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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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50/66

三人なら、戦える

◇ ◇ ◇



「私がお相手いたしますわ。」


セレスティアの声が。


静かに。


コロシアムへ響いた。


「……。」


ヒルメ。


リナ。


ミア。


三人が。


杖を構える。


三対一。


数だけなら。


圧倒的に有利。


だが。


誰一人。


そうは思っていなかった。


「……来る。」


リナが呟く。


次の瞬間。


セレスティアの姿が。


消えた。


「え――」


「右!!」


リナの声。


ヒルメが。


反射的に杖を振る。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!!


光壁。


その直後。


ドォン!!


「っ!?」


衝撃。


結界が。


大きく揺れる。


「何!?」


ヒルメが。


結界の向こうを見る。


炎。


巨大な火球が。


光壁へ叩きつけられていた。


「《ファイア・ボール》……?」


ミアが。


目を見開く。


同じ魔法。


リナも使う。


だが。


大きさも。


威力も。


まるで違う。


「まだですわ。」


「!」


セレスティア。


杖。


次。


「《アイス・ランス》。」


ヒュン!!


氷。


「ミア!」


「うん!」


横へ飛ぶ。


ガキィィン!!


さっきまで。


ミアが立っていた場所。


巨大な氷槍が。


石床へ突き刺さる。


「ちょっと……。」


ミアの顔から。


笑みが消える。


「速すぎない?」


「来るわよ!」


リナが叫ぶ。


「《ファイア・ボール》!」


炎。


セレスティアへ。


「遅いですわ。」


杖を。


軽く振る。


「《アクア・ショット》。」


バシュッ!!


水弾。


炎へ。


ジュワァァァッ!!


一瞬で。


消える。


「……!」


「リナ!」


ヒルメが叫ぶ。


白い蒸気。


その中。


何かが光る。


「《ライトニング・ボルト》。」


バチィィィッ!!


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!!


雷。


光壁。


激突。


バチバチバチッ!!


「くっ……!」


ヒルメの身体が。


僅かに押される。


「ヒルメ!」


「大丈夫!」


だが。


その瞬間。


「上!」


「え?」


セレスティアの声。


上空。


氷。


五本。


十本。


「《アイス・レイン》。」


「っ!」


降る。


「ヒルメ!」


「分かってる!」


杖を。


上。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァァン!!


大きな光壁。


三人の頭上。


ガガガガガガッ!!


氷。


次々と。


叩きつけられる。


「……っ!」


一枚。


耐える。


「すごい!」


ミアが。


思わず言う。


「ヒルメ!」


リナ。


「そのまま!」


「え?」


「守って!」


「うん!」


リナとミアが。


同時に飛び出した。



◇ ◇ ◇



「ミア!」


「右から行く!」


「私は左!」


二人。


左右。


セレスティアを挟む。


「炎よ――!」


リナ。


「《ファイア・ボール》!」


「《ウィンド・ランス》!」


同時。


炎。


風。


左右から。


「……。」


セレスティアは。


動かない。


「当たる!」


ミアが叫ぶ。


その瞬間。


「《アクア・ウォール》。」


ザァァァン!!


水壁。


炎を。


呑み込む。


「!」


さらに。


「《エア・バースト》。」


ドンッ!!


「きゃっ!」


ミアの風槍が。


弾け飛ぶ。


「嘘!?」


「ミア!」


「平気!」


着地。


だが。


セレスティアは。


すでに。


次の魔法を放っている。


「《アース・バレット》。」


ドドドドドッ!!


「うわっ!」


「ミア!」


ガン!


ガン!


ガン!


ヒルメ。


遠距離から。


ミアの前へ。


小さな光壁を。


次々と出す。


岩弾。


全て。


弾く。


「ありがとう!」


「うん!」


「リナ!」


ヒルメが叫ぶ。


「今!」


「分かってる!」


背後。


リナ。


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!!


至近距離。


「もらった!」


だが。


セレスティアが。


振り返る。


「何をですの?」


「……!」


「《アクア・シールド》。」


バシャァン!!


炎。


消える。


「そんな――」


「近いですわね。」


「!」


杖先。


リナへ。


「《ライトニング・ボルト》。」


バチィィッ!!


「リナ!!」


ガァン!!


