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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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48/66

光の牢獄

◇ ◇ ◇



『次の試合!』


教師の声が。


コロシアムへ響き渡った。


『ヒルメ、リナ、ミア組!』


『対するは――貴族クラス、エリオット、ヴァン、クラリス組!』


「呼ばれた。」


ヒルメが立ち上がる。


「行くわよ。」


リナも杖を手に取る。


「うん。」


ミアも続いた。


三人が舞台へ向かおうとした、その時。


「ワン!」


「あ。」


ヒルメが振り返る。


シロが。


自分も行くと言わんばかりに立ち上がっている。


「駄目。」


「ワウ。」


「応援係。」


「……。」


「そんな顔しても駄目。」


「クゥン……。」


「終わったらいっぱい撫でてあげるから。」


「ワン!」


「分かったのかな。」


ミアが笑う。


「撫でるところだけ分かったんじゃない?」


「シロは賢いよ。」


「はいはい。」


「リナ!」


「置いてくわよ。」


「待って!」


三人は。


並んで舞台へと向かった。



◇ ◇ ◇



階段を上がる。


歓声が。


徐々に大きくなっていく。


そして。


三人が舞台へ姿を現した瞬間。


「……。」


向かい側。


すでに三人の貴族生徒が待っていた。


男子二人。


女子一人。


三人とも。


これまで戦ってきた相手とは。


少し雰囲気が違う。


「……。」


リナの表情が。


僅かに硬くなった。


「どうしたの?」


ヒルメが聞く。


「別に。」


「緊張?」


「違う。」


「じゃあ――」


「ヒルメ。」


ミアが。


小さな声で止める。


「前。」


「え?」


向かい側。


三人のうち。


中央に立つ男子生徒が。


こちらを見ていた。


いや。


正確には。


ヒルメではない。


リナを。


「……。」


その口元に。


薄い笑みが浮かんでいる。


「まさか。」


男子生徒――エリオットが口を開いた。


「ここまで残っているとはな。」


「……。」


リナは答えない。


「運が良かったようだ。」


その隣。


ヴァンが笑う。


「一般クラスにしては頑張ったんじゃないか?」


「そうね。」


クラリスも。


リナたちを見ながら。


小さく笑った。


「十分でしょう。」


「ここまで来られたのですから。」


「……。」


ヒルメが。


三人を見る。


そして。


リナを見る。


「知り合い?」


「知らない。」


即答。


「え。」


「顔くらいは見たことあるけど。」


リナは。


それだけ言った。


「そうなんだ。」


ヒルメが。


再び三人を見る。


「じゃあ何であんなに偉そうなの?」


「ヒルメ。」


「何?」


「聞こえる。」


「聞こえるように言った。」


「……。」


ミアが。


思わず口元を押さえた。


「ちょっと。」


「何よ。」


「笑ってない。」


「笑ってるよ。」


「笑ってないって。」


向かい側。


エリオットの眉が。


僅かに動いた。


「……随分と余裕だな。」


「うん。」


ヒルメが答える。


「楽しいから。」


「……。」


「三人で戦うの。」


ヒルメは。


本当に。


それだけの意味で言った。


だが。


エリオットたちには。


そう聞こえなかった。


「……そうか。」


笑みが消える。


「なら。」


「その余裕がいつまで続くか。」


「見せてもらおう。」


「双方。」


審判の教師が。


間へ入る。


「位置につけ。」


六人が。


それぞれ距離を取った。


ヒルメ。


中央。


ミア。


右。


リナ。


左。


向かい側も。


三人が横へ広がる。


「リナ。」


ヒルメが小さく呼ぶ。


「何?」


「いつも通り?」


「……ええ。」


リナが。


相手を見ながら答える。


「まずは様子を見る。」


「分かった。」


「ミア。」


「うん。」


「無理に前へ出ないで。」


「了解。」


三人が。


杖を構える。


審判が。


片手を上げた。


「始め!」



◇ ◇ ◇



最初に動いたのは。


貴族側だった。


「《ライトニング・ボルト》!」


バチィッ!!


雷。


速い。


「ヒルメ!」


「うん!」


杖を振る。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


光の壁。


バチバチバチッ!!


雷が。


結界へ激突する。


「……っ。」


ヒルメの腕に。


僅かな衝撃。


「強い。」


これまでとは違う。


だが。


防げる。


「右!」


リナが叫ぶ。


「《ストーン・ランス》!」


ヴァン。


地面から。


岩の槍が突き出す。


「ミア!」


「分かってる!」


ミアが横へ跳ぶ。


そのまま。


「大気を巡る風よ――!」


杖を構える。


だが。


「遅い。」


クラリス。


「《アクア・ショット》!」


バシュッ!


