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異世界送魂師ヒルメ 〜葬儀社勤務だった私の送魂は、誰にも救えなかった魂を救っていく〜  作者: ケンボー


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47/66

三人の連携

◇ ◇ ◇



「始め!」


教師の声が響いた。


その瞬間。


「来る!」


リナが叫ぶ。


向かい側の三人が。


一斉に杖を構えた。


「炎よ――!」


「大地よ――!」


「風よ――!」


三つ。


同時。


「ヒルメ!」


「うん!」


ヒルメが一歩前へ出る。


以前なら。


ここで。


ただ大きな結界を出していた。


けれど。


今は違う。


どこへ。


どれくらい。


どれだけの魔力を流せばいいのか。


一か月の修行で。


少しずつ分かるようになった。


「聖なる光よ――我が祈りに応え、堅牢なる守護の牢獄となれ!」


杖を振る。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


三人の正面。


光の壁が現れる。


直後。


ドドドン!!


炎。


岩。


風。


三つの魔法が。


光の壁へ激突した。


「……!」


衝撃。


しかし。


結界は揺れただけ。


壊れない。


「今!」


リナが叫ぶ。


「ミア!」


「うん!」


ミアが。


ヒルメの右側から飛び出す。


「大気を巡る風よ――我が意志に従い、敵を貫く一条の槍となれ――」


相手の一人が気付く。


「右だ!」


「遅い!」


ミアが杖を振る。


「《ウィンド・ランス》!」


バシュッ!


風の槍が。


一直線に飛ぶ。


「《ストーン・ウォール》!」


地面から。


石の壁がせり上がる。


ドォン!


風の槍と。


石壁が激突。


「防がれた!」


「次!」


リナは。


すでに左へ走っていた。


「炎よ――我が手に集いて、小さき火球となり敵を撃て――」


走りながら。


杖を構える。


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!


「くっ!」


相手の女子生徒が。


横へ跳ぶ。


火球が。


そのすぐ横を通過した。


「外した!」


「わざとよ!」


「え?」


火球を避けた先。


そこには。


「こんにちは。」


「!」


ヒルメ。


「いつの間に!?」


ヒルメは。


すでに結界の後ろから移動していた。


杖を。


相手へ向ける。


「聖なる光よ――我が祈りに応え――」


「まずい!」


「ヒルメを止めろ!」


二人が。


同時に杖を向ける。


だが。


「遅い!」


ミアが。


その間へ入る。


「《ウィンド・ショット》!」


バン!


風の塊が。


一人の腕へ当たる。


「くっ!」


杖が逸れる。


そして。


ヒルメの詠唱が終わる。


「邪なるものを穿つ一条の光となれ――」


「《セイクリッド・レイ》!」


シュン!


光が。


女子生徒の胸元へ直撃した。


「きゃっ!」


バン!


身体が吹き飛ぶ。


だが。


舞台へ叩きつけられる直前。


ブゥン!


足元の魔法陣が。


強く輝いた。


パァン!


女子生徒の身体が。


光に包まれる。


そして。


シュン!


舞台の外へ転送された。


『戦闘不能!』


教師の声。


「一人!」


ミアが叫ぶ。


「油断しない!」


リナが返す。


「まだ二人いる!」


「分かってる!」


ヒルメは。


すぐに杖を構え直した。



◇ ◇ ◇



「くそっ!」


残された男子生徒二人が。


顔を見合わせる。


「先にあの光の奴を落とすぞ!」


「分かった!」


「え。」


ヒルメが。


自分を指差す。


「私?」


「当たり前でしょ!」


リナが叫ぶ。


「今一人落としたんだから狙われるわよ!」


「そっか!」


「嬉しそうにしない!」


二人が。


左右へ分かれる。


「《ストーン・バレット》!」


「《ウィンド・カッター》!」


岩の弾丸。


風の刃。


別方向から。


同時にヒルメへ飛ぶ。


「ヒルメ!」


ミアが叫ぶ。


「大丈夫!」


ヒルメが。


杖を握る。


以前なら。


正面。


一枚。


それだけだった。


けれど。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


右。


一枚。


「もう一枚!」


左。


ガァン!


