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             異世界送魂師ヒルメ  ~涙は地に還り、想いは空へ還る~  作者: ケンボー


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森に降る星の雨

「ふう、もうすぐ森を抜けるな。


 ここで昼にしよう」


「はーい」


「ワウ」


二人と一匹が元気よく返事をする。


「確認なんだが、フェネクスは戦えるのか?」


「は、はい……たぶん」


「たぶん?」


アリアナは眉をひそめた。


「霊獣族であれば魔法が得意と聞く。


 どうなんだ?」


「そ、その……一応、闇と聖以外の全属性を使えます」


「なっ!?」


アリアナが目を見開く。


「それは十分凄いぞ。


 私など風魔法しか使えないというのに」


「で、でも……いざとなると足がすくんでしまって……。


 すみません。


 足手まといにしかならなくて……」


「フェネクスちゃん!」


ヒルメが耳をモフモフする。


「この耳可愛いね」


「ひゃっ」


「大丈夫だよー。


 アリアナさんがなんとかしてくれるよ!


 ね! シロ」


「ワウ!」


「こらこら。


 私だってそんなに強いわけではないぞ」


アリアナはため息を吐いた。


「攻撃魔法以外はどうだ?


 支援魔法は使えるのか?」


「はい。


 治癒魔法や身体強化なら……」


「なら十分だ。


 後ろから支援してくれ」


「改めて聞くが、ヒルメとシロは何が得意なんだ?」


「私は光の防御魔法かなぁ。


 シロはなんか色々と口から出すよ!」


「ワウ!」


誇らしそうにするシロ。


「確かにヒルメのバリアは凄かったな」


「色々出すだと!?」


「うん。


 なんか色々出すよ」


「なんか色々とは何だ」


「火とか風とか?」


「ワウ!」


誇らしそうに胸を張るシロ。


「火とか風とか!?」


(本人は神聖魔法だとわかっていないのか……。いや、それよりも“色々出す”とは何だ。火を吐き、風を纏い、他にもあるというのか……)


アリアナは頭を抱えた。


(もうわからん……もういいや……)


「では戦いの時は、私が前衛だ」


「中衛にヒルメとシロ」


「後衛にフェネクス」


「この形で行こう」


「はーい」


「はい」


「ワウ」


◇ ◇ ◇


「さぁ、そろそろ出発するか」


ピクッ。


「何かきます」


「なに!?」


(索敵も得意なのか。本当に優秀だな……。何故命を狙うのかわからんな……)


「見つけたぜぇ」


「こいつがあの話のガキか」


「へへ。


 必要なのはこのガキだけだろ。


 あとはさっさとやって売り飛ばしちまおうぜ」


「おい嬢ちゃん達!


 大人しくすれば痛くしないからよ!」


(七、八……いや、十人以上いる……。


 数が多いな……)


「お前たち離れるなよ!!」


「抵抗するなって言ったよな?


 やっちまえ、お前ら!」


「火の加護よ、火球となり敵を討て!」


《ファイアボール》


「清浄の光よ……盾となりてかの者を包み込め!」


《ガーディアン・プリズン》


「くっ。


 この人数で撃たれると前に出れんな」


(盗賊のくせに魔法などと……。装備も悪くない……。


 だが私とシロがいれば十分だ)


戦場に閃光が走る。


(この光は……まずい!?)


「ヒルメさん!


 凄い魔力が来ます!」


「ヒルメ!


 全力でバリアの出力を上げろ!


 広範囲魔法が来るぞ!」


「は、はい!」


空から少女の声が響いた。


星々を巡る天の輝きよ


我が願いに応え


無数の光となりて敵を撃て


《ステラレイン》


光の雨が降り注ぐ。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


「こ、これは……!」


「くそがぁぁ!」


「きゃぁ!


 うぅ……衝撃が凄い……」


「残るはお前だけだ」


「やっと見つけたぞゴミどもが。


 よくも色々と問題を起こしてくれたな」


「部隊を抜け出し、村を襲い、罪なき者を亡き者にし、万死に値する。


 大人しくついてきてもらうぞ」


「へっ、副騎士団長さんよぉ。


 おかしいだろう?