「!」


水弾。


ミアが。


咄嗟に身体を捻る。


バン!


「きゃっ!」


肩。


直撃。


「ミア!」


「大丈夫!」


転送されない。


まだ戦える。


「くっ……。」


ミアが。


肩を押さえながら立ち上がる。


「結構痛い……。」


「言っただろう。」


エリオットが笑う。


「ここまでだ。」


「……。」


リナが。


三人を見る。


連携。


速い。


一人が攻撃。


避けた先へ。


次の攻撃。


そして。


三人目。


「ヒルメ。」


「うん?」


「少し下がる。」


「分かった。」


「ミア。」


「大丈夫。」


ミアが立つ。


「まだいける。」


三人が。


少し距離を取る。



◇ ◇ ◇



「逃がすか!」


ヴァンが。


杖を地面へ向ける。


「《ストーン・スパイク》!」


ゴゴゴゴッ!


石床から。


無数の岩が突き出す。


「ヒルメ!」


「任せて!」


杖へ。


魔力。


流す。


大きすぎない。


必要な場所。


必要な量。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


足元。


斜め。


光の壁。


岩の槍が。


その表面で弾かれる。


「……何?」


ヴァンの顔が変わる。


「壁を足元に?」


「今!」


リナが叫ぶ。


ミアが。


光の壁を蹴った。


「え!?」


結界を。


足場に。


跳ぶ。


「大気を巡る風よ――我が意志に従い、敵を貫く一条の槍となれ――」


空中。


「《ウィンド・ランス》!」


バシュッ!!


「くっ!」


ヴァンが。


横へ飛ぶ。


風の槍が。


肩を掠める。


「外した!」


「違う!」


リナ。


すでに。


その先へ回り込んでいる。


「炎よ――我が手に集いて、小さき火球となり敵を撃て――」


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!!


「なっ――!」


直撃。


ヴァンの身体が。


吹き飛ぶ。


だが。


「《アクア・シールド》!」


クラリス。


水の盾。


ギリギリ。


ヴァンを受け止める。


「助かった!」


「油断しないで!」


「……。」


リナが舌打ちする。


「今のを助けるのね。」


「向こうも連携してる。」


ミアが。


ヒルメの横へ戻る。


「どうする?」


「……。」


リナが。


考える。


そして。


「ヒルメ。」


「何?」


「結界。」


「うん。」


「今みたいに。」


「壁じゃなくて使える?」


「……?」


ヒルメが首を傾げる。


「どういうこと?」


「相手の動きを。」


リナが。


三人を見る。


「邪魔するの。」


「……。」


ヒルメが。


少し考える。


「あ。」


「できそう?」


「やってみる。」


「本番で試すの!?」


ミアが突っ込む。


「ヒルメだもの。」


リナが答える。


「リナまで!?」


「来る!」


エリオット。


再び。


雷。


「《ライトニング・ボルト》!」


「ヒルメ!」


「うん!」


ガァン!


正面。


防ぐ。


その瞬間。


「今!」


リナとミアが。


左右へ走る。


「同じ手を!」


ヴァンが。


ミアへ杖を向ける。


「《ストーン――》」


ガンッ!


「なっ!?」


目の前。


突然。


小さな光の壁。


「邪魔!」


横へ。


避ける。


ガンッ!


「!」


また。


光の壁。


「何だこれ!?」


右。


左。


前。


ヴァンが。


動こうとする先へ。


次々と。


《ガーディアン・プリズン》が現れる。


「……。」


ヒルメが。


杖を動かす。


一枚。


二枚。


三枚。


小さく。


薄く。


長く維持する必要はない。


一瞬。


邪魔できればいい。


「こっち!」


ヴァンが。


左へ飛ぶ。


「はい。」


ガンッ!


「うわっ!」


壁。


「何なんだよ!」


「牢獄だから。」


ヒルメが答える。


「閉じ込めるのが正しい使い方かなって。」


「……。」


リナが。


走りながら。


一瞬だけヒルメを見る。


(この子……。)


一か月。


魔力を細かく扱う練習。


それが。


《セイクリッド・レイ》だけではなく。


固有魔法そのものを。


変え始めている。



◇ ◇ ◇



「ふざけるな!」


ヴァンが。


強引に杖を振る。


「《ストーン・クラッシュ》!」


ドォン!