二枚。


別々の方向。


二つの光の壁が。


同時に現れた。


ドン!


ガァン!


岩と風。


それぞれが。


結界へ激突する。


「……!」


相手の二人が。


驚いた。


「二枚!?」


ヒルメ自身も。


少しだけ目を丸くする。


「できた。」


「今驚くところ!?」


リナが叫ぶ。


「だって。」


「修行では長く維持できなかったから。」


「本番で試さないで!」


「でもできたよ!」


「結果論!」


その時。


「隙だ!」


男子生徒の一人が。


ヒルメへ向かって走る。


魔法を防がれたなら。


直接。


近距離から撃つ。


「《ストーン――》」


「させない!」


ミアが。


間へ飛び込む。


「《ウィンド・ショット》!」


バン!


「ぐっ!」


男子生徒が。


後ろへよろめく。


「ミア!」


「今!」


「うん!」


ヒルメが。


杖を向ける。


だが。


「ヒルメ!」


リナの声。


「後ろ!」


「え?」


もう一人。


ヒルメの背後。


「もらった!」


杖先に。


風が集まっている。


「《ウィンド・カッター》!」


至近距離。


避けられない。


「ヒルメ!」


ミアが叫ぶ。


その瞬間。


ヒルメは。


考えるより先に。


杖へ魔力を流していた。


少なく。


速く。


必要な分だけ。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガンッ!


小さい。


人一人を守るだけの。


小さな光の壁。


バシュッ!


風の刃が。


弾かれる。


「なっ!?」


「……。」


ヒルメが。


自分の出した結界を見る。


今までより。


ずっと小さい。


でも。


速い。


「……できた。」


「だから戦闘中に感動しない!」


リナの声。


「前!」


「うん!」


ヒルメが。


身体を反転させる。


「《セイクリッド・レイ》!」


シュン!


「うわっ!」


光が。


男子生徒の肩へ直撃する。


ブゥン!


保護術式。


パァン!


その身体が。


舞台外へ転送された。


『戦闘不能!』


「あと一人!」


ミアが叫ぶ。



◇ ◇ ◇



最後の一人。


風魔法を使う男子生徒が。


三人を見る。


「……。」


ヒルメ。


リナ。


ミア。


三人。


対して。


自分一人。


「……まだだ!」


杖を構える。


「風よ――!」


周囲へ。


魔力が集まる。


リナの表情が変わる。


「少し大きいのが来る。」


「どうする?」


ミアが聞く。


「予定通り。」


「ヒルメが防ぐ。」


「私とミアで左右から。」


「分かった。」


「うん。」


三人が。


同時に動く。


「《ウィンド・ストーム》!」


ゴォォォォ!!


強烈な風が。


舞台を駆け抜ける。


「ヒルメ!」


「任せて!」


ヒルメが。


杖を地面へ向ける。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァァン!!


今度は。


大きい。


三人を覆う。


巨大な光の壁。


暴風が。


結界へ激突する。


ゴォォォォォ!!


「……っ!」


ヒルメの髪が。


風に揺れる。


でも。


結界は。


壊れない。


「行ける!」


ヒルメが叫ぶ。


「うん!」


ミアが。


右へ。


リナが。


左へ。


結界の両端から。


同時に飛び出した。


「何!?」


男子生徒が。


どちらを見るか迷う。


その一瞬。


「大気を巡る風よ――」


右。


ミア。


「炎よ――我が手に集いて――」


左。


リナ。


二つの詠唱。


「くっ!」


男子生徒が。


ミアへ杖を向ける。


「そっち!?」


リナが笑う。


「残念。」


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!


火球が飛ぶ。


「《ウィンド・ウォール》!」


風の壁。


ドォン!


