めろ!!」


「試合を止めろ!!」


審判。


動こうとする。


だが。


凄まじい。


魔力の奔流。


近付けない。


「……っ。」


リナの。


膝。


落ちそうになる。


腕。


震える。


「まだ……。」


黒炎。


揺らぐ。


「まだ……!」


でも。


押される。


少しずつ。


雷が。


近付いてくる。


「……。」


リナの目から。


涙。


落ちる。


駄目なの?


ここまで。


なの?


二人が。


あんなになってまで。


守ってくれたのに。


「……っ。」


その時。


「……リナ。」


「……!」


後ろ。


小さな。


声。


ヒルメ。


倒れたまま。


動けない。


それでも。


「……いっけぇ……。」


「……。」


リナの。


目が。


見開かれる。


そして。


「……いけ……。」


もう一つ。


ミア。


同じ。


倒れたまま。


「……リナ……。」


掠れた。


声。


「……いっけぇ……。」


「……。」


リナの。


顔が。


歪む。


また。


涙。


「……ほんと。」


笑う。


泣きながら。


「馬鹿……。」


杖。


握る。


「二人とも……。」


一歩。


前。


「そんな状態で……。」


黒炎。


膨れ上がる。


「応援してんじゃ……。」


ゴォォォォォォォォォッ!!!


「なっ!?」


セレスティアの。


目が。


見開かれる。


雷。


止まる。


「……!」


そして。


僅かに。


押し返される。


「馬鹿な……!」


「私だって……。」


リナ。


一歩。


「二人に……。」


さらに。


一歩。


「格好悪いところ……。」


黒炎。


さらに。


巨大化。


「見せられないでしょぉぉぉぉ!!」


ゴォォォォォォォォォォッ!!!


「くっ……!」


セレスティアの。


足。


滑る。


「この……!」


魔力。


さらに。


注ぐ。


雷。


膨れ上がる。


だが。


止まらない。


黒炎。


少しずつ。


少しずつ。


雷を。


呑み込んでいく。


「そんな……。」


セレスティアの顔から。


余裕が。


完全に。


消える。


「私が……。」


一歩。


後ろ。


「この私が……!」


リナ。


涙。


飛ぶ。


「いっ――」


杖を。


振り抜く。


「けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


ドォォォォォォォォォォォン!!!!


黒炎が。


雷を。


完全に。


呑み込んだ。


「――っ!?」


セレスティアへ。


迫る。


「《アクア・ウォール》!!」


ザァァァン!!


一瞬。


蒸発。


「《アース・ウォール》!!」


ゴゴゴッ!!


ドォン!!


粉砕。


「なっ――」


黒炎。


直撃。


ドォォォォォォン!!!!


「きゃああああああっ!!」


セレスティアの身体が。


大きく。


吹き飛んだ。


ブゥゥゥゥン!!


保護術式。


激しく。


輝く。


ドン!!


石床。


転がる。


「……。」


静寂。


「はぁ……。」


「はぁ……。」


リナ。


杖に。


身体を預ける。


視界。


揺れる。


それでも。


倒れた。


セレスティアを。


見つめる。


「……。」


ほんの少し。


口元が。


緩む。


「や……。」


息。


続かない。


もう一度。


「や、やった……。」


そのまま。


力が。


抜けた。


「……っ。」


杖が。


手から。


滑り落ちる。


カラン――


リナの身体も。


その場へ。


崩れ落ちた。


ドサッ。


「……。」


ヒルメ。


ミア。


そして。


リナ。


三人とも。


舞台に。


倒れている。


◇ ◇ ◇


「……許さない。」


「……?」


低い声。


倒れていた。


セレスティア。


その指が。


動く。


「私が……。」


石床を。


掴む。


ゆっくり。


身体を。


起こす。


髪。


乱れ。


制服。


焦げ。


その顔から。


理性が。


消えかけている。


「私が……!」


杖を。


拾う。


「この私が……!!」


ドォン!!