光の壁を。


岩が破壊する。


「やった!」


だが。


その先。


「こんにちは。」


ミア。


「!」


「《ウィンド・ランス》!」


バシュッ!!


直撃。


「ぐっ!」


ヴァンが。


吹き飛ぶ。


ブゥン!!


魔法陣。


パァン!


光。


転送。


『戦闘不能!』


「一人!」


ミアが叫ぶ。


「くっ……!」


クラリスが。


ヴァンの消えた場所を見る。


「よくも――」


「クラリス!」


エリオットが叫ぶ。


「冷静になれ!」


「でも!」


「二対三だ。」


「守りに――」


その時。


「リナ!」


ヒルメの声。


「え?」


「今!」


「……!」


目の前。


クラリス。


リナは。


考えず。


杖を向けた。


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!


「《アクア・シールド》!」


ジュワァァッ!!


炎。


水。


蒸気。


視界が。


白く染まる。


「見えない!」


クラリスが叫ぶ。


その瞬間。


「《ウィンド・ショット》!」


バン!


「きゃっ!」


ミア。


横から。


クラリスが。


体勢を崩す。


「ヒルメ!」


「うん!」


「《セイクリッド・レイ》!」


シュン!


光。


直撃。


ブゥン!


パァン!


クラリス。


転送。


『戦闘不能!』


「あと一人!」


ミアが。


笑う。


「……。」


エリオットの表情から。


完全に余裕が消えていた。



◇ ◇ ◇



「……一般クラス風情が。」


小さな声。


ヒルメには。


聞こえなかった。


だが。


リナには。


聞こえた。


「……。」


リナの表情が変わる。


エリオットが。


杖を握り締める。


「俺たちが。」


「お前たちなんかに――」


魔力。


膨れ上がる。


「《ライトニング・ボルト》!」


バチィィッ!!


ヒルメへ。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


防ぐ。


だが。


「まだだ!」


もう一発。


「《ライトニング・ボルト》!」


バチィッ!


別方向。


「ヒルメ!」


「大丈夫!」


二枚目。


ガン!


防ぐ。


「まだ!」


三発目。


「……っ!」


ヒルメが。


杖を動かす。


三枚目。


バチィィッ!!


「ヒルメ!」


ミアが。


前へ出ようとする。


「来なくていい!」


「え?」


ヒルメが。


結界越しに。


エリオットを見る。


「私。」


「大丈夫だから。」


「……。」


リナが。


ヒルメを見る。


その顔。


余裕がある。


「……ミア。」


「何?」


「左右。」


「分かった。」


二人が。


動く。


「来るな!」


エリオットが。


杖を向ける。


「《ライトニング――》」


ガンッ!


「なっ!?」


目の前。


小さな光の壁。


視界が。


塞がれる。


「邪魔だ!」


横へ。


「はい。」


ガンッ!


「また!?」


反対。


ガンッ!


「くそっ!」


前。


右。


左。


光。


光。


光。


完全に。


動きを封じられる。


「……これ。」


ヒルメが。


少し嬉しそうに言う。


「本当に牢獄みたい。」


「今気付いたの!?」


ミアが叫ぶ。


「名前にプリズンって入ってるでしょ!」


「あ。」


「遅い!」


「でも。」


ヒルメが。


杖を握る。


「これなら。」


「三人で戦いやすいね。」


「……。」


リナが。


一瞬。


笑う。


「そうね。」


そして。


杖を構えた。


「終わらせるわよ。」


「うん!」


「了解!」


三方向。


ヒルメ。


リナ。


ミア。


中央。


光の壁に囲まれた。


エリオット。


「ふざけるな!」


「俺は貴族だぞ!」


「だから?」


ヒルメが。


首を傾げる。


「……っ!」


「ここ。」


ヒルメが言う。


「対抗戦でしょ?」


「だったら。」


杖を構える。


「どっちが強いか。」


「それだけじゃないの?」


「……。」


観客席。


一瞬。


静かになる。


「ヒルメ。」


リナが呼ぶ。


「何?」


「今だけ。」


「ちょっと格好良かった。」


「今だけ!?」


「集中!」


「はい!」


三人。


杖を向ける。


「《ファイア・ボール》!」


「《ウィンド・ランス》!」


そして。


ヒルメ。


「《セイクリッド・レイ》!」


炎。


風。


光。


三つ。


同時。


ドォォォォン!!