 俺は命令でやってるだけだぜ」


「誰がそんな命令を出す」


「上に決まってるんだろうが!」


「何だと?」


「俺達だけじゃねぇんだよ……」


「馬鹿な事を」


「ふぅ……。


 大人しくする気はないんだな?」


「大人しく捕まるわけがねぇだろ!」


「死ねぇ!!」


剣を抜き、一閃。


「あっ……ああああ!」


「エリス様~。


 またやり過ぎてます~」


「まったく……。


 何を考えているのですか。


 こんな場所で広範囲魔法など」


「あっ、アテナ!


 フレイヤ!」


(エリスだと!? 帝国騎士団の副騎士団長ではないか。


 何故ここに……まずいな。


 ヒルメを知られる訳にはいかない……)

「エリス様、やり過ぎです」


「だって盗賊しかいなかったもの!」


アテナは無言で背後を指差した。


「あ、あれー?


 ご、ごめんなさい……。


 貴方達、怪我はない?」


(ヒルメとフェネクスの正体がばれるのはまずいな……)


アリアナは小声で呟く。


「ここは任せろ」


「騎士様。


 襲われていたところ、ありがとうございました。


 幸い怪我はありません」


「はぁ~。


 良かったよぉ~」


「泣かないで下さい。


 だからやり過ぎですって」


「して、騎士様方が何故このような場所に?」


「失礼。


 私はエリス様の部下のアテナと申します。


 こちらが妹のフレイヤ。


 そしてそちらで犬と遊んでいるのが上司のエリス様です」


「この近辺で盗賊が旅人を襲っていると聞いて討伐に参ったのです」


「なるほど。


 そうだったのですね」


(嘘だな……。


 盗賊は元騎士団といったところか。


 奴らは明らかにフェネクスを狙っていた。


 なぜ霊獣族の者ではない人間が……。


 フェネクスの名前は伏せた方がよいだろう)


「私はアリアナと申します。


 あちらがヒルメ、フブキ、そしてシロです」


フェネクスが一瞬だけアリアナを見る。


「……?」


だが、すぐに口を閉じた。


「貴方達は何を?」


「村を目指して旅をしておりました。


 本当に助かりました」


「それでは私達は盗賊達を連行しなくてはなりませんので、この辺で失礼します。


 お気をつけて」


「ありがとうございました」


「ワウ♪」


「えへへ~」


「エリス様。


 シロ様と遊んでないで行きますよ」


「んん~」


「それじゃあ私達は行くわね!


 帝国に来たら声を掛けてちょうだい!」


「そんな舐められた跡だらけの顔で言っても締まりませんよ」


「うるさいなー、アテナは」


「はっ?」


「ごめんなさーい」


騎士団一行は出発した。


◇ ◇ ◇


「ふぅ……なんとかなったな」


「な、なぜ私の名前を?」


「お前は霊獣王の娘だ。


 フェネクスとヒルメの事を知られてはまずいと思ってな」


「なんでー?」


「なんでだと?


 この際だから言うが、ヒルメ。


 お前の魔法は特殊だ。


 見たことがない。


 フェネクスも霊獣王の娘だ。


 ばれたらどうなるかわからんからな」


「すいません……。


 ご迷惑をかけて」


「えー、そうなのー?


 わからないよー」


「ちなみにシロもばれるとまずいな」


「なんでー?」


「まずいに決まっているだろう!


 魔法を使う犬がどこにいる!!」


シロが誇らしげに胸を張る。


「ワウ♪」


「やったねシロ!


 褒められてる!」


「褒めてない!!!」


「でもシロは昔からこうだからなー」


「ふぅ……。


 何事もなくて良かったな。


 よし、行こう」


アリアナは帝国騎士団が消えた方角を見つめた。


(だが気になる……)


(なぜ帝国騎士団がフェネクスを狙う連中を追っていた?)


(そして奴らの言っていた『上』とは誰だ……)


嫌な予感がするな……。


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