光壁。


ギリギリ。


雷を防ぐ。


「……っ!」


リナが。


後ろへ跳ぶ。


「ヒルメ!」


「大丈夫!?」


「私は平気!」


「違う!」


リナが叫ぶ。


「あなた!」


「え?」


ヒルメの額。


汗。


「……。」


ヒルメが。


自分の額を触る。


「あ。」


「魔力。」


リナが。


セレスティアから目を離さず言う。


「さっき全力で撃ったでしょ。」


「……うん。」


「結界も出しすぎ。」


「でも。」


「まだ大丈夫。」


「今はね。」


リナが。


杖を握り直す。


「このままじゃ。」


「先にヒルメが尽きる。」


「……。」


ミアも。


ヒルメを見る。


「確かに。」


「どうする?」


「……。」


リナが。


セレスティアを見る。


一方。


セレスティア。


呼吸。


乱れていない。


魔力も。


まだ。


余裕がある。


「……化け物。」


リナが呟く。


「聞こえていますわよ。」


「聞こえるように言ったの。」


「まあ。」


セレスティアが。


薄く笑う。


「ですが。」


「少し意外でしたわ。」


「……何が?」


「あなた方です。」


杖を。


ゆっくり下ろす。


「一か月前なら。」


「もう終わっていましたわ。」


「……。」


「特に。」


視線。


ヒルメへ。


「あなた。」


「その結界。」


「以前より。」


「随分と厄介になりましたわね。」


「ありがとう。」


「褒めていませんわ。」


「え?」


「ヒルメ。」


リナが。


ため息をつく。


「今のは分かりなさい。」


「……。」


セレスティアの眉が。


僅かに動く。


「本当に。」


「腹立たしい方ですこと。」


「ごめん?」


「謝らないでくださる!?」


「ええ!?」


「ヒルメ!」


「はい!」


「集中!」


「はい!」



◇ ◇ ◇



セレスティアが。


杖を構える。


「では。」


「少し。」


「速度を上げますわ。」


「……え?」


ミアが。


嫌な顔をする。


「今まで本気じゃなかったの?」


「来る!」


リナ。


瞬間。


「《ライトニング・ボルト》。」


雷。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガン!!


「《アイス・ランス》。」


左。


ガン!!


「《アース・バレット》。」


右。


ガガガン!!


「《ファイア・ボール》。」


正面。


ドォン!!


「っ……!」


ヒルメ。


四方向。


次々と。


結界。


一枚。


二枚。


三枚。


四枚。


小さく。


薄く。


必要な瞬間だけ。


展開。


消す。


展開。


消す。


一か月。


繰り返した。


魔力操作。


それがなければ。


とっくに。


崩れていた。


「ヒルメすごい……!」


ミアが呟く。


「見てないで動く!」


「はい!」


二人。


飛び出す。


だが。


「……。」


セレスティアが。


僅かに笑う。


「やはり。」


「?」


その目。


ヒルメではない。


ミアでもない。


リナ。


「……。」


セレスティアは。


見ていた。


先ほどから。


指示を出しているのは。


誰か。


ヒルメの結界。


ミアの風。


二人の力を。


最も効率よく。


動かしている者。


「なるほど。」


「何?」


リナが。


足を止める。


「あなたですのね。」


「……。」


「この三人を。」


セレスティアが。


杖を向ける。


「動かしているのは。」


「……!」


リナの表情が。


変わる。


「ヒルメ!」


「うん!」


ガァン!!


リナの前。


光壁。


直後。


ドォン!!


炎。


「っ!」


「リナ、下がって!」


「分かってる!」


横へ。


「《アイス・ランス》。」


「!」


ガン!!


また。


ヒルメ。


防ぐ。


「《アース・バレット》。」


ガガガン!!


「くっ……!」


三枚目。


「《ライトニング・ボルト》。」


バチィィッ!!


「ヒルメ!」


「大丈夫!」


四枚目。


「……。」


リナが。


気付く。


全部。


自分。


「……私?」


「そうですわ。」


セレスティアが。


微笑む。


「まずは。」


「あなたから。」


「……。」


「随分と。」


「楽しそうでしたわね。」


「この一か月。」


「……何?」


「お友達ができて。」


「……。」


リナの顔から。


表情が消える。


「よかったですわね。」


「ずっと。」


「一人だったあなたに。」


「ようやく。」


「一緒にいてくださる方ができて。」


「……黙って。」


「ですが。」


セレスティアが。


笑う。


「勘違いなさらない方が。」


「よろしいのではなくて?」


「……。」


「少し一緒に戦った程度で。」


「本当のお友達になれたなどと――」


「黙れ!!」


炎。


ボォッ!!


リナの周囲。


魔力が。


一気に膨れ上がる。


「リナ!」


ヒルメが。


驚いて振り返る。


「……。」


リナ自身も。


気付いていない。


その炎。


ほんの一瞬。


ほんの僅か。


赤い炎の奥。


黒。


混じった。


「……?」


ヒルメの目が。


僅かに見開かれる。


今。


何か。


「リナ!」


「何!?」


「今――」


「後!」


「!」


セレスティア。


「《ライトニング・ボルト》。」


バチィィィッ!!