炎が。


弾ける。


「防いだ!」


だが。


「こっちもいるよ!」


「!」


ミア。


「《ウィンド・ランス》!」


バシュッ!


風の槍が。


男子生徒の横腹へ直撃した。


「ぐっ!」


身体が。


大きく吹き飛ぶ。


ブゥン!


魔法陣が輝く。


パァン!


そして。


転送。


『戦闘不能!』


一瞬。


静寂。


そして――


『勝者!』


教師が。


手を上げる。


『ヒルメ、リナ、ミア組!』


ワァァァァァァァ!!


観客席から。


歓声が上がった。


「……。」


ヒルメが。


瞬きをする。


「勝った?」


「勝ったよ!」


ミアが。


ヒルメへ抱きつく。


「やった!」


「わっ!」


「勝った!」


「うん!」


二人が。


喜ぶ。


「ちょっと。」


リナが。


呆れた顔で近づいてくる。


「まだ一回戦よ。」


「でも勝ったよ!」


「それはそうだけど。」


「リナ。」


ヒルメが。


手を伸ばす。


「……何?」


「やったね。」


「……。」


リナは。


その手を見る。


そして。


小さく笑った。


「ええ。」


パンッ。


三人の手が。


重なった。



◇ ◇ ◇



観客席。


「……。」


アリシアが。


静かに舞台を見ていた。


その口元には。


小さな笑み。


「随分。」


「上達しましたね。」


特に。


ヒルメ。


以前のヒルメは。


魔力量そのものは多かった。


だが。


扱いがあまりにも粗い。


必要以上に流し。


必要以上に使う。


そんな戦い方だった。


今は。


違う。


小さな結界。


二方向への同時展開。


必要な瞬間。


必要な場所へ。


必要な量だけ。


「……。」


アリシアの目が。


僅かに細くなる。


「魔力操作を覚えましたか。」


その隣。


アリシアと同じチームの生徒が聞く。


「殿下。」


「あの者が?」


「ええ。」


アリシアは。


舞台から降りていくヒルメを見る。


「私の友人です。」


少しだけ。


嬉しそうに。



◇ ◇ ◇



「ワン!」


舞台から戻ると。


真っ先に。


シロが飛びついてきた。


「シロ!」


「ワン! ワン!」


「見てた?」


「ワン!」


「勝ったよ!」


「ワン!」


ヒルメが。


シロを抱きしめる。


「ちゃんと待ってて偉い!」


「ワフ!」


「ヒルメ。」


リナが呼ぶ。


「何?」


「次の組み合わせ。」


「あ。」


三人が。


再びトーナメント表を見る。


自分たちの名前。


その横。


一本。


線が伸びていた。


一回戦突破。


「……。」


ヒルメが。


その線を目で追う。


まだ。


先は長い。


そして。


離れた位置。


セレスティアの名前。


「……。」


ちょうど。


次の試合。


その名前が。


光っていた。


『第四試合!』


教師の声が響く。


『参加者は舞台へ!』


「……。」


ヒルメたちが。


舞台を見る。


貴族クラスの三人が。


階段を降りていく。


その中央。


セレスティア。


「次。」


ミアが呟く。


「セレスティアだ。」


「……うん。」


セレスティアは。


舞台へ上がる途中。


ふと。


足を止めた。


そして。


振り返る。


視線の先。


ヒルメ。


リナ。


ミア。


「……。」


セレスティアが。


薄く笑う。


まるで。


見ていろとでも。


言うように。


「……。」


リナの表情が。


僅かに険しくなる。


「何よ。」


ヒルメは。


黙って。


セレスティアを見つめる。


そして。


教師の声。


「双方、構え!」


六人が。


杖を構えた。


「始め!」


その瞬間。


セレスティアの魔力が――


爆発的に膨れ上がった。


◇ ◇ ◇



「始め!」


教師の声が響いた。


その瞬間。


セレスティアの杖先から。


凄まじい魔力が溢れ出した。


「……!」


ヒルメが目を見開く。


先ほどまでの試合とは。


明らかに違う。


「炎よ――」