ブゥン!!


保護術式が。


強く輝く。


パァン!


エリオットの身体が。


光に包まれた。


転送。


静寂。


そして――


『勝者!』


教師が。


大きく手を上げる。


『ヒルメ、リナ、ミア組!』


ワァァァァァァァ!!


大歓声。


「やった!」


ミアが。


飛び跳ねる。


「勝った!」


「うん!」


ヒルメも笑う。


「リナ!」


「分かってる。」


リナが。


二人のところへ歩いてくる。


三人。


手を重ねる。


「あと何回?」


ヒルメが聞く。


「知らない。」


「え。」


「今は。」


リナが笑う。


「勝ったこと喜べばいいでしょ。」


「うん!」


三人が。


笑った。



◇ ◇ ◇



その様子を。


貴族席。


アリシアが。


静かに見つめていた。


「……。」


特に。


ヒルメ。


《ガーディアン・プリズン》。


以前とは。


まるで違う。


ただ守るだけではない。


足場。


妨害。


分断。


そして。


拘束。


「ようやく。」


アリシアが。


小さく笑う。


「その魔法らしくなってきましたね。」


だが。


次の瞬間。


アリシアの視線が。


別の場所へ向いた。


セレスティア。


「……。」


セレスティアは。


笑っていなかった。


先ほどまで。


余裕の表情で。


ヒルメたちを見ていた。


それが。


今は。


冷たい目で。


舞台を見つめている。


「……。」


そして。


アリシアは気付く。


舞台から戻ってきた。


エリオット。


そのエリオットへ。


セレスティアが。


一瞬だけ。


視線を向けたことに。


「……。」


アリシアの目が。


僅かに細くなった。



◇ ◇ ◇



試合は。


さらに進んだ。


勝ち残るチームは。


もう。


僅か。


ヒルメたち。


アリシアたち。


そして。


セレスティアたち。


トーナメント表。


三本の線が。


少しずつ。


中央へ近付いていく。



◇ ◇ ◇



休憩時間。


「疲れたぁ。」


ミアが。


椅子へ倒れ込む。


「肩大丈夫?」


ヒルメが聞く。


「うん。」


ミアが。


最初に受けた場所を回す。


「もう平気。」


「よかった。」


「ヒルメは?」


「元気。」


「知ってた。」


「なんで?」


「ずっと元気だから。」


リナが。


水を飲みながら言う。


「でも。」


「さすがに魔力は減ってるでしょ?」


「うーん。」


ヒルメが。


自分の手を見る。


「少し?」


「……。」


「何?」


「何でもない。」


「リナは?」


「私は結構使ってる。」


「じゃあ次。」


ヒルメが言う。


「私がもっと守る。」


「……。」


リナが。


ヒルメを見る。


「何?」


「別に。」


「でも。」


少しだけ。


笑う。


「頼りにしてる。」


「うん!」


「私も!」


ミアが手を上げる。


「任せて!」


「あなたは休みなさい。」


「はい。」


「リナお母さん。」


「ヒルメ。」


「はい。」


その時。


コロシアムに。


教師の声が響いた。


『次の組み合わせを発表する!』


三人が。


トーナメント表を見る。


光が。


動いていく。


「……。」


一本。


ヒルメたちの名前。


そして。


その先。


次の対戦相手が。


表示された。


「……。」


ミアが。


息を呑む。


リナの表情が。


固まった。


ヒルメも。


その名前を見る。


貴族クラス。


三人。


その中央。


セレスティア。


「……来た。」


ミアが呟く。


「うん。」


ヒルメが。


ゆっくり立ち上がる。


リナも。


杖を握る。


少し離れた場所。


セレスティアも。


立ち上がっていた。


視線が。


ぶつかる。


「……。」


セレスティアが。


薄く笑う。


そして。


その口が。


小さく動いた。


――ようやくですわね。


ヒルメには。


聞こえなかった。


けれど。


なぜか。


そう言われたような気がした。


三人が。


並ぶ。


ヒルメ。


リナ。


ミア。


一か月。


共に修行してきた。


笑って。


失敗して。


助け合って。


ようやく。


ここまで来た。


そして。


次の相手は。


三人が。


この大会で。


最も戦いたくて。


最も戦わなければならない相手。


セレスティア。


その時。


ヒルメはまだ知らなかった。


この試合で。


リナの中に眠るものが。


ついに。


目を覚ますことを――。

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