「っ!」


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!!


間一髪。


防ぐ。


「ヒルメ!」


「ごめん!」


「戦ってる最中!」


「うん!」


「……。」


ヒルメは。


もう一度。


リナを見る。


炎。


普通。


赤い。


「……。」


見間違い?


いや。


前にも。


見た。


修行中。


リナの魔法。


一瞬だけ。


混じった。


黒。


「……。」


ヒルメの胸に。


小さな違和感が残る。


だが。


考えている暇はない。



◇ ◇ ◇



「ミア!」


リナが叫ぶ。


「左!」


「うん!」


「ヒルメ!」


「右!」


「分かった!」


三人。


動く。


セレスティア。


中央。


「《ファイア・ボール》!」


リナ。


正面。


「《ウィンド・ランス》!」


ミア。


左。


そして。


ヒルメ。


右。


「《セイクリッド・レイ》!」


三方向。


「……!」


セレスティアの目が。


初めて。


僅かに見開かれる。


「《アクア・ウォール》!」


炎。


防ぐ。


「《エア・バースト》!」


風。


弾く。


だが。


光。


「っ!」


ヒルメの《セイクリッド・レイ》。


さっきほどではない。


全力ではない。


それでも。


速い。


セレスティアが。


身体を捻る。


シュン!!


光が。


頬を掠めた。


「……。」


一筋。


髪。


落ちる。


静寂。


「……当たった。」


ミアが。


呟く。


「違う。」


リナ。


「掠っただけ。」


それでも。


初めて。


セレスティアの顔から。


余裕が消えた。


「……。」


自分の頬へ。


指を当てる。


傷はない。


保護術式。


だが。


当てられた。


「……私に。」


セレスティアが。


小さく呟く。


「……。」


ヒルメが。


杖を構える。


「三人なら。」


「……?」


「戦える。」


「……。」


「一人じゃ無理でも。」


ヒルメが。


リナを見る。


ミアを見る。


「三人なら。」


「ちゃんと。」


「セレスティアとも戦えるよ。」


「……。」


ミアが。


笑う。


「うん。」


リナも。


一瞬。


目を丸くして。


それから。


笑った。


「当たり前でしょ。」


三人。


並ぶ。


「……。」


セレスティアが。


それを見る。


その顔から。


笑みが。


完全に消えた。



◇ ◇ ◇



「……不愉快ですわ。」


セレスティアの声が。


低くなる。


「え?」


ヒルメが首を傾げる。


「何が?」


「すべてです。」


杖。


握る。


「あなた方が。」


「楽しそうにしていることも。」


「互いを信頼していることも。」


「そして。」


視線。


リナ。


「あなたが。」


「そんな顔をしていることも。」


「……。」


リナが。


セレスティアを見る。


「何よ。」


「私が笑っちゃ悪い?」


「……ええ。」


セレスティアの周囲。


魔力。


先ほどより。


明らかに。


濃くなる。


「気に入りませんわ。」


「……来る。」


リナが。


小さく呟く。


「ヒルメ。」


「うん。」


「ミア。」


「うん。」


「ここから。」


リナが。


杖を構える。


「もっと来る。」


セレスティア。


杖先。


光。


集まる。


「では。」


「どこまで。」


「そのお友達ごっこが。」


「続くのか。」


冷たい笑み。


「試して差し上げますわ。」


「……。」


リナの目が。


鋭くなる。


「友達ごっこじゃない。」


「そうですの?」


「ええ。」


一歩。


前へ。


その横へ。


ヒルメ。


反対側。


ミア。


三人。


肩を並べる。


「だったら。」


リナが。


杖を向けた。


「自分で確かめなさい。」


セレスティアの魔力が。


弾けた。



◇ ◇ ◇



観客席。


アリシアは。


静かに。


その戦いを見つめていた。


「……。」


その表情から。


先ほどまでの笑みが。


消えている。


セレスティア。


明らかに。


攻撃が強くなっている。


そして。


狙い。


「……リナさん。」


アリシアが呟く。


その時。


隣。


教師席。


エルドも。


僅かに眉を寄せていた。


「……。」


視線は。


セレスティアではない。


リナ。


先ほど。


一瞬だけ。


炎に混じった。


黒。


「……まさかな。」


小さな声。


誰にも。


聞こえない。


舞台。


再び。


魔法が。


激突する。


三人は。


まだ。


立っている。


だが。


誰も。


まだ知らない。


この戦いが。


ここから。


さらに。


激しくなることを。


そして。


セレスティアが。


次に狙うものが。


勝利だけでは。


なくなり始めていることを――。

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