詠唱が始まる。


それだけで。


セレスティアの周囲の空気が揺らぐ。


「我が意志に従い――」


対戦相手の三人も。


慌てて杖を構えた。


「来るぞ!」


「防御!」


「《ストーン・ウォール》!」


「《アクア・シールド》!」


石の壁。


水の盾。


二重の防御魔法が展開される。


だが。


セレスティアは。


それを見ても。


詠唱を止めない。


「灼熱の奔流となり――」


杖先。


炎が。


一気に膨れ上がる。


「敵を焼き払え。」


リナの表情が変わった。


「……あれ。」


「何?」


ミアが聞く。


「《ファイア・ボール》じゃない。」


「じゃあ何?」


「……。」


リナが。


舞台を見つめる。


「《フレイム・バースト》。」


「《フレイム・バースト》!」


セレスティアが杖を振り下ろした。


ドォォォォォン!!


巨大な炎が。


舞台を走った。


「うわっ!」


ヒルメが思わず腕で顔を庇う。


観客席まで。


熱気が届く。


炎は。


石壁へ激突。


ドンッ!!


「ぐっ!」


石壁に。


亀裂。


そして。


その奥。


水の盾。


ジュワァァァァ!!


大量の蒸気。


「耐えろ!」


対戦相手の三人が。


必死に魔力を流し込む。


だが。


「無駄ですわ。」


セレスティアが。


冷たく言った。


次の瞬間。


バァン!!


石壁が砕けた。


水の盾も。


一瞬遅れて消し飛ぶ。


「なっ――」


炎が。


三人を飲み込む。


ブゥン!!


舞台の魔法陣が。


一斉に輝いた。


パァン!


パァン!


パァン!


三人。


ほぼ同時。


光に包まれ。


舞台外へ転送された。


「……。」


静寂。


試合開始から。


ほんの僅か。


教師すら。


一瞬。


判定を忘れていた。


やがて。


「しょ、勝者!」


教師が声を上げる。


「セレスティア組!」


ワァァァァァ!!


観客席から。


大きな歓声が上がった。



◇ ◇ ◇



「……強い。」


ミアが呟く。


ヒルメも。


舞台を見つめていた。


「うん。」


一撃。


たった一つの魔法。


それだけで。


三人。


「リナ。」


「何?」


「あれ。」


ヒルメが聞く。


「リナも使える?」


「無理。」


即答だった。


「今はね。」


リナは。


セレスティアを見る。


「《フレイム・バースト》は中位の炎魔法。」


「《ファイア・ボール》よりずっと多くの魔力が必要になる。」


「私じゃまだ安定して使えない。」


「そっか。」


「それに……。」


「?」


リナは。


僅かに眉を寄せる。


「今の。」


「かなり強かった。」


「同じ魔法でも?」


「ええ。」


「多分、普通の《フレイム・バースト》より。」


「……。」


ヒルメは。


もう一度。


セレスティアを見る。


舞台の中央。


歓声を浴びながら。


当然のような顔で立っている。


そして。


その視線が。


こちらへ向いた。


「……。」


セレスティアが。


笑った。


ほんの少し。


勝ち誇るように。


ヒルメが。


首を傾げる。


「……私たちに見せたかったのかな。」


「多分ね。」


リナが答える。


「だったら。」


ヒルメは。


自分の杖を見る。


「すごかったって言ってあげた方がいい?」


「絶対やめなさい。」


「なんで?」


「そういう意味じゃないから!」


ミアが吹き出す。


「ヒルメなら本当に言いに行きそう。」


「だって強かったよ?」


「だから行かなくていいの!」


「変なの。」


リナは。


大きくため息を吐いた。



◇ ◇ ◇



試合は。


その後も続いた。


第五試合。


第六試合。


そして。


第一回戦の全試合が終了する。


トーナメント表に。


勝者の名前が残っていく。


ヒルメ。


リナ。


ミア。


アリシア。


セレスティア。


それぞれのチームも。


順当に一回戦を突破していた。



◇ ◇ ◇



そして。


二回戦。


「《ガーディアン・プリズン》!」


ガァン!