魔力。


爆発。


「……!」


エルドの表情が。


変わった。


「セレスティア!」


聞かない。


セレスティアの目。


倒れた。


リナ。


ただ一人。


「許しませんわ……。」


杖先。


魔力。


集まる。


「絶対に……!」


「やめろ!!」


エルドが。


叫ぶ。


「もう試合は終わりだ!」


だが。


止まらない。


倒れている。


リナへ。


杖。


向ける。


「この私に……。」


魔力。


さらに。


膨れ上がる。


「傷を……。」


「――おやめなさい。」


静かな声。


「……!」


セレスティアの動きが。


止まる。


観客席。


アリシア。


立っている。


「……アリシア。」


「そこまでです。」


アリシアが。


微笑んでいる。


いつもの。


穏やかな笑顔。


「杖を。」


一拍。


「下ろしなさい。」


「……。」


セレスティアの。


口元が。


歪む。


「……嫌ですわ。」


「……。」


「これは。」


「私とこの女の問題です!」


再び。


杖。


リナへ。


「邪魔をなさらないでくださいませ!」


「……。」


アリシアは。


笑顔のまま。


黙っている。


「聞こえませんでしたか!?」


「関係ありませんわ!」


セレスティアが。


声を荒らげる。


「この女が!」


「私を――」


「よろしい。」


「……え?」


静かな声。


セレスティアが。


止まる。


アリシアが。


階段を。


一段。


下りる。


「そこまで。」


「仰るのでしたら。」


もう一段。


「私が。」


微笑む。


「お相手いたしましょう。」


「……何を。」


アリシアが。


舞台へ。


降りる。


「ちょうど。」


コツ。


靴音。


「私も。」


コツ。


「非常に。」


杖を。


取り出す。


「腹が立っておりますので。」


「……。」


セレスティアが。


アリシアを見る。


「殿下だからといって――」


次の瞬間。


ドン。


「――っ!?」


セレスティアの。


声が。


止まった。


ただ。


魔力。


アリシアが。


魔力を。


解放した。


それだけ。


なのに。


舞台が。


軋む。


ゴゴゴゴゴゴゴ……。


空気。


重い。


観客席。


誰一人。


声を出せない。


「……何。」


セレスティアの。


顔から。


怒りが。


消える。


「何ですの……。」


アリシアの髪が。


膨大な魔力に。


揺れている。


「アリシア!」


エルドが。


思わず。


声を上げる。


「魔力を抑えろ!」


「……。」


アリシアは。


聞いていない。


ただ。


笑っている。


セレスティアへ。


向かって。


「さあ。」


一歩。


「杖を構えなさい。」


「……。」


セレスティアの。


手が。


僅かに。


震える。


「何を……。」


「先ほどまで。」


アリシアが。


微笑む。


「ヒルメさんを。」


一歩。


「ミアさんを。」


さらに。


一歩。


「そして。」


視線。


倒れた。


リナ。


「リナさんを。」


魔力。


さらに。


強くなる。


「随分と。」


笑顔。


崩れない。


「いたぶっておられたではありませんか。」


「……っ。」


「ですから。」


アリシアが。


杖を。


構える。


「今度は。」


静かに。


「私が。」


セレスティアへ。


杖先を。


向ける。


「貴女に。」


「同じことを。」


笑う。


「して差し上げます。」


「……。」


「貴女が。」


魔力。


さらに。


膨れ上がる。


「三人にしていたように。」


「ゆっくりと。」


「丁寧に。」


「いたぶって差し上げましょう。」


「……!」


セレスティアが。


一歩。


後ろへ。


下がった。


「さあ。」


アリシアが。


笑顔のまま。


首を。


僅かに。


傾ける。


「早くなさい。」


「……。」


「先ほどまでの。」


美しい。


笑顔。


「威勢は。」


魔力。


コロシアム全体を。


震わせる。


「どうなさったのです?」


「……。」


誰も。


動けない。


誰もが。


知っている。


王女。


アリシア。


だが。


王族だから。


恐れられているのではない。


「……。」


セレスティアが。


唇を。


噛む。


アリシアは。


笑ったまま。


静かに。


告げた。


「私の友人を。」


一拍。


「いたぶった罪は。」


杖先。


眩い魔力。


集まる。


「万死に値します。」


「……!」


静寂。


この国の王女。


そして。


――この国最強の魔術師。


アリシア。


「さあ。」


笑顔。


そのまま。


「始めましょうか。」


セレスティアは。


杖を構えることすら。


躊躇していた。


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