光の壁が。


三人を守る。


「右!」


「うん!」


ミアが走る。


「《ウィンド・ランス》!」


バシュッ!


「くっ!」


相手が防御する。


その瞬間。


「リナ!」


「分かってる!」


反対側。


「《ファイア・ボール》!」


ボンッ!


一人。


戦闘不能。


さらに。


「ヒルメ!」


「うん!」


小さな光の壁。


相手の魔法を弾く。


その隙。


ミア。


二人目。


最後は。


リナ。


三人目。


『勝者!』


歓声。


三人は。


二回戦も突破した。



◇ ◇ ◇



三回戦。


「《アクア・ランス》!」


水の槍。


「ヒルメ!」


「任せて!」


光の壁。


ドォン!


「後ろ!」


「分かってる!」


ヒルメが。


杖を僅かに動かす。


もう一枚。


ガンッ!


背後に。


小さな《ガーディアン・プリズン》。


「嘘だろ!?」


相手が驚く。


「二方向!?」


一か月前なら。


できなかった。


魔力を分ける。


維持する。


必要な場所へ。


必要なだけ。


「ミア!」


「うん!」


風。


「リナ!」


「はいはい!」


炎。


三人が。


完全に連動していた。


『勝者!』


三回戦。


突破。



◇ ◇ ◇



「はぁ……。」


控え席。


ミアが。


椅子へ座り込む。


「疲れたぁ……。」


「大丈夫?」


ヒルメが聞く。


「大丈夫。」


「でも。」


ミアが笑う。


「三回も戦うと疲れるね。」


「私まだ元気。」


「ヒルメと一緒にしないで。」


リナが水を飲みながら言った。


「リナも疲れてる?」


「多少は。」


「じゃあ。」


ヒルメが両手を広げる。


「膝貸そうか?」


「何で?」


「寝れるよ。」


「いらない。」


「ミアは?」


「ちょっと借りたい。」


「ミア!」


「冗談だって。」


三人が笑う。


一か月。


一緒に修行した。


その成果が。


確実に出ていた。


ヒルメが守る。


ミアが崩す。


リナが仕留める。


あるいは。


リナが誘い。


ミアが動かし。


ヒルメが塞ぐ。


誰かが指示しなくても。


少しずつ。


相手が何をしようとしているのか。


分かるようになっていた。



◇ ◇ ◇



「……。」


その様子を。


少し離れた場所から。


セレスティアが見ていた。


「随分と。」


小さく呟く。


「楽しそうですこと。」


隣にいる貴族の少女が聞く。


「セレスティア様?」


「何でもありませんわ。」


視線。


その先。


リナ。


一般クラス。


大した家柄でもない。


魔法も。


特別優れているわけではない。


以前なら。


こちらを見るだけで。


怯えていた。


それが。


今は。


ヒルメとミアの隣で。


笑っている。


「……。」


セレスティアの目が。


冷たく細められた。



◇ ◇ ◇



『次の試合!』


教師の声。


「アリシア殿下率いるチーム!」


「舞台へ!」


「アリシアだ。」


ヒルメが。


身を乗り出す。


「見よう!」


「座りなさい。」


「見えない。」


「十分見えるでしょ。」


「近くで見たい。」


「子供?」


「違うよ!」


そう言いながら。


三人が舞台を見る。


アリシア。


そして。


学院が選んだ二人の貴族生徒。


対するは。


同じく貴族クラス。


ここまで勝ち上がった三人。


「始め!」


試合開始。


「行くぞ!」


相手が。


一斉に動く。


三方向。


アリシアを。


真っ先に狙う。


「殿下!」


味方の一人が。


前へ出ようとする。


「必要ありません。」


「え?」


アリシアが。


一歩。


前へ出た。


杖を。


横へ振る。


「《アクア・サークル》。」


ブゥン――


アリシアの周囲。


水が。


円を描いた。


「なっ!?」


三方向から飛んできた魔法。


炎。


風。


岩。


その全てを。


水流が受け流す。


「嘘……。」


ミアが呟く。


「全部?」


「……。」


リナも。


目を見開いている。


「すごい。」


ヒルメだけが。


楽しそうに笑う。


「やっぱりアリシア強い。」


舞台。


アリシアが。


杖を上げる。


「では。」


「こちらの番ですね。」


水が。


宙へ集まる。


一つ。


二つ。


三つ。


「《アクア・ランス》。」


三本。


同時。


バシュッ!


「散れ!」


相手三人が。


別方向へ飛ぶ。


だが。


水の槍が。


空中で軌道を変えた。


「え!?」


一人。


直撃。


ブゥン!


転送。


二人目。


避ける。


その先。


アリシアの仲間が待っている。


「《ライトニング・ショット》!」


バン!


戦闘不能。


残り一人。


「くっ……!」


「降参しますか?」


アリシアが。


静かに聞く。


「まだだ!」


杖を構える。


「《フレイム・ランス》!」


炎の槍。


アリシアへ。


「……。」


アリシアは。


避けなかった。


杖を。


僅かに動かす。


「《アクア・ウォール》。」


ザァン!


水の壁。


炎が。


消える。


その直後。


水壁そのものが。


形を変えた。


「なっ――」


一本の水の槍。


「《アクア・ランス》。」


バシュッ!


直撃。


ブゥン!


転送。


『勝者!』


大歓声。



◇ ◇ ◇



「……。」


ヒルメが。


目を輝かせていた。


「すごい。」


「……あれ。」


ミアが呟く。


「私たちが戦ったらどうする?」


「……。」


リナが。


真剣な顔になる。


「かなり厳しい。」


「え。」


ヒルメが振り返る。


「勝てない?」


「そうは言ってない。」


リナは。


舞台から降りるアリシアを見る。


「でも。」


「殿下本人が強いだけじゃない。」


「周りの二人も。」


「殿下が何をするか分かって動いてる。」


「私たちと同じ?」


「そう。」


「しかも。」


「一人一人の魔法技術が高い。」


「……。」


ヒルメが。


もう一度アリシアを見る。


そして。


笑う。


「じゃあ。」


「戦いたい。」


「何でそうなるのよ。」


「だって楽しそう。」


「遊びじゃない!」


「分かってるよ。」


そう言いながらも。


ヒルメの顔は。


明らかに楽しそうだった。



◇ ◇ ◇



その日の試合が進み。


トーナメント表の線は。


少しずつ。


少なくなっていった。


ヒルメたち。


アリシア。


セレスティア。


それぞれが。


勝ち残っている。


そして。


次の組み合わせが。


表示された。


「……。」


リナが。


トーナメント表を見上げる。


「次。」


「誰?」


ミアが聞く。


「貴族クラス。」


「また?」


「ええ。」


ヒルメも。


相手の名前を見る。


知らない名前。


三人。


だが。


その横。


貴族クラスの生徒たちが。


こちらを見ていた。


「……。」


明らかに。


これまでとは違う。


笑っている。


何か。


嫌な笑い方。


「何?」


ヒルメが首を傾げる。


「知らない。」


リナが答える。


その時。


少し離れた場所。


セレスティアが。


その三人へ。


一瞬だけ。


視線を向けた。


「……。」


誰にも聞こえないほど。


小さな声。


「せいぜい。」


「楽しませてくださいな。」


そして。


ヒルメたちは。


まだ知らなかった。


次の試合が。


これまでのような。


ただの対抗戦にはならないことを